昨年度から多くの方に「タモン式」のランニングバック術をご紹介させていただく機会を得て、それなりに楽しくやっております。


 「タモン式ランニングバック養成所(Tamon’s Workshop Running Back Traning)」という屋号の下、本格的な活動開始から1年が過ぎようとしています。
 上達した選手、変化のあった選手、気づきを感じてくれた選手、変化のなかった選手とさまざまな結果が出始めています。


 タモン式の活動は、チーム練習に帯同して一定期間に集中する方が当然効率よく前に進みます。一方で単発形式でのクリニックですと、どうしても「ほんのわずかな部分」しかご紹介することができず、選手の皆さんは「???」となってしまうようです。


 また「こんなのじゃダメだうまくならない」と思われてしまうこともあります。そりゃあそうでしょう。これまでに習ったことではないやり方をご紹介しますので、スーッと理解してスムーズに上達するはずがありません。
 数時間だけでは染みついた癖や考え方が邪魔をして、自身の殻を破れずに「タモン式は自分に合わない」となるのが普通でしょう。


 「やる気と運」だけで上達できた僕に比べれば、最近の若者達のレベルはすごいものがあります。食事やトレーニングに細心の注意を払うなどはごくごく当たり前で、フットボールへの取り組みが僕らの時代とは比較にならないほどにレベルが高くなっています。
 その彼らがタモン式で伝える「あとほんの少しの知識」を脳ではなく体で動かせるようになれば、ニッポンフットボール界のランプレーが今よりもっともっと面白くなるはずです。


 新しいことをインストールしたら、すぐに理解して体がついてくる選手。理解はするが体がついてこない選手。理解はできないが何となくできてしまう選手。理解も動きもできない選手とさまざまです。
 運動神経がとてもいい選手であっても、目的と理由をしっかりと理解していなければ次のステップに進めないということもわかってきました。


 技術を向上させるには、その目的と理由をしっかりと理解するのが先で「ココでアクセル全開にしなければいけない」と言われたら盲信して反復練習するか、意味までしっかり理解してから取り組むしかタモン式を習得する方法はありません。


 なぜここでフル加速しなければダメなのか?をとことんまで話し合い、その選手が持つスペックを全て出し切れるようにするのが「教え」の根本です。
 ですから一人一人指導内容が違ってきます。上達すればするほどに隣の選手とは違うことを指摘されるようになります。


 選手の性格もあるので、物の言い方やポイントも全てカスタマイズして説明します。100説明してもピンと来なければ1000説明します。
 その中で一つでも光を感じてもらえればそこを詰めていく作業を一緒にやっていきます。僕はそうやって長きに渡って多くのコーチ達から情報を得ながら自分にフィットする方法を模索し、モノにしてきました。地道ですが確実性が高まる方法の一つです。


 闇雲にタモン式を信じて毎日鍛錬を積むもよし、深く説教を聞き完全に理解しながら取り組むもよし。
 いずれにせよ膨大な時間と努力が必要です。週に1度や2度の練習と会議を繰り返しているだけでは時間が全く足りません。


 プレーヤーは、先述した「根本的な体づくり」のために食事やトレーニング、休息などにも最大限の努力を義務付けられます。
 その強度レベルは世界を目指すオリンピック選手と同様であることも当然でしょう。つまり休む時間など全くありません。


 それにプラスしてランニングバックとしての格を上げていく作業を毎日せねばなりません。この「毎日」に耐えられなくなり、僕は選手を引退しました。
 引退する日まで、または欲しいトロフィーを手にする日まで、目標は人それぞれでしょう。でもほとんどのプレーヤーは同じトロフィーを狙っています。


 そのライバル達を圧倒するための努力を惜しんでいては、明るい未来は待っていません。
 現在の社会人リーグではアメリカ人選手という大きな壁もあります。彼らを打倒することはニッポンに古くから伝わるランニングバック術では不可能です。


 「ニッポンのランニングバックのスタンダードを変える」と銘打つタモン式ですが、僕たちが養成したいのはニッポン独自のニッポン人にだけ通用するフットボールではなく、大きく強くうまいアメリカ人選手と対等に戦っていくための「心と体」です。


 僕は1980年代から90キロ以上の体重でランニングバックをしてきました。全盛期には105キロを超えてはいましたが、アメリカのプロ選手には「技」で全くかないませんでした。
 40ヤードを4秒4で走れる足も、ベンチプレスで200キロを支える筋力も、全ては「考え方と使い方」で結果が変わります。それが「技(テクニック)」です。


 フィジカルをいくら鍛えても心がついて行かなければ競技に生かされません。頭がついてこなければ、同じく競技に生かすことはできません。


 必死の思いで鍛えた体は、その競技でフルに使えてナンボです。僕らはそのサポートをしていきたいと思っています。
 ランニングバックに関しては、たいがいのことは解答を持っているつもりです。これも日々勉強で見識をアップデートしていますし、古代フットボールと近代フットボールを融合し、いいとこ取りするための研究は欠かせません。現役選手を10年以上前に辞めてからずっとそのことを考えてきました。


 コーチとして呼んでいただく機会が増えてうれしく思っていますが「ホンモノの男」を後押しする楽しさは、自分がタッチダウンするよりも心が騒ぐのだと知りました。


 そうこうするうちに、春のシーズンが始まります。結果は努力の量と比例します。ライバルを倒せるように、選手の皆さんは頑張ってください。

【写真】大学生を対象に開いたクリニックに参加した受講者と多聞さん