僕が大学を出て社会人になったばかりの25年ほど前、「三武ペガサス球団」所属時代に2部リーグで競う「ジュニアパールボウル」に毎年出場しては決勝戦で敗退していたという思い出があります。
 チームは4年連続で準優勝。僕自身は3年連続。我がペガサスにジュニアパールボウルで勝った相手は、その秋に1部リーグに昇格するという形が出来上がってしまいました。


 秋の大会に比べて、春の大会を軽視しているのは否めませんが「セコいプレーでも何でもとにかく勝てばいい」という秋と違い、選手の地力が発揮できる作戦を用いることが多いので、複雑な作戦や理念が体に染み付いていない新人や補欠が暴れやすいわけです。
 つまり春に暴れることができない新人や補欠には未来がないのです。少なくともその年度は。


 そんな中、新人補欠時代の僕は作戦を覚えるのが非常に苦手で、春だけは伸び伸びとプレーできるので、しっかりとチーム内での得点を稼ぐことに腐心していたのを思い出しました。
 秋のシーズンは戦績によっては急に作戦や方針が変更になったりで、練習についていくのがやっとでした。120%の力を発揮するのが非常に難しい心理状態です。失敗が怖いですから。


 そこで「失敗とは何か?」という哲学を軸に置き、3月からIBMビッグブルーのRB臨時コーチを務めています。
 有り余る才能で華々しい経験や記録を持つ選手ばかりを相手に、大学3部リーグ出身の僕のような者がアドバイスします。


 最初は疑心暗鬼とはこのことだという顔つきで僕の説明を聞いています。完全に変人扱いです。新しい技術や考え方を提案しても、なかなか自分の過去を振り切ってもらえません。
 僕は教えることに関しては著しく未熟ですので、お互いに大変です。


 相手に気持ち良く納得してもらおうという気持ちがありませんので強制します。理由は簡単です。活躍できない理由がハッキリしているからです。
 足らないところを補うための講義と練習をするのにいちいち学ぶ側の納得を求めている時間はありません。


 「コーチタモン」はボクシングで言うところのセコンドです。毎度の練習でずっと選手と対峙して、細かいところを指摘し続けて修正します。弱点を見つけて責めまくります。
 そして少しずつ変わっていき、気がつけばチャンピオンになる、という筋書きでしたが駄目でした。力不足でした。


 久々のボウルゲームのフィールドに立つ(2002年のお正月以来)ということで、僕も気合が入ったために、初めてフットボールを見る初心者の方を多く招集しておきました。
 その方々の誰からも僕の関わっているRBの背番号を聞くことができませんでした。チームは優勝しましたが、目立って目立って仕方がないというほどに活躍できるようにが目標でしたので、とても残念です。


 会場には多くの観客が入り、大歓声の中でプレーできる彼らを心底うらやましいと思いましたね。入場を控えた通路で興奮するプレーヤー達。試合中にプレーの出来不出来で盛り上がるサイドライン。一進一退の好ゲームで、張り詰めた緊張感がベンチ内に漂い、かなりのスリルと高揚感を味わえました。


 こんな中で、かつて自分もプレーしていたとは信じがたい気持ちでした。照明はLEDになって空気の色が少し変わり、人工芝も昔とは質が違います。
 でも歓声の響き方は同じです。二度とあの若い頃には戻れないんだと痛感しながらも、日本のRBはやっぱりこの東京ドームで大観衆をわかせるような経験をすべきだと強く思いました。


 あの場所で、最後までしっかりと平常心を保ち練習してきた成果を存分に出せる選手を目指して頑張ってもらいたいですね。

【写真】指導したIBMのRB陣と試合後記念撮影する多聞さん=撮影:MAKOTO SATO