アサヒ飲料のエースランニングバック(RB)としてシーガルズに完敗した直後に、来年度のNFLヨーロッパ(NFLE)参加者選考のテストも控えています。
 シーズン中なので体の調子はバッチリではありますが、最終追い込みのために今年も仲間とグアム島へトレーニングキャンプに行きました。


 キャンプでは伝わりにくいなら「強化合宿」と表現したらわかりやすいでしょうか。昨年度のグアムキャンプでは「何が何でも絶対に合格するんだ!」というハングリー精神いっぱいで臨んだのですが、順風満帆だった今シーズンはどうも気持ちに甘さが出てしまいました。
 そういう甘さを払拭するためにも、このグアムキャンプでしっかり鍛錬し直すのが目的です。


 関西空港から数時間飛び到着。グアム島の入国審査官が僕をみて「あなたをテレビで見た。プレーヤーだろ」と言うではありませんか。
 彼はNFLEの決勝戦とグリーンベイでの放送を見たらしく、金髪の日本人が映りまくっていたのをとてもよく覚えているなどと言い、それを仲間に言うもんだからサインや記念撮影、握手を求められ僕もいっぱしのスター扱いです。


 彼はよほどのフットボールファンだったのでしょう。気を引き締めに来たのに、外国でいきなりチヤホヤされたらまた気が緩みます。
 5日間の滞在ですが、寒い日本で仕事の合間にやる「コソ練」ではなく、暖かい気候で24時間フットボールのことだけを考えられる中での自主トレでは、夜に寝て朝起きるという基本的な生活サイクルに戻すこともできるので、現在のプレーヤーにもぜひオススメしたい調整法だと思います。


 朝はアップダウンのある田舎道を1時間ほどジョギング。朝食はコンビニで買った果物を食べ放題。そして駐車場のような平坦で広めの舗装された場所でスピード強化のトレーニングです。
 暑くなったらビーチかプールで休憩。天然芝の広場を見つければ楽しくキャッチボール。ランチもコンビニで買ったパンに野菜を挟んでサンドイッチ。夜はレストランに行き「ハンバーガー」「ナチョス」「バッファローウィング」「ベイビーバックリブ」を食べます。


 お酒をどうしても飲みたい場合はビールを1缶だけがルール。基本は水です。欲求を満たしに来ているわけではないので、我慢をするというよりもそれどころではないというのが正直なところでした。ま、お金もありませんし…。


 駐車場で計る40ヤード走のタイムもコンスタントに4秒5台が出るようになり、身体の状態は抜群です。
 ただし、テストの内容はRBとしてだけの能力をチェックするわけではなく、基礎体力やスピード、レシーブ力を重視されます。それには普段の役割ではない、高速走行中に頭部がユラユラ動かない安定した走りが求められます。
 縦にディフェンスバック(DB)をブチ抜けるスピードとキャッチ力があれば「マル」がもらえるのです。


 「ランニングバックもボールを持つのは同じだろ?」ということで、レシーバーと一括りにテストされます。
 ですから40ヤードよりもう少し長めの60ヤードくらいを安定して駆け抜ける練習が必要です。スピードが出ても体や頭部がユラユラと動いていては、長距離を飛んでくるフットボールに焦点が合わず自分の頭の上でキャッチすることが困難になります。


 ただ、何しろ捕れればいいのではなく、アメリカ人が見て「ヨシ!」と思われるキャッチを見せる必要があります。
 投げられたボールの落下地点をいち瞬時に分析し、自分をマンツーマンで守っているDBにその地点を悟られないように超高速で走りながら飛んだりせず腕を上に伸ばし頭上で捕る。
 そしてその後は、僕にしてやられて悔しがっているDBを置き去りにする加速でタッチダウン。この流れを完全にシュミレーションし、部分部分を分割してトレーニングします。


 スタート地点、中間、キャッチ、加速。いかなる風雨や体調不良、悪条件が重なろうと「体が勝手に動く」ようになるまで繰り返し繰り返し反復します。
 分割しなければならない理由の最もたるものは「50ヤード程度のロングパスを正確に投げられる人間は、自分の周りには存在しない」と言っていいでしょう。


 ですから、実際はキャッチ部分に関してはぶっつけ本番、イメージトレーニングだけが頼りです。60ヤードを超高速で走り抜けながら僕の頭の中でイメージされた後ろにいるQBの方を向き、ボールが飛んで来てそれを捕る、という繰り返しです。
 はたから見たら「よそ見しながら100ヤードダッシュしてる変な奴」になりますね。


 こんな感じで1999年度の「NFLE受験勉強@グアム島」での追い込みを終え、日焼けした体で真冬のテストに臨みます。

【写真】多聞さん(中央)と一緒にNFLヨーロッパ参戦を目指していた関学大OB池之上貴裕さん(左)と、多聞さんの練習パートナー立命大OB山本昌平さん=写真提供・中村多聞さん