先日、日本大学フェニックス主催の「フェニックス・フットボールアカデミー」に行ってまいりました。コーチとしての視点で人様から何かを習うのは初めての体験です。
 20年前に飲食店を始めた頃もよくこのような勉強会に行って、いろいろな知識を得ていたなと思い出しました。


 フットボールもそうでしたが、飲食業でも特定の「センセイ」や「師匠」はおらず、現在のコーチ業でも同じく独学でやらせてもらっています。
 それだけに、NFLカロライナ・パンサーズのキャメロン・ターナーQBコーチがどのようなことをお話してくださるのかワクワクして最前列に座りました。


 講演の内容はパンサーズでも取り入れているスプレッドオフェンスの「ラン、パスオプション(RPO)」に焦点を当てられていました。
 僕は作戦面ではなく、その作戦を実行する選手の心理や作戦を指示するコーチの心理面にとても関心があります。元選手として、そして技術コーチとしてはこの作戦を実行する時の「コツ」や「注意点」「コーチは何を見ているか」を聞きたいなと。


 座学に実技指導と、半日を使ってたくさんの話をしてくださいました。その中で僕にとって興味深かったお話をご紹介してみたいと思います。


①正しい技術やルールを教わっても、今まで通りのやり方でプレーが成立してしまう場合は本気で取り組むことは困難。しかし、たったの一人が雑に動いてしまうことで作戦が立案者の意図通りに機能しなくなってしまう。できると思うことでも油断せず上のレベルに挑戦し、失敗や成功を味わうことが大切だ


②何度指導しても、ほんの少し違った動きをする選手とは来年契約しない


③皆さんご存知のパンサーズのエースQBQBキャム・ニュートンは特別な選手だ。だが、特別な能力を持つがゆえに間違えたテクニックでも成功に持っていってしまう。本来のルールを守っていればそれほど難しい作戦ではない。RPOはランプレーの延長線上で行うプレーなので「失敗は絶対に許されない」のです。才能でなんとか成功させるよりも、正しいルールに則って成功の確率を上げるべきだ。


④同じくキャム・ニュートン選手はRBにボールを渡す際、RBの足運びに邪魔な位置に自身の足を置いてしまう癖がある。そのせいでRBは走るレーンを限定されてしまい、作戦の幅まで狭くしてしまっている場合がある


⑤いくらゴージャス(ニュートン選手の別称)な選手といえども、コーチや関係する選手はその都度「今のん約束守ってへんかったで」と教えてあげ、チーム全体の取り組みとして細かいところまでこだわるような環境づくりをするべき。今まで通り自己流でもプレーが成立してしまうので、なかなか本気で取り組んでもらえないけど、コーチは何度でも同じことを注意し続けないといけない。


⑥シーズン中は技術向上の時間が十分に取れないので、オフやチーム練習がない期間は基礎練習を反復し、課題克服や正しい動きを身につけること。夢がない話だけど、NFL選手も地味な練習を毎日やっている。たとえゴージャスな選手でも。


⑦シーズンオフに反復を繰り返し、体が勝手に基礎技術を発揮させられるようにしておき、試合ではスキームを実行したり敵を観察する方により神経を使うべきこと


 このようにターナー・コーチの典型的なアメリカ人による本当の「アメリカンフットボール精神論」は、とても興味深いものでした。
 RPO自体の説明も多くありましたが、「激しくてうまくて判断力のあるQB」がいないのであれば、プレー開始直前や直後に変更があり、チームメートが聞き間違いや混乱するより、事前に決めた作戦を全員で集中して遂行した方が良いのでは無いかな、と感じました。


 久しぶりに本物のNFLコーチが発するフットボール論を聞き、最新の作戦をレクチャーしていても結局は現場で実行する人間の精神状態次第である。「泣くほどの基礎基本練習を反復し、マスターしたら腹をくくって根性で作戦を遂行し相手をぶちのめせ」ってことなんだと再確認できました。


 どうも日本国内だけに目を向けていると、フットボールは倒し倒されるハード&ハードな格闘技なんだ、というところが抜けてしまいがちになります。
 本当に聞きに行ってよかったです。このような企画は日本のフットボール界発展のために絶対に必要だと思います。日本大学フェニックス関係者の皆さん、どうもありがとうございました。


協力:早稲田大学ビッグベアーズ/早稲田大学ビッグベアーズ櫻井大祐コーチ

【写真】NFLのコーチを招いた「フェニックス・フットボールアカデミー」に参加した中村多聞さん(中央)=写真提供・中村多聞さん