僕のコーチとしての2017年シーズンが終了しました。


 昨年から早稲田大学とノジマ相模原ライズに所属しての「タモン式ランニングバック養成所」の活動が2年経過しました。
 1年目は春と秋で所属するチームが変わり、チームの皆さんとはそれほど親しくなれませんでした。今年度は丸々1年を同じチームですごし、少しは意思疎通ができたような気がします。


 この2年で僕もいろいろと学びました。以前から唱えているように、コーチは失敗を重ねてもクビにさえならなければ経験を重ねて翌年はより良いコーチになり得る訳ですが、チームの要となる選手は一年一年が選手生命との戦いであり、失敗は許されません。失敗している時間などないのです。


 ですから、「しっかり教えたがうまくならなかった」では済まされないハナシなのです。ですが、選手側も僕が考えるほどコーチを頼りにしていないようにも感じました。
 理由としてはこの2点かと。一つは僕のような人間性ですと信用されにくいことは否めないので、賢い人には毛嫌いされるのが通常です。


 もう一つの理由としては作戦には一切触れずにポジションの技術向上だけに目を向けたコーチがほとんどいないことだと思います。
 技術論を他人からあまり聞いたことがないため、質問したり考えたりする習慣がないということに気づきました。


 これまで先輩や監督、コーチに何となく聞いてやっていたプレーだけが正解で、その他には正しい答えなどないと思い込んでいる人が、予想をはるかに上回る割合で存在していました。
 これにはとても驚きました。ほとんどの選手は「作戦の遂行さえできればいい」と思っているのです。


 個人個人が最高の動きができてこその作戦ではあるのですが、どこかで何かがチグハグになっています。


 とはいえフットボールインテリジェンスにおいては皆が素晴らしい資質を持っていて、どうにかこうにか格好が付いています。よって脳みそが自分や他人の技術不足を認めない風潮になっているのでしょう。
 この凝り固まった考え方や習慣が体と脳みそに染みついた人を「カスタム」して、「スペシャル度」を向上させることができないままに2年が過ぎてしまいました。


 僕に対して心を開かない、関心を示さないという強固な姿勢を崩さない人もある一定の割合で存在していますが、興味も関心もあるが新しくインストールされた情報をうまく使えない人が大多数と感じました。


 ある日、早稲田大学グランドに卒業生であるオービックの大橋誠さんが練習の見学にいらしてたので少し雑談をしていたところランニングバックの話になり、「いやー、変なクセのある選手が多くて苦戦しています。高校で習ってきたやり方が、どうにもこうにもおかしな感じになっていて、こんなんじゃまるっきりトップリーグじゃ使い物にならないんですよ。どうしたもんですかねー」なんて話になりました。


 大橋さんは「それはあるある。高校での成功体験が染みついちゃってるんだろうね。高校レベルじゃ少し俊敏なだけで守備選手から逃げられるから」と話していました。
 そうなんです。みんながそんな感じのノラリクラリと守備選手に触れられないように逃げ惑うんです。「これって高校の時の問題なのかな?」と何となく思っていたことを、大橋さんが分かりやすく言葉にしてくれました。


 だからそういう「クセ」を抜いてあげることから始めないとダメなんだとなり「タモン式ランニングバック養成所」でのカリキュラムが若干変更になりました。


 指導しても指導しても返事はいいが一向に指示通りやらない選手が何割かいるのは僕を「なめている」のではなく、昔からのクセがついつい出ちゃうだけなんだということが明確になったのです。
 それからはそういう選手の過去のフットボール経歴を尋ねるようにし、何が彼の頭の中を邪魔してるのかに注力するようになりました。


 今までは高校でフットボールをせず他のスポーツをしていた選手と、頭が切れて勇気があり飲み込みが早い選手の2タイプだけを上達に導くことができたのですが、これからはこの「クセを取り除く」という、一手間かけた指導を心がけたいと思います。


 美味しい料理を作るときも「アク」を取ったり「ヘタ」を取ったりしますから。それと同じですね。

【写真】慶応大学とのリーグ最終戦の後、早稲田大学のRB陣と記念撮影する中村多聞さん=11月26日・横浜スタジアム