「タモン式ランニングバック養成所」が指導させてもらっている「ノジマ相模原ライズ」が、今シーズン開幕2連敗。僅差での惜敗とはいえ、数年後にこの記録を見たときには単なる「敗戦」でしかありません。


 開幕2連敗など社会人になってから初めてです。相手のあることなので「常に勝つ」というのは厚かましい考えではありますが、それを踏まえてもやはりションボリです。
 負けるより勝つほうが良いに決まっています。今年から導入された新しいリーグ戦の制度を理解していませんので、未来があるのかどうかもよく分かりません。


 そして3節目は、大雨の中どうにかこうにか今季初勝利。しかし、ランニングバック陣がほとんど活躍していないのですね。
 走れるアメリカ人QBが加入したとはいえ、ランニングバックが機会を生かしきれていないのは否めません。パッシングモアな攻撃スタイルの合間ですら、ランプレーで敵を切り裂くことができないわけです。これは「タモン式」の指導力不足と認めざるを得ません。


 ノジマ相模原ライズはトップリーグに所属していますから「日本一を目指す」という大義があるので、タモン式では「日本一の取り組みは当然」という指導法を用いています。一切の妥協なく全身全霊をかけて「ランニングバック道」に邁進せよ、ということです。


 実力や能力が日本一かどうかより「君の取り組みは日本一なのか?」「家族や仲間から日本一の取り組みをしていると認められているか?」という問いに対し「当然だ」と即答できるかどうか。そうでなければ練習毎に仲間の前で「日本一を目指すぞ!」と叫ぶ資格などありません。
 恥ずかしげもなく100人の仲間にウソをつくような者に、決してトロフィーが転がり込んでくることなどないというハードな考え方です。


 仕事や家庭の環境に恵まれずフットボールを続けていくだけでも大変だ、というような事情もあるでしょうが、それは「日本一を狙う資格がない」だけのことです。
 不遇や不公平は必ずあるわけで、みんながみんな最高の条件で練習や試合に臨めるわけでもなく、最後に勝利するのは一チームだけです。「どれだけやったか」を競い合った上で、ゲーム当日の出来と運はいろいろあるでしょうし、技術コーチの僕がどうにかできる話ではありません。


 フットボールでうまくいかず、挫折して心が折れそうになった27歳の時、取引先だった元バイクレーサーの社長さんが僕にこう言ってくれました。
 「タモンくん、ワシは昔レースしてたんやけどな、レース終盤に表彰台には立てない位置で走ってたんや。でもな、トップグループがコケてしもて、ゴールしたら表彰台に立てたんや。だからな、勝てないかもしれへんからって諦めんと、全力で前に進んどかなアカンのやで。まだまだ諦めたりすんなよ」


 そして、失速しそうになった僕のヤル気は挫折前の状態に復活し、いろいろあって(詳しくはコラム多聞物語を参照ください)今に至ります。


 僕の場合はヤル気と体力だけ一人前で、技術と経験、そして作戦の理解力がマイナス点でした。試合に出るためには非常に不利な状況です。
 体力だけあって経験も少なくその上飲み込みが悪い。こんな選手を使うコーチはいません。でもこんな状況にもくじけず、今日できることを徹底的にやるしか補欠に残された道はありません。
 レギュラー陣のけがで繰り上がり当選を待ったとしても、大切な試合で活躍できる実力が伴わねば大恥をかくどころかチームに迷惑をかけてしまいます。


 話が少しそれましたが、「日本一を目指す」は単なる合言葉ではなく本気の本気で取り組まないとウソになります。
 しかし、3部リーグの大学を出て10年後にようやくエックスリーグで大活躍するほどに成長した僕のやり方や考え方はとてつもなく極端で、普通の社会人選手に真似できるはずがありません。


 生きている時間を全てランニングバック道に費やし、家族や仕事は最低限、何しろ全てがランニングバックです。「残業が」「子どもが病気で」とかは、家族には申し訳ありませんが全部無視か後回しです。
 ですから未熟な選手が「日本一を目指す」と大声で叫んでも、努力のしかたが中途半端でその目標がかなわないことをよく知っています。


 ある程度の選手であれば、やり方を少し修正するだけで飛躍的に結果が変わってくるはずの「タモン式」ではありますが、本人のヤル気に関わらず「既成の概念による固定観念」と「長年蓄積されてきたクセ」には勝てない場合があるのだと痛感しています。
 人は変化を嫌い、適応するのに時間を要します。時間をかけて慎重に取り組まねば成果が生まれません。


 「時間」がこれほどに重要だとは想定外でした。コーチって難しいですね。でも諦めません。それが僕の生き方ですから。

【写真】ノジマ相模原ライズの選手に細かい指示を与える多聞コーチ