僕が技術コーチとしてこの夏からお手伝いさせていただいている早稲田大学が「甲子園ボウル」に出場が決まると、周りの方々から山のように「甲子園出場おめでとう!」「タモンコーチありがとうございます」と賞賛やお礼を頂戴する日々が続いております。もちろんうれしいわけですから、笑顔でお応えしております。


 ただ、僕の中では少し違和感があります。「甲子園ボウルに出る」などというのはとんでもない偉業であり、学生フットボール選手なら誰しもが出場を夢見る聖地です。若い頃の僕も当然憧れました。


 大学3年生から始めたフットボールは当時関西の3部リーグ。すぐに入替戦で翌年は2部リーグ。そして4年生の終わりには1部リーグとの入替戦に勝利し、3年目の5年生時に「甲子園ボウル優勝!」という目標を掲げていました。真剣に。
 しかし初年度のデビュー戦で、10分クオーターなのに100点差以上つけられて惨敗。僕の3年計画は初っぱなの9月に潰えてしまいました。


 不真面目に思われるかもしれませんが、それでも真剣にいつか巡って来るかもしれないチャンスをつかもうとして毎日必死で練習しました。
 結局3部リーグから抜け出すことすらできず、甲子園ボウルなど夢のまた夢。当時の出場校である関西学院大学、日本大学、京都大学に明治大学。憧れまくって憧れまくって甲子園ボウルのビデオを見た回数など100回や200回ではききません。


 明治大学のRB吉村選手のフォームや装具を真似したり、当時の明治大学のプレーをそのまま丸ごとコピーして試合に臨んだこともありました。
 指導者もいない中、暗闇でもがき苦しみながら甲子園ボウルなど自分の実力や立場では絶対にかなうことのない目標だとわかってはいましたが、その現実から目をそらして一歩ずつ前進する日々を送っていました。


 社会人になってからは海外に出たり、いろんな賞をいただいたりと、華々しい選手生活を送ったことは読者の皆さんがご存知の通りですが、唯一出場がかなわなかったのが「甲子園ボウル」だったのです。
 あんなに憧れた「甲子園ボウル」ですが、今回お手伝いしている早稲田大学があまりにもアッサリと出場を決めてしまい、僕もついでに連れて行ってもらえることになったわけです。


 そこで僕の中にどんな違和感が残っているかと申しますと「何にも努力していない」に尽きると思います。「いやいやそんなことはない、それなりに役に立っているよ」というありがたいご意見も頂戴しています。
 でも僕はやはりあくまでも部外者で、練習にもロクに参加できていません。熱心な一人の選手が週に1、2度僕の所に訪ねてきてくれるので、そこで練習や試合のフィルムを見て意見の交換をしているだけです。それもたったの2、3時間ほどの話です。


 選手たちは週に7日、四六時中「甲子園ボウル」に向かって何らかの努力をしています。それにひきかえ僕は、彼らがフットボールに費やしている時間に仕事や他のことをしています。


 昔は有名やったか知らんけど、夏から急に出て来て選手の名前すらほとんど知らないような人間が偉そうな態度で我々の優勝に便乗しやがって、と感じている人が早稲田大学関係者に一人も居ないと断言できません。
 やはり「所属」というからには、おおよそ週7日行われているチーム活動の100%近くは参加していないと、と思ってしまいます。


 甲子園ボウルに対して努力の量が丸っきり違う僕のような者が、彼らが青春時代の全てを費やしてやっとの思いでつかんだプラチナチケットを軽い気持ちで借りることに大きな違和感を持っています。
 ましてやOB諸兄やご父兄、大学関係者の皆さんからお礼を頂戴したりなど全くもって筋違いで困ってしまいます。お礼を言うべきなのは僕の方なのですから。


 必死に頑張っていた彼らが昨年に引き続き再び甲子園に行くことができて本当に良かったと思いますし、横で応援していてとてもうれしい気持ちでいっぱいです。


 当日は仕事の都合で、甲子園球場に行くことができるかどうかはこれを書いている時点では未定です。
 僕の感覚では、彼らが平常心で練習場と同じパフォーマンスができれば十分に勝機があると思っています。濱部監督を最後まで信じてゴリゴリに暴れてきてほしいです。みんな頑張れー!

【写真】早大が関東学生リーグ1部TOP8で優勝を決めた日大戦で選手に指示を与える多聞さん=撮影:MAKOTO SATO