フットボールシーズンが来た。あの興奮がアメリカ全土を包む。プロのNFLは無論のこと、各地の大学、高校が盛り上がる様は、フットボールファンならばよくご存じだ。とりわけ大学の試合が、それぞれの地元を興奮のるつぼにたたき込むのは、甲子園の高校野球になぞらえてもいいのではなかろうか。
 開幕前にその年の各チームの強弱、話題などを取りまとめた雑誌が、プロと大学に分けてたくさん出版される。ただ大学の場合、すべてを紹介しているわけではない。ページを飾っているのは有力校だけである。では有力校とは何か。
 全米の大学のスポーツを統括する組織、全米大学体育協会(略称NCAA)に加盟するフットボールチームの中の選りすぐり、とご理解いただけば話が早い。そしてシーズンが終わると、その中の最強チームをチャンピオンとして認める。
 チャンピオン決定についての歴史は古い。これを説明するだけで一回分の話ができてしまう。機会があれば取り上げるが、最近は選手権試合そのものができて話が簡単になった。2006年度、つまり2007年の年頭に第1回が開かれ、今シーズン(2013~14年)は第8回となる。そのチャンピオンの最有力校として話題を集めているのが、アラバマ大だ。
 アラバマ大は昨年1月初めの選手権試合で、同じ南東リーグ(SEC)所属のルイジアナ州立大(LSU)を21-0で破って王座に就いた。レギュラーシーズンで苦杯を喫した相手だっただけに話題性に富んでいた。今年初め、つまり2012年シーズン最後の選手権試合では、名門ノートルダム大を42-14で下して2年連続の全米王者に輝いた。今季もアラバマ大は圧倒的に評価が高い。
 開幕前の新聞記者60人の投票によるAP通信のランキングによると、58人がアラバマ大を1位に推し、2位オハイオ州立大に133点もの差をつけた。USAツデー紙などに掲載される有力校の監督62人によるランキングでも58人がアラバマ大に1位票を投じ、同じく2位のオハイオ州立大との差は118点となっている。アラバマ大がもしこのままトップを走り、選手権試合で勝てば、米国大学フットボール史上初の3連覇の偉業が達成される、という次第なのだ。
 アラバマ大はこれまで10度の栄冠を獲得している。この10度というのは、1936年にAP通信のランキング制度と、NCAAによるチャンピオンの正規の認定とが始まってからの記録で、1936年度以前にチャンピオンとして記録されている25、26年度の2度を加えると12度となる。近代になってからの同校の連覇は、あの名将ポール・ベア・ブライアント時代の64、65年度と78、79年度に2度あるが、いずれも3連覇には届かなかった。ブライアントを追うニック・セイバン監督としては、ここで3年連続13度目の王座を獲得、前人未到の快挙を成し遂げたいところだろう。
 なお選手権試合制度が正式発足して以来、王座に就いた大学はすべて南東リーグ(SEC)勢というのも、いささか偏りが過ぎる。06年のフロリダ大を皮切りに、07年がルイジアナ州立大、08年フロリダ大、09年アラバマ大、10年オーバーン大と続いて、11、12年とアラバマ大が並んでいる。この強力なSECの牙城をどこが切り崩すのかも、今季の話題の一つと言っていい。
 またセイバン監督は04年年頭、ルイジアナ州立大を率いてシュガーボウルに臨み、オクラホマ大に21-14で競り勝ち、このシーズン13勝1敗でLSUをチャンピオンにした。そして07年、アラバマ大に迎えられ、その3年後の09年に王座を獲得した。以後4年間で3度の王座。しかも全く別の大学でそれぞれ全米一の栄冠に輝いた監督はほかにいない。
 制度確立の1936年以降、3連覇に挑んだチームは「10」を数える。40、41年のミネソタ大は42年、5勝4敗に終わった。44、45年の陸軍士官学校は46年に9勝1分けの好成績を残しながら、ノートルダム大に1位の座を奪われた。そのノートルダム大は翌47年も栄冠を獲得したが、48年にミシガン大に首位を譲った。
 55、56年のオクラホマ大は57年9勝1敗の好成績ながら、オーバーン大、オハイオ州立大、ミシガン州立大に抜かれて4位。64、65年のアラバマ大は66年も10戦全勝の優秀な成績を残しながら、1敗のノートルダム大、ミシガン州立大に後れを取って3位に終わった。69、70(監督投票)年のテキサス大は71年が18位。70(記者投票)71年のネブラスカ大は72年に2敗を喫して4位に下がり、74,75年のオクラホマ大も、78,79年のアラバマ大も、ともに3年目は2敗を記録して順位を落とした。94、95年のネブラスカ大も96年は2敗で6位だった。
 連覇した大学は間違いなく指折りの強豪校である。しかし4シーズンで選手が入れ替わる大学フットボールの世界で3連覇の達成など、実現不可能な夢なのかもしれない。

【写真】全米王座決定戦でノートルダム大を破って2連覇を達成し、祝福されるアラバマ大のセーバンHC(AP=共同)