よくあることなのだ、と書いては見たけれど、である。11月の終わりには、あれやこれやと気持ちを揺さぶられた。大阪の長居ではFGが十分見込める地点まで攻め込みながら、関学はむしろ時間の消費を選び、0―0で引き分けにした。
 一方、横浜では日大が終了間際にFGを決め、4点を7点差まで開いたが、法大に6秒を残してしまった。この両方のケースについて、さまざまな意見が飛び交ったのは、フットボール発展のために悪いことではない。こうしてビッグゲームの難しさを痛感した直後に、米国ではちょっと考えられない波乱が起き、1位のアラバマ大に土が付いた。


 「よくあること」と書いたのは、ランク1位のチームが大詰めにきて伝統の一戦に敗れたり、思わぬ黒星を付けられたりすることが多いからである。問題はその負け方である。
 ただただ驚いた12月初めだった。ランキング1位を突っ走ってきたアラバマ大は、今季最後の大一番、州のライバルのオーバーン大と敵地で戦い、なんと最終プレーでFGをリターンされて決勝TDを奪われ、28-34で敗れたのである。まさしく「何が起きたの?」だった。


 アラバマ州オーバーンのジョーダン・ハー・スタジアムは8万7451人の大観衆で埋まっていた。アラバマ大を迎え撃つオーバーン大のランクは4位まで上がっていた。「地元の利」(本来は「地の利」)を加味すると、私は互角だと思っていた。それでも、何かで書いたが、快進撃のチームには「負けてもらいたくない」「全勝を続けてもらいたい」という後押しする気持ちも働く。
 ざっと流れを書く。オーバーン大が先行し、アラバマ大が第2Qの猛攻で連続3TDを奪って逆転。オーバーン大がTDを返して勝負を後半へつないだ。第3Qに21―21の同点となり、第4Qにアラバマ大がまた1TDをリードする。さすが伝統のカードである。残り32秒、オーバーン大はQBニック・マーシャルが2年生のWRサミー・コーツへ39ヤードのパスを通してTDを奪った。自陣17ヤード地点から始まったロングドライブの仕上げだった。


 アラバマ大の最後のドライブは、自陣29ヤードからだった。エースのTJ・エルドンがここを先途と走った。パス失敗の後、7ヤードを稼ぎ、タイムアウトの後、自陣38ヤードから、一気に26ヤードを前進した。ダウンは更新し、オーバーン大陣の38ヤード地点にボールが置かれた。しかし時間は1秒しか残っていなかった。
 当然、FGであろう。しかし、呼ばれたのは正キッカーのコード・フォスターではなく、背番号99をつけた新人キッカーのアダム・グリフィスだった。この日フォスターは第1Qに44ヤードのFGを外し、第4Qの初めにもわずか33ヤードのFGに失敗していた。これは第3Q半ばからたっぷり時間を費やしたドライブの、仕上げともいえるものだった。
 そして残り2分41秒には44ヤードの一発を狙ったが、オーバーン大のDEディー・フォードにブロックされ、オーバーン大最後のドライブとなっている。


 だが、果たしてこの交代が正解だったかどうか。
 ホールダーは58ヤード地点に構えた。通常だと55ヤード地点だろう。10ヤードも下がっている。つい先ほどのFGブロックが影響したのかどうか。それでもこのFGはブロックされた。舞い上がったボールはポストまで届かず、ゴールラインの9ヤード奥に落下した。これをDBクリス・デービスが受けてリターンした。
 デービスは左のサイドラインを駆け上がった。コースを切り替えて仲間の中へ逃げ込む。チームメートがデービスを取り囲んだ。109ヤードのFGリターンだった。決勝の6点が加えられ、スコアは34―28となった。「ボールを手にして前を見ると、走路がきれいに開いていたんだ」と、デービスはその決定的瞬間を振り返り、記者団にこう問いかけた「こんなの信じられるかい」―。


 さて1位がこけると、あとがややこしい。翌日のBCSコンピュータ・ランキングは、フロリダ大に37―7で快勝した大西洋岸リーグ(ACC)のフロリダ州立大を大方の予想通り1位に推した。2位にはミシガン大を42―41の1点差でかわしたビッグ10のオハイオ州立大が続く。前週4位だったオーバーン大が、順位を一つ上げて3位に進んだ。アラバマ大はついに4位へ後退だ。5位は同じ南東リーグのミズーリ大が、ランク19位のテキサス農工大を28―21で下したが、順位は同じままだった。
 だが、これら上位の順位はまだ決まらない。これからである。つまり各リーグの、正式にいうと各カンファレンスの王座をかけたプレーオフが、待ち受けるからだ。


 まずACCから行く。レギュラーシーズンの全勝を守ったフロリダ州立大は、ACCのアトランチック地区に属する。無論地区1位である。相手はコースタル地区1位でランク20位のデューク大となった。ビッグ10はリーダーズ地区とレジェンズ地区に分かれる。リーダーズ地区1位のオハイオ州立大は、レジェンズ地区1位でランク10位のミシガン州立大と顔を合わせる。
 南東リーグ(SEC)はオーバーン大が西地区を制し(アラバマ大と同率だが、その同率校同士の対戦成績で順位を決める)、東地区の1位ミズーリ大と戦うことになった。ランキングとはまた別の、順位に関する取り決めがそれぞれにあり、長い期間を費やして、自分たちで構築さしてきた。


 それだけに、リーグ加盟校はぶつぶつ言わないで、実によく従う。齟齬があれば、自分たちで修正する。上から目線で得点差だ、TD数だと、思いつきで順位決定を図ってきたどこやらの連盟とは大違いである。もう少しNCAA各リーグのありようを、勉強した方がいい。
 BCSチャンピオン決定戦はこのプレーオフが終わってからランキングが決まり、正式決定となる。同時に元日からのローズ、フィエスタ、シュガー、オレンジの各ビッグボウルも決まってくる。楽しい季節ではないか。

【写真】最終プレーで109ヤードのFGリターンTDを決めるオーバーンのDBデービス=11月30日、(AP=共同)