「タモン式ランニングバック(RB)養成所」の主宰者として、Xリーグのノジマ相模原と早稲田大学を指導することになりました。


 現役選手時代から単発や短期間の指導は幾度か経験はあるのですが、当時はあくまでも社会人トップ選手の動きを生で見せたり体感してもらったりという程度でした。
 当時はまだ、自身が持っている「走行術のネタ」を公開したくないので、あまり深く他人様に教えるということはしませんでした。誰かに教えると途端に自分が活躍できなくなるという確信があったからです。


 僕のような乏しい才能で活躍できた理由はただ一つ。それは「やらなければならないことと、やってはいけないことを皆さんより少し多く知っている」だけなのです。
 つまり、ある程度の経験がある選手であれば、この「知識」さえインストールして頭と体が慣れてしまえば「走り」が変わります。
 セットバックやショットガンといった隊形や、チームのランに対する考え方などは関係ありません。その他の細かい作戦も関係ありません。コーチがミーティングで黒板に書くRBの走る矢印の通りに走るだけです。それはつまり、コーチの希望と夢を叶える「マシーン」になるということです。


 こういうことを少しマトモな人に話すと、必ず「どんなことするの?」「何を教えるの?」と聞かれます。でも僕の答えはいつも同じで「普通にやるのです」「ちゃんとやるんです」「当たり前のことをするのです」となります。


 からかっているように思われがちですが、この「普通」「ちゃんと」「当たり前」というのが何より大切なのです。
 ニッポンではいまだに30、40年ほど前に誰かが編み出した「昭和のハウツーRB初心者編」を運用しているケースが多く、僕の考えと微妙に違うのです。


 僕は幸い初心者の頃に誰からもRBとしてどうするかを習わなかったので、この「昭和のRBテクニック」というものをほとんど知りませんでした。
 鳴かず飛ばずだった20代の後半に「未経験の大学1年生に教える基本」とやらを教えられ、RBとしての軸がへし曲がった経験がある程度です。今考えるとメチャクチャなことを教えてくれたものです。


 では「昭和式」と「タモン式」では何が違うのか。まず「RB」というポジションの考え方が違います。RBは単なるポジションの一つではなく、競技そのものであり、スポーツとして一つの種目である、という考えです。
 しかし、これは他のポジションにも言えることでしょう。専門的な技術や作戦、役割があり完全分業制のアメリカンフットボールではなおさらです。ですから自分を専門家でありプロフェッショナルであることを再認識してもらいます。


 そして次に、以下の項目を肝に銘じてもらいます。
①RBは戦闘員であって指揮官ではない
 「コーチの決めた作戦を遂行するために存在するのが戦闘員で、意見をしたり別の考えを示すことは裏切り行為である。雑念なく決められた役割を遂行することに全てをかける」


②RBの走路はRBが決める
 「守備がどうだとか、味方の選手がどうだとかではなく、あらゆる局面で自身が走るレーンを素早く正確に判断する訓練をし続けた上で、全力で駆け抜ける勇気を絞り出し実行する。局面局面であっちやこっちに逃げ惑わない。RBの能力の半分は「判断力」である」


③試合より練習を重んじる
 「できることの確認作業は不要。できないことや新しい情報に対して、全力で挑戦し全ての壁を克服する努力をする。試合は、それの結果発表の場にすぎない。チームの役に立つだけではなく、自分を高め貪欲に上達を目指す。訓練あるのみ。練習時間の100%を「向上」のために使う」


④RBの取り組みでチーム全体を変えられる
 「ボールを中心にフィールドで選手達が動き回り、それを周囲が見ている。ボールを持つ選手が主役でありチームの運命を握っている。その選手がどれだけハイレベルかつ情熱的にプレーしているかでチームが変わる。強い走りができるランナーがいれば、守備も変わるし攻撃陣もどこに向かえばいいのかが明確になる」


 なんてことをオーバーに並べていますが、よく考えると当たり前のことばかりで、先述した「やらなければならないことと、やってはいけないこと」の一部です。
 こういった簡単なことを、何度も何度も口にしてその選手にとって「アタリマエ」にしてもらいます。そしてこの考えを軸にして細かな技術指導に入ります。


 「昭和のRBテクニック」の素晴らしいところはちゃんと残した上で「タモン式」の技術を身につけます。
 特別なことはしませんが「僕の中のNFL(テレビで見た数十年分プラス体験プラス間近で見学し続けたモノ)」を組み立てて翻訳し、細かく解析しニッポンで活躍するためにニッポン人向けの方式をいろいろと考え出しました。それが「タモン式」独特のメソッドとなります。


 ただし、残念ながらスポーツですのでやはり膨大な練習量が必要で、変わるためにはこれまでの「おかしな癖」を排除しなければなりません。
 大事な場面で「癖」が出るのは当たり前です。その「癖」をバージョンアップさせるのが目的です。


 チームのエース級であれば誰でも変わることができます。人生最高の技術と成果を手に入れ、ワンランク上の高揚感を得たい人。そして心からうまくなりたいと思っている人のためにだけ、チーム練習に訪れてアドバイスしています。


 ボクシングで言うところの「セコンド役」として、選手の細かい動きに目を配り注意し修正します。教えるだけでなく、質問を投げかけ自身で考えてもらうことも多々あります。
 「養成所」などと言っていますが、結局普通のことを妥協せずきちんとやるだけなのです。


 自分がフットボールを通して経験してきたことが、ヤング達の役に立つのであれば時間を捻出するのも楽しいものです。
 基本的に平日は大学生、週末は社会人を教えます。「タモン式メソッド」とタモンを信じ、けがをせずシャカリキに頑張れた人は、年末年始に大きなトロフィーを抱くことになるでしょう。

【写真】「パールボウル」で臨時コーチとして指導したIBMの選手の動きをチェックする中村多聞さん=撮影:MAKOTO SATO