昼間に2度のNFLプラクティスを経験し、疲れ果てた僕にまだ仕事が残されていました。それはミーティングです。
 全員を集めてマイク・ホルムグレン・ヘッドコーチ(HC)がいろいろ話します。「練習はしんどいけどけがせんようにしっかり頑張れよお前ら!」みたいな感じです。その後はオフェンス、ディフェンスに分かれてプレーのお勉強です。


 オフェンスコーディネーターは49ersのビル・ウォルシュに長年仕えて「ウエストコーストオフェンス」とやらを使いこなす達人のシャーマン・ルイスコーチ。同じくビルウォルシュのお弟子さんであるホルムグレンHCより5歳年上。難しいプレーを早口でガンガンインストールしていきます。
 その後はポジションに分かれて今日のプレーをビデオで見ます。それで解散。流れは日本のチームと同じですね。


 この後、嫌がる河口マーサを無理やり引っ張って、寮の近くにあるバーに行って一日の疲れをビールで洗い流します。
 「イヤー疲れたなー」なんて言って飲んでると、他のお客さんが僕に目で合図しながらバーのテレビモニターを指差してます。それを見ると僕が夜のスポーツニュースでインタビューされてる映像が流れてるではありませんか。


 英語で質問されてるのに、思いっきり大阪弁で回答してて滑稽です。もちろん字幕スーパーで英語が出ています。
 「俺たちのパッカーズと日本人が初めて契約した!」といった内容でした。昼間はあれだけ集まってきたファンの皆さんですが、プライベートな時間にはサインを求めたり写真撮ってくれみたいなことはありません。ユニフォームを着ていない時はそれがマナーなのでしょうか。


 心地よく酔っ払ってきたら、バーのドアが開きグリーンベイ空港に迎えに来てくれたオッちゃんが入ってきました!
オッちゃん「ここに居ったんかお前ら〜」
タモン「んじゃ、一緒に飲みますかー」
オッちゃん「アホか! 門限過ぎててお前ら行方不明やから大騒ぎなってたんじゃ。すぐ部屋に帰れ!」


 しかし、何かのトラブルがあって緊急に部屋に帰らないといけないんだよ、と言ってるように思えた僕は「これ飲んだら帰るわー」と答えます。
 全然飲んでいないシラフのマーサ河口は「コレめっちゃやばいですよ。ハヨ帰りましょ」と真剣そのものです。歩いて10分ほどの長い道のりを小走りで進むマーサ河口に「今更急いでも一緒やてー」とゴネながら、汗だくになって部屋に戻りました。


 翌朝ももちろん、張り切って練習に参加です。薄いアメリカンビールを飲んだだけなので二日酔いもなし。前日と同じくサインしまくってビデオカメラ持参です。


 グラウンドで全員集合し、コーチマイク(ホルムグレン)が「昨日、新人のジャパニーズが門限破りをした。バーで酒飲んでた。アホかお前らどういうつもりじゃ、前に出ろ!」と言われスゴスゴと全員の中心にいるマイクコーチの前に出ました。


 「2・度・と・す・ん・な・よ!」と顔に指を刺されながら釘を刺されました。やばい、このままでは「単なるヘタクソが、門限まで無視するカス人間と思われてしまうじゃないか」と思った僕は、とっさの言い訳で最前列でニヤニヤと笑って見ていたエースQBブレット・ファーブを指差し「こいつも一緒でした。サケサケメニーメニーで二日酔いなはずですコーチ」と風向きを変えてやりました。


 すると思った以上にファーブが慌てふためき「アホか、俺行ってへんわ。何言うてんねんお前。コーチ、僕ホンマに行ってませんて」となって事態は全て笑い話となり収束。契約の翌日に解雇とならず何とか日本男児の面目を保てました。


 次回はこの世界的スーパースターのファーブ氏が、この後の練習でどれだけ僕を驚愕させたかをお話したいと思います。
 初日ではハンドオフでしか接点がなかったので、彼のパッシング能力をチェックしてみたいと思います。お楽しみに!

【写真】キャンプ初日から門限破りをしてヘッドコーチに怒られた多聞さん