言い訳をするわけではないが、今世紀になって、全米大学体育協会(NCAA)の作業を自ら打ち切り「隠居」状態に入るころは、年末年始のボウルゲームはまだ30には達していなかった。しかし、こうしてフットボールファンの方々と「語り合える」ようになって、基本的なことをあれこれ整理し直してみると、ボウルゲームは選手権戦を含めて35にもなっていた。びっくりした。


 それに昔は(昔という字を一番よく使うコラムニスト、と思っているが)ローズボウルとか、オレンジボウルとか、開催地の名物、名産にちなんだシンプルな名称ばかりだったのが、ある時期から一筋縄では行かなくなっていた。
 たとえばフロリダで開かれている「アウトバックボウル」は、当初「ホールオブフェイムボウル」と呼ばれていたのが名称変更したものだが、年寄りはこの「アウトバック」を知らなかった。たまたま長女が正月に一家で里帰りしてきたとき、若い連中を「焼き肉でも食うか」と連れ出して入った店が「アウトバック」。「あ、そうか。この名前か」


 今では、スポンサー名が当初の名称の周辺にちりばめられ、ますますわかりにくくなっている。
 ただAP通信の成績表示で使われているタイトルあたりになると、コマーシャル部分をそぎ落とした簡潔な表現になっているのが救いで、「週刊TURNOVER」もそれに倣った表現にしようと思うので、ご承知おき願いたい。


 さてボウルゲームの開幕だが、12月21日(土)は4試合が行われた。ベスト25のチームは、ラスベガスボウルに21位のフレズノ州立大が登場した。マウンテンウェスト・カンファレンス(MWC)の優勝校だが、1ランク上の太平洋12大学リーグ(Pac12)で、常にトップの座にいた南加大には歯が立たなかった。
 ネバダ州ラスベガスのサムボイド・スタジアムを埋めた4万2178人の観衆の前で、南加大のQBコディ・ケスラーがパスにさえを見せた。30本を投げて22本に成功。344ヤードを稼ぎ出し、4TDを挙げた。前半はこのパスを軸に立て続けに五つのTDを重ねて、35―6とフレズノ州立大を突き放した。フレズノ州立大は後半、ケスラーのパスを一つ奪ってTDを返したのがせめてもの慰めだった。南加大は10勝4敗、フレズノ州立大は11勝2敗。


 MWCの西地区でフレズノ州立大に次ぐ成績のサンディエゴ州立大は、アイダホ州ボイジーのブロンコ・スタジアムで開かれたアイダホポテトボウルに出場した。相手はミッドアメリカン・カンファレンス(MAC)東地区で好成績を残したバファロー大だったが、これまた格の違いを感じさせた。サンディエゴ州立大はRBアダム・ヌエマのランを軸に、第2Q半ばから第3Qにかけて4TDを連取し42―10と突き放した。最終スコアは49―24。観衆は2万1951人。サンディエゴ州立大は8勝5敗、バファロー大は8勝5敗。余談だが、アイダホポテトのネーミングは親しみが持てて私は好きである。


 ルイジアナ州で行われたニューオーリンズボウルは、サンベルト・カンファレンス(SBC)優勝のルイジアナ大ラファイエットが、カンファレンスUSAのチュレーン大を第4QのFGで24―21とねじ伏せた。舞台はご存じスーパードーム。5万4725人と観衆はよく入っている。試合はルイジアナ大ラファイエットが先手を取り、第2Q半ばで3TDの21点を先取した。チュレーン大はここから猛反撃。2TDを返して折り返し、第3Qに21―21と追いついた。
 ルイジアナ大ラファイエットは、第4QにDBシメオン・トーマスがパスを奪ったあと、ハンター・ストーバが27ヤードのFGを決めて勝ち越した。これが決勝点となった。ルイジアナ大ラファイエットは9勝4敗、チュレーン大は7勝6敗。


 こうして見てくると名物、名産を看板にした昔とは違って、地名が幅を利かせて、平凡な名前になっているのが目立つ。知恵のない話、とも思う。反面、地方としての特色、特徴が乏しくなってきたのではないかとも思う。この日(時間的に)最初に行なわれたゲームも地名がついていた。何の変哲もない「ニューメキシコボウル」という名称で、2006年に始められた。舞台は同州のアルバカーキのユニバーシティ・スタジアム。観衆は2万7178人だった。特別のことはない開幕戦。しかし試合の内容はスリリングで示唆に富んでいた。


 カードはPac12北地区のワシントン州立大と、MWCの山岳地区のコロラド州立大の顔合わせだった。NCAA1部Aの格から言うと、中堅どころといえようか。ともにある程度の歴史があったし、その昔、執筆作業でよく名を書いた大学でもある。
 試合はワシントン州立大が先行した。2TDを先取し、コロラド州立大に7点を返されると、すぐさま3本目のTDをたたきこんだ。コロラド州立大は第1Qの終わりから第2Qにかけて、ジャレッド・ロバーツが25ヤードと19ヤードの2本のFGを決めたが、スコアは13―21と大勢を引き戻せるようなものではなかった。ワシントン州立大はさらに四つ目五つ目のTDを加えて流れをすっかり引き寄せていた。
 コロラド州立大はこの後、ようやく2本目のTDを奪い、30ヤードのFGを追加した。5TDを重ねて前半を折り返したワシントン州立大。これに対して得点機会は5度ながら、2TD3FGに終わったコロラド州立大。どう見てもコロラド州立大の分が悪い。しかし点を取れるときにはきちんと得点する米国流のこの試合運びが、後半になってじわじわとワシントン州立大の足元を脅かし始めた。


 後半、先にFGを許したコロラド州立大はRBカプリ・ビブズが75ヤードを独走して、流れを引き寄せる糸口をつくった。第4Qの5分24秒に再びTDを奪われ、15点差をつけられたコロラド州立大は、QBギャレット・グレイソンがWRジョードン・バーデンに12ヤードのパスを決めて8点差に詰め寄った。残りはわずか2分52秒だったが、続いてシャキール・バレットが相手のファンブルをリカバーして攻撃権を手にした。
 ワシントン州立大陣33ヤードからの8プレーを費やした必死の攻めは、ビブズの1ヤードの突進となって実を結んだ。続くTFPはドネル・アレクサンダーが突っ込んでついに同点。


 丹念に細かくFGを拾い集めてきたコロラド州立大の努力の賜物ともいえよう。こうなると運も味方をする。キックオフを23ヤードリターンしたテオンドレイ・コールドウェルがファンブルする。これを抑えたコロラド州立大は4プレー後、ロバーツがこの試合4本目のFGを決めた。41ヤードだった。
 残り時間は0だった。最終プレーでついに48―45と勝利をつかんだのだ。14点、15点をリードされているのにもめげず、黙々とFGを返し続けた粘りが勝ちに結びついたといえるのではないだろうか。結果論といわれるのを承知で強調して置きたい。コロラド州立大は8勝6敗、ワシントン州立大は6勝7敗と負け越した。


 天皇誕生日の23日、私は東京・味の素スタジアムにいた。高校選手権の決勝「クリスマスボウル」観戦のためだった。前半、早大学院がリズムよく走って2TDを先取した。14点を先取された直後、立命館宇治が相手ゴール前へ殺到した。しかし相手の守りは堅い。第4ダウン、宇治はギャンブルに出た。結果は第3ダウンまでと同じだった。ベンチが「ここで3点だけでは」と考えたのは手に取るように分かる。だが得点は取れるときに取っておかねばならない。しかもまだ前半である。それに3点と0点では天地の開きがある。鉄則ではないか。


 後半、宇治はパスで反撃した。第3Qには待望のTDが入った。なぜか2点コンバージョンがコールされた。第2Qに3点を捨てた末の2点狙いである。もう少し1点を大事にすることを考えた方がいい。早大学院にはFGを加えられて、第4Qを迎えるときには6―17と11点の差がついていた。第4Qに宇治はまた追加のTDを挙げた。今度も2点のコンバージョンを狙った。これはやむをえまい。3点差にしておけば、FGでの同点もある。


 ギャンブルをするかしないかは、その時点、その場面での様々な条件を考えて決めることが必要である。最初のFGチャンスを物にしておけば、後半、相手にどれほどのプレッシャーをかけることができたかは、あらためて言うまでもないだろう。
 年寄りが偉そうに物を申しているが、実はこの秋、こんなシーンを随分あちこちで見た印象が残っているせいでもある。その都度「3点だけでは」の考え方が流行しているのかも知れない、と思った。また「潔く7点を狙って花と散る」という考えが広まっているのか、と思うこともよくあった。
 少しイラッとした。フットボールが持っている「理詰めのスポーツ」としての性格を、このように無視しては、上達しないよ、と遠慮なく付け加えておきたい。


 なお、これは条件として考慮するべきだが、宇治にプレースキッカーの選手が全くいなかったのだったら、話は多少変わってくる。

【写真】ラスベガスボウルでTDパスを捕球したWRを祝福する、南カリフォルニア大のヘルトンコーチ=21日、ラスベガス(AP=共同)