海の向こうでは、11月の声を聞くと、ボウルゲームが少しずつ話題に上ってくる。シーズン序盤に取り上げた全勝チームはこの週、また一つ減って7校になった。大西洋岸リーグ(ACC)でフロリダ州立大とフロリダのマイアミ大との全勝対決があったためである。
 試合はフ州大が41-14と快勝した。この結果、フ州大は記者や監督らが投票するランキングでは前週のままの3位だったものの、コンピューターを使ってのBCSランキングでは前週失った2位の座を取り戻した。どんなプログラムが組まれているのかは知らないが、こちらのランキングの方が、人間が感じるものよりも敏感なようである。


 全米大学のチャンピオンを決める選手権試合は、1月6日にカリフォルニア州パサディナのローズボウルで開かれる、その出場2校の絞り込みは、最終段階にさしかかってきたが、この時点でフ州大は、首位アラバマ大に一歩近づいた。このままともに全勝を続けると、この2校の対決となるのだが…。
 ボウルゲームは12月21日から全米の各地で開かれる。その数34。選手権戦を加えて35試合が、年末年始の17日間に行われる。つまり、このボウルゲームに出場できる1部A(BCS)の校数は125校。このうちの70校が、レギュラーシーズンを終えた後に、「おまけ」の試合をするわけだ。


 かつてはこんなに多くなかった。かつてといっても、私が定年を迎えてしばらくした頃で、10数試合、20試合には及ばなかった。それがこうして「現場」に戻ってみるといつの間にか膨れ上がっていた。出場校数で言うと半分以上、5割6分がボウルゲームに出る。驚きである。
 そもそもボウルゲームはカリフォルニア州パサディナの行事である「バラ品評会」の余興として計画された。そのころのフットボール先進地域の中西部で図抜けた力量を誇ったミシガン大を招き、これを州の代表スタンフォード大が迎え撃った。しかし、「1分に1点」といわれた豊かな攻撃力を持つミ大に、ス大は歯が立たなかった。49点を奪われて、しかも完封されたのだから、いくら余興の試合といっても、招待側の面目は丸つぶれである。


 催しは打ち切られ、復活するのに1916年までかかった。この後、1930年代半ばにオレンジ、シュガー、コットンの各ボウルゲームが相次いで誕生した。4大ボウルの始まりだった。少し下のクラスに照準を絞った「サンボウル」がこのころ生まれ、現在も続いているのは見事なものである。
 今回、ボウルゲームの歴史を述べるつもりはない。だが、こうして生まれたボウルゲームは発展の一途をたどった。その中から基本的な考え方が、次々と生まれてきた。一つ二つ取り上げてみよう。まずボウルゲームの性格だが、通常のリーグ戦で好成績を残したチームを招待する試合、というのが基本だろう。出場資格もこうして試合の数が増えてくると、段々細かくなってくる。当初の資格はリーグでの優勝校だけでよかったのが、2位校、3位校とハードルを下げなくてはならなくなり、果ては勝ち越しかどうかを原則とするまでになった。


 1部Aの試合数は原則12。7勝5敗が必要なのか、それとも6勝6敗でいいのか。招こうとするチームが人気チームだったとしたら、このへんの判断は結構難しそうだ。
 今回この稿を書くにあたって、少しはお勉強をと考え、35試合を当たってみた。ボウルゲームは招く相手が、ある程度決まっている。先に述べた元日恒例のローズは当初から太平洋12大学リーグの王者と、中西部ビッグ10のチャンピオンが顔を合わせることになっている。今年度のように、元日のローズの後、6日に大学選手権試合がこのスタジアムで開かれる。4年に一度のことで、フィエスタ、オレンジ、シュガーと会場の回り持ちをする仕掛けである。


 さて35試合だが、予想通りリーグごとの出場校数に大きな差が出ていた。最大は無論南部の南東リーグ(SEC)だ。今から決めつけるわけではないが、アラバマ大が選手権試合の出場が決まったとして、このほかに10校の枠が用意されていた。SECは加盟14校、これが東西7校ずつに分かれている。出ないのはたった3校だけなのか、となる。
 ここで厳しい読者からは突っ込みが入りそうだ。「勝ち越しが条件、と書いたのはどうなる。14校中11校もが勝ち越しを記録できるのか」と。


 SECで言えば、実現の可能性は高い。各連盟のレギュラーシーズンの組み合わせを見ると、日本では単一のリーグ内だけで勝敗表を作成するが、向こうは違う。他の組織、リーグとの勝敗もきちんと成績に組み込む。お勉強の一端をひけらかすと、SECでは原則地区内は総当たり。地区は7校なのでここで6試合。他地区とは2試合。これは年によって対戦相手が変わる。残りの4試合は他リーグとの対抗戦。SECはレベルが高いので、ここで白星を積み重ねることができる、というわけだ。
 西地区のアラバマ大を例に上げると、テキサス農工大を皮切りに、ミシシッピ大、アーカンソー大、ルイジアナ州立大(LSU)、ミシシッピ州立大、伝統のオーバーン大という順で行われる地区内の対戦。東地区とはケンタッキー大、テネシー大の2校。他リーグとは大西洋岸リーグのバージニア工科大、山岳西武リーグ(MWC)のコロラド州立大、サンベルトリーグ(SBC)のジョージア州立大。そして1部AAのサザンリーグに属するチャタヌーガ大、という対戦が組まれている。


 有力校が1部AAのチームと試合をするのは、大体が斯道奨励に基づくもので、あとは強豪校の集客力で下位を潤す、という考えもある。実例をもう少し挙げるとACCの雄クレムソン大はサザンのシタデル大と、ビッグ10のオハイオ州立大は中東部体育連盟(MEAC)のフロリダ農工大と戦ったりしている。オレゴン大、フロリダ州立大などランキング上位校も例外ではない。


 こうして見てくると勝ち越しは一流リーグの所属校にとっては、必ずしも難しくはない、ということがお分かりいただけると思う。11月2日までのSECの勝敗差を例にとると、東地区で9試合、西地区では24試合の勝ち越しがすでに記録されている。合計33試合のプラスである。リーグ内の対戦成績は無論プラスマイナスゼロ。他リーグからかっさらってきた勝ち星でボウルゲームに行こう、という計算である。
 ビッグ10、ビッグ12、ACC、Pac12などは多かれ少なかれ、プラスを記録している。独立校ではノートルダム大が勝ち越しを決め、ブリガムヤング大の負け越しの危険性は消えた。


 こうして有力校をピックアップして、35のボウルゲームに当てはめて行く。ジグソーパズルのようなもので、これはこれで楽しい作業である。

【写真】マイアミ大―フロリダ州立大の全勝対決、TDパスを捕球するマイアミ大のWRハーンズ=2日(AP=共同)