僕がRBを指導している早稲田大学が出場する12月18日の甲子園ボウルまで、あとわずかとなりました。チャンピオンシップのゲームウイークです。


 しかし、僕の耳に入って来るのは関西学院大学の勝利が濃厚というものばかりです。僕が現役選手だった頃は今ほど個人がネットに自分の思いを綴るという文化が浸透していませんでした。
 専門誌や新聞、良くてテレビが少しだけという感じでしたので、マスメディアを通じて相手を挑発していたことを思い出します。


 挑発された方々、今更ですがごめんなさい。まあそうやって自分を高めたついでにチームメートたちも乗ってくる、みたいなノリがアサヒ飲料時代は定着していました。
 メディア越しに好きなことを言い倒すという背景には、これ以上できないという努力をして得た「絶対的な自信」と「自分よりこのゲームにかけてきた人間はいない」という思い込みがあります。


 ですが、今回のように「神聖」と言いますか学生フットボールの聖域と言いますか、そこに根付いているわけでも何でもない臨時コーチの僕が「アホンダラ、ボケカス、こっちもやったるから顔洗って待っとけや!」なんて言えるはずがありません。


 さらに甲子園ボウルのために特別な努力もしていませんので、せいぜい「本日はお天気も良くゲーム日よりですね。関西学院大学の皆さん、どうぞよろしくお願い致します」といったところでしょう。いえ、あいさつする資格さえないかもしれません。


 関西学院大学は1試合に攻守合わせて120プレー以上行う中で、全て違うセットプレーをすることができる上に、体力面でも全員がしっかりと鍛え上げられているという印象のチームです。
 日本のフットボール界に名コーチを多く排出している同校ですから、選手各々のフットボールインテリジェンスやチームへの忠誠心や帰属意識も非常に高い人ばかりだと思います。


 しかし、この点では早稲田大学も負けてはおりません。選手各々の戦術理解度はかなりのものだと感じています。
 チームの作戦が書いてあるプレーブックを見ずに「己の技術と心構え」だけを指導する僕は選手たちとミーティングする際、彼らのインテリジェンスにいつも感心させられています。


 関西学院大学がいかに複雑で10手先を考えた作戦を用いて来ても、それを粉砕し「作戦では対処できないような戦いができる精神面と体力的なタフさ」も備えています。
 大舞台とはいえ、早稲田大学は昨年も甲子ボウルを経験しているので「過剰な緊張」「興奮し過ぎ」もありません。いつものゲームと同じくやるべきことをやるだけです。


 短い間でしたが、彼らが本来持っている優れた才能に、少しだけ僕の知識をフリカケてみたら現役時代の僕も顔負けの「ゴリゴリ走法」も簡単にやってのけています。
 コンビニで買い物する時と同じような「平常心」で持てる力を普通に発揮すれば、今年の甲子園ボウルを楽しい思い出でき来るんじゃないかなと思っています。


 僕の都合はまだ付いておらず、試合当日会場に行けるかどうかはわかりません。僕は関西学院大学を苦手としており、15年ぐらい前にライスボウルで負けて以来フラッグフットボールでも負けっ放しです。


 しかし、僕が試合会場に行った試合では早稲田大学は負けておりませんので、何としても仕事の都合をつけて駆けつけたいと画策しています。
 関西エリアにお住いの僕のお友だちは、ぜひ甲子園球場に来て「早稲田大学側」で応援してくださいね。そして、選手の皆さんには頑張ってほしいです。あんなに頑張って来たんだから。

【写真】12月18日の甲子園ボウルに出場する早稲田大学のRBコーチを務める中村多聞さん=撮影:MAKOTO SATO