リーグ最終戦。地元相模原でのホームゲームに首位の富士通を迎えた我が「ノジマ相模原ライズ」は、崖っぷちの戦いに臨みましたが無念の敗戦。これでプレーオフには行けなくなってしまいました。
 結局レギュラーシーズンは1勝5敗。リーグのシステムが今年から大幅に変更されたとはいえ、残念な結果になってしまいました。


 優秀なアメリカ人選手が夏から3人補強され「今年はノジマが優勝候補だなんて言われていたのに、何やってんの?」と思われた方も多いと思います。また、応援してくださった方には大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。


 生で試合をご覧になった方は、彼らアメリカ人選手の活躍や躍動感に度肝を抜かれたことでしょう。部分部分での動きはNFLを彷彿とさせる切れ味があり、相手守備を圧倒する場面もしばしば見られました。
 QBのガードナーはパスとランで合わせて14個ものタッチダウンを取っていることからも、活躍の度合いが分かります(LIXILのQB加藤さんはパスだけで15個ですが)。


 しかし、ブランクがあった上に夏からの急な参加で調整不足。日本の高い湿度と気温に体がいつまでも慣れず、その上食事も合わないという事情に加え、チームメートとのコミュニケーションも英語ではなかなかうまくいきません。
 細かいニュアンスやリクエストなどはザックリした状態。NCAAでトップ選手だった彼らが真摯にXリーグを戦うことはもちろんできません。なぜなら、日本のフットボールを「ナメている」からです。


 ライズを含め選手やコーチを敬わず「VIP」気取り。初戦を落としても日本フットボールの兵法に気づかず、何の対策も講じられないどころか、気持ちを入れ替えることもありませんでした。


 練習で投げる球威と、敵に追われながら焦って投げる球威では倍も違うようで、日本人レシーバーでは捕球するのが精いっぱい。時には球速が速すぎて、手と手の間を抜けてしまうような事態まで起こってしまいました。


 先日のNFL中継で解説者の森さん(LIXILヘッドコーチ)が最後にポソっと言っていました。「結局チームを勝ちに導くQBに価値がある」と。
 ヤードを稼いでタッチダウンをいくつ決めても、勝たせなければ価値がないという、我々への愛あるメッセージだと勝手に思いました。


 先週のコラムでは「必死のパッチで頑張ろう」と、選手達にげきを飛ばすようなことを熱く書きましたが、間違っていたようです。ミスしているのは我々コーチなのです。


 NFLのマイアミ・ドルフィンズで偉業を達成した名コーチ「ドン・シュラ」が言っています。
 「私は長年選手やコーチ陣の能力を引き出すことに専念してきた。つまるところトリックプレーに走ったり、斬新な作戦を導入したからといって勝負に勝てるわけではない。互いのデータ量に差はない。では勝つためにはどうすればいいのか。チームプレーに徹して力を尽くすという気構えを、選手や部下に持たせることだ。これは実に大事なことだ。結論を言えばそれがコーチの仕事なのである」


 名のあるアメリカ人選手だろうと、地方リーグの補欠だろうとチームプレーに徹して力を尽くすことが重要だという名コーチのお考えです。
 僕も当然そういうコーチに恵まれた時に能力以上のものを発揮できた経験があります。これをアメリカ人にも徹底させられなかった指導側と運営側にミスがあったことは否めないでしょう。


 「目標は優勝だ」とは分かり合えていても、言葉が通じない人との意見交換や意思伝達はどうしても不十分になります。日本人同士でも、理解し合うのは非常に難しいわけですから。


 専門の通訳を用意するなど、何か良い手段を考えねば日本や日本人に敬意を払わない外国人選手は単なる爆薬。使い方によっては敵地ではなく自軍の基地で爆発し味方を多く倒してしまいます。
 英語が話せるコーチがいても意思疎通ができるのはその人だけで、常時通訳してくれるわけではありません。


 日本人同士でいつもやりあっているプレー中の微妙な会話ができません。アメリカ人がミスをしても「おい、ちゃんとやれよ」すら言えない雰囲気。選手それぞれは自分のことで精いっぱいですから、英語で何か言うのもしんどいし時間もかかります。
 臨時のポジションコーチの僕や、こういったことに違和感を持つ選手では、この問題に根本から対処することはできません。


 寒い日も暑い日もライスボウルを目標に頑張ってきたのに、一年を棒に振らざるを得なかった選手たちの悔しい気持ちは計り知れません。
 選手にとっての1年間は本当に長く大変な時間です。仕事や家族、けがともうまく付き合ってやっとの思いでフィールドに立っていたのです。


 勝っても負けても、選手たちが納得のいくシーズンを過ごすことができればいい。それが、新米コーチの切なる願いでもあります。

【写真】今シーズン、ノジマ相模原ライズのコーチとして選手にげきを飛ばした多聞さん=撮影:MAKOTO SATO