早稲田大学「ビッグベアーズは秋のリーグ戦に向けて、今年も山梨県の山中湖で夏季特別強化合宿中です。今回は、僕の教え子である4年生RB木村達也選手に独占インタビューしました。
 

 ―早稲田は普段学生だけで運営しているところがすごいですね。
 「高校の時もそうだったから慣れていますが、大人のコーチ目線で客観的に指摘してもらえないので、困ることもあります。4年生のリーダー達で客観視する努力をしているのですけど、週末にいらっしゃるコーチに指摘してもらって気づくことがあります。そういう面では少し大変かなと思うことがあります。よその大学がどうやっているか分かりませんが、指摘されるまで気づかないし、関西に比べて出遅ている気がしないでもありません」


 ―アメリカンフットボールを始めたきっかけは。
 「小3から中3まで父の転勤でアメリカのニュージャージーに住んでいました。そこで極真空手とサッカーをやっていて、極真は黒帯です。アメリカですからもちろんフットボールは知ってましたけど「休み時間にやる遊び」と捉えていたので本格的にプレーしようという発想がありませんでした。高校生になる時に帰国して早稲田学院高に入学したら、アメフト部の勧誘がすごかったんです。「絶対日本一になれるよ!」という誘い言葉につられました。練習を見学に行ったら、チームの感じが良くて挑戦してみたくなったんです。当時のチームには昨年の早稲田のエース須貝先輩もいたので3年からしかレギュラーになれませんでした。でも全国優勝はできました。僕たちはクリスマスボウル4連覇目の代なんです」


 ―自身のベストゲームトップ3は。
 「実は試合で活躍した記憶がなくて、そういうのはありません。点差がついてからの出場ばっかりで、思い出に残る1位から3位でいいですか」


 ―ではそれで。
 「1位はけがをした去年の立教大戦。2位は高校3年時のクリスマスボウルですね。ローテーションで出場し優勝できました。3位は大学2年時の関大との春の定期戦。大学では関西のチームと初めての対戦だったので」


 ―ビッグベアーズに入部した理由は。
 「大学生は体が大きいし、小さな自分じゃ通用しないかななんて思って最初はバイトしてみたり、サークルを見たりだったんです。友人や先輩に誘われてビッグベアーズの見学に行ってみたら、日本一という大きな目標を持って毎日努力してる人がカッコよく見えて。大学生活を悔いなく過ごせそうな気がしたからです」


 ―子供の時に海外で過ごした思い出は。
 「最初は大変でした。すごく大変でした。現地の小学校に入れられて「My name is Tatsuya」という簡単なメモを親に持たされただけで登校して何もわからず大変でした。全く英語が分からない状態ですから、授業もサッパリで。でもいろいろ心配して面倒を見てくれるハーフの日系人の友人ができて、彼が何から何まで助けてくれました。それこそ通訳に始まって学校の案内、本当に助かりました。言葉が通じないので、先生達からも嫌がられて辛かったです。1年経ってやっと話せるようになってそこからは楽しく過ごせました」


 ―アメリカでの生活は。
 「日本にたまに帰国した時、コンビニに行ったんです。そこで随分と差を感じましたね。アメリカじゃコンビニといえば小学生が万引きしまくっているような荒れた感じだったんです。でも日本は店員さんがとても丁寧で感じよくてびっくりしました。おつりなんかも両手でキッチリ渡してくれるじゃないですか。僕のいたニュージャージーの街では店員がおつりを間違うのなんか毎回で、メチャクチャ接客態度が悪かったので、日本とのギャップにとてもビックリした覚えがあります。特に治安が良くないエリアだったので、中学生でもタバコを吸っていて、ドラッグの売人してる人間もいました。もちろん僕は日本人ですし、ちゃんとした友達との付き合いが多かったので、悪い事をする気にはなりませんでした」


 ―昨年1年間シアトルのワシントン大学に留学していましたね。
 「子供の英語力しかないのは分かっていたので、もう少ししっかり英語力を伸ばしたかったんです」


 ―ワシントン大学って有名な「ハスキーズ」だけど、フットボールはしていたの。
 「いいえ。一般の学生なので、入部どころか練習の見学すらさせてもらえないシステムでした。でも1年後にはビッグベアーズに戻るので、運動はしておきたかったのでサッカーサークルに入っていました。日本語を使う環境でもありませんし、当初の目標だった英語力も向上したので行ってよかったと思っています」


 ―帰国してすぐの3年生の秋シーズン1試合目でけがをしてしまいました。
 「正直すごく絶望しました。アメリカではネットなんかでビッグベアーズの活動を見ていたし、夏合宿も乗り切ってさあやったるでーって思ってたら、何とランニングバックでの出場時じゃなくて、スペシャルチームでのけがだったので落ち込みました。手術も2度やって、リハビリがきつくて大変でした。患部が自分の体じゃないような感覚で、やっとチームに合流できた時は本当にうれしかったです」


 ―あれからもうすぐ1年です。
 「今はほぼ元に戻っているので、あとはやるだけですね」


 ―プレーできなかった期間、フラストレーションがたまったと思います。
 「練習に来るとみんな楽しそうに練習してるし、後輩もどんどん成長してるし、アドバイスするしか役に立たないことが辛かったです。みんなに置いていかれてる感じで。学生トレーナーの小田(彩子)さん(3年生)が僕につきっきりで復帰に向けて一緒に頑張ってくれたので、彼女が喜んでくれることが何よりの支えになりました。だから頑張れたと思います。自分が休んでいる間に後輩たちの成長を妬んだりすることなく、自分の喜びに変えて指導をしていくように心掛けていました」


 ―ランニングバックのユニットリーダーとしてシーズンに向けて。
 「今年のチームは下からの突き上げがすごくて、4年生という最上級生の立場からしても尊敬できる後輩が多いんです。4年生だけが目標に向かっていても駄目じゃないですか。彼らが土台を固めてくれていて、日々努力してることが今年の早稲田の特徴だと思っています。結局、後輩らに支えてもらっているわけで、彼らの突出した自立心で僕はとても助かっています。そして早く試合に出られるレベルに戻って、彼らとしのぎを削って磨き合いたいって思っています。そういう一体感だけは、どの大学にも負けていないと思ってるんです。学年の壁がないというか」


 ―今シーズンの目標は。
 「ライスボウルで勝って、早稲田大学ビッグベアーズの歴史を塗り替えたいですね」

【写真】多聞コーチの指導を受ける、早稲田大の4年生RB木村達也選手=写真提供・中村多聞さん