さて、Xリーグのアサヒ飲料で選手を引退し10年間フットボールに関わらずに暮らしてきましたが、最近毎日のようにフットボール漬けになっています。
 土日はノジマ相模原ライズ、平日は早稲田大学でランニングバックスにああでもないこうでもないとご託を並べています。


 僕が主宰する「タモン式ランニングバック養成所」では、技術的な指導ももちろん行なうのですが、最も肝心なのは「考え方の指導」だと言えます。
 ランニングバックとしてどのように生活し、どのように体を鍛え、どのように練習に取り組み、どのようにゲーム中に「考えるのか」を徹底的に指導します。


 たった10プレーのスクリメージでも、ビデオミーティングは油断すると2時間ほどかかります。1プレー毎に細かい部分までどれだけこだわったか。そしてどれだけ実行できたか、どうするべきだったかを延々と話し合います。


 プレーが失敗したときに、オフェンスラインがどうだ、敵の守備がどうだといった外因は一切無関係である、という考え方になってもらいます。
 すべての結果は、大切なボールをチームから預かった者の責任であり、どんなことが起ころうとも自分の責任である、という考えになってもらいます。


 カリキュラムの詳細をすべては公開できないのですが、考え方や思想という物は好みや時期などによってブレてしまうので、僕がジーッと監視してミスや気の緩みを注意しています。


 「この場合はこんな方法があるんだよ」というように、すぐに答えを用意できるようなこともしばしばあります。
 ランニングバックに起こり得る全ての事態を想定し、僕が年月をかけて計算して答えを出してきた技術や対策を授けたりもしています。彼らが成長し大きな試合を支配している姿を見られる日が来るのを心から望んでいます。とても楽しみです。


 そんな毎日ですが、実は今年僕にとって初挑戦があるのです。大きく括ると「コーチ」そのものも初挑戦ではありますが、そうではなく全ての大学チームが目指している「甲子園ボウル優勝」というものを目指した経験がなかった(ライスボウルは出たことがありますが、甲子園ボウルは未経験です。観戦や取材にしか行ったことがありません)のです。
 ご存知のように僕の出身大学は3部リーグの弱小でしたので、テレビ中継されるようなゲームには無関係。いつか自分もテレビ中継されるゲームに出たいと憧れた日々が懐かしいです。


 僕は大学で4年間プレーしていないので、残った年数分をまだ選手登録できるのですが、米国のNCAAの規定で「プロフットボール経験者はアカン」という条項があって、どこかの大学に編入や再入学できたとしても、試合に出場するための登録はもうできないのです。


 これはアサヒ飲料時代に、結構本気で「甲子園ボウル出場のために大学に編入し、アサヒ飲料とその大学でライスボウル対決、ランニングバックとして両チームから出場しどちらが勝ってもMVP獲得」を目論んでいました。
 チームメートだった甲子園ボウル経験者のエリート「山田晋三」(関学大OB・現IBMヘッドコーチ)とミーティングを繰り返し「それめっちゃオモロい!」と二人で盛り上がったのですが、彼がこのルールの存在を発見し僕の甲子園への夢は潰えてしまったのです。


 30歳を過ぎた大学1年生が甲子園ボウルで活躍する。確かに面白そうでした。あれから15年以上が経ち、ふと気がつけば「甲子園」を目指す組織の隅っこに入れていただいているわけです。
 これは燃えてきます。頑張るしかありません。選手たちには申し訳ありませんが、甲子園は僕の夢でもあるので、より一層ビシビシとシゴいて今より少しでも上手になってもらおうと思っています。


 200人ほどの選手が吠えまくる練習も生まれて初めてです。すさまじいサイクルで人と練習内容が入れ替わり全員が一体となって頑張っています。
 しかし、練習後は監督から「気合が足りん!」と喝が入ります。昔から、コーチは全員に言っているのに自分だけが叱られているような気持ちになるのが僕のクセなので、勝手にションボリしてしまいます。


 オフが終わり、本格的な夏合宿もあります。久々の「シーズンイン」を味わっています。夢の甲子園ボウルに向かって、明日も昼間っからフットボールです。

【写真】多聞さんが指導する早稲田大学のRB陣と