NFLパッカーズの練習に参加し、こっぴどい洗礼を何度か受けながらも、どうにかこうにか時間が過ぎていきます。とりあえずパッカーズサマーキャンプのスケジュールは以下の通りです。ロッカールームに張り出されていたものを、そのまま和訳してみました。


6:30 起床
6:30~8:00 朝食
8:45 練習開始
11:30~13:15 昼食
14:15 練習開始
16:00 全体ミーティング
17:00~19:15 夕食
18:15 スペシャルチームミーティング
19:30 全体ミーティング
21:15~22:30 スナック
23:00 就寝


 前回ご紹介したように、黒人RBの俊敏で地を這うような走りを見せられ落胆はしましたが、ここで泣いていてもどうにもなりません。
 練習内容は一見すると日本と同じではありますが、単にボヤーッと動いているだけの人など誰もいません。しかしこれは既にマイナーリーグのラインファイヤーで経験済みです。どんなドリルでもゲームと同じかそれ以上の気持ちで臨むのは一流にとって至極当然の行為です。


 ましてやココはメジャー中のメジャー。ここ最近のスーパーボウル2年連続出場チームです。世界最強のチームと言えるでしょう。勘違いした奴など存在できません。
 練習は自身を向上させて優勝するため(そして自身のサラリーのため)にやっているのですから普通に考えればわかることですが、これが意外と難しいんですね。


 日本でも米国同様に年度の終わりにチャンピオンシップがあり、それを目指しているはずの練習が「できることの確認」に終始する場合があります。
 試合終了間際の、切羽詰まった心理状態で肉体も消耗し切っている中、練習で身に付けてきたことを全て発揮せねばならないのを、ついつい忘れるのが日本人選手の甘いところです。


 決勝戦の最後、このプレーが失敗に終わったらチームが負ける、という時に笑えますか? 冗談が言えますか? ユニフォームの着こなしを気にできますか? いえ、できないでしょう。でも練習中にはそれをしてしまう。やれてしまうのです。


 しかしこんないい加減な取り組みをしない人たちは、わずかながら日本にも居ます。それは強かった頃の京都大学ギャングスターズの面々です。
 もちろん学生時代の彼らのことはテレビでしか知り得ませんし例外もいます。僕がいろんな社会人チームで見た彼らの取り組みは「NFL選手」と酷似しています。


 これは運動能力にあまり恵まれない人たちが多くいた中で、甲子園ボウルやライスボウルを沸かせることができた大きな理由の一つだと思っています。
 もちろん優勝などの華々しい結果を残すのは素晴らしいアスリートが幾人かそろった場合に限られていたようですが、高校で運動経験のないような普通の学生たちが「NFL選手」と同様の心意気でフットボールに取り組んでいたからこそ、成し得ることが出来たと僕は信じています。


 リーグ内において圧倒的な実力があるなら問題はありませんが、強敵との勝負になればミスや失敗の山を築くような選手に限って練習着のファッションや髪の乱れを気にしているものです。
 今やらねばならないこと、目の前にある問題、これをやっつけるために全精力を注ぐのが難しい人は当時の京都大学のような結果も残せませんし、ファンや家族といった周りの人たちの心に何も残すことはできないと思います。


 優勝を目指して頑張るならば、作戦やトレーニングばかりにエネルギーを使わず、自分の集中力に関心を持つことをお勧めします。
 集中力とは他人の視線を気にするなとか、結果を恐れるなといった「雑念を取り払う」ということばかりではありません。


 同じドリルやプレーにおいても注意すべき点、力を入れる場所、スピード、力強さ、視線、などなど留意しておかねばならないはずの事項が、全力で挑戦した時についついおろそかになってしまうのを防ぐということでもあります。
 熱心にやればいいというものではなく、与えられた課題を満点でこなした上で相手に勝利せねば「正しい結果」とは言えないわけです。「自分なりに頑張った」という敗者特有の理論は通用しません。


 この「強烈な集中力」でNFL選手がしのぎを削るサマーキャンプ。生き残りをかけ、人生をかけた「本物のフットボール」を少しでもリアルに皆さんに感じて頂ければいいなと思っています。


 これを書いている4月12日、アサヒ飲料チャレンジャーズ時代にとてもお世話になった関西学院大ファイターズOBの鈴木智之氏(愛称・テッド)がお亡くなりになりました。
 最初はフットボール好きな近所のオッちゃんぐらいに思っていましたが、後に僕の「フットボールのオヤジ」と思わせていただくほどにお世話になった人でした。


 「DO YOUR BEST, AND IT MUST BE FIRST CLASS(死ぬ気でやれ。そして一流であれ)」をいつも教えてくださった方です。
 ライスボウル優勝時にテッドを僕の背に乗せて撮った写真は、いつも僕のお店に飾っています。これからも天国からフットボール関係者を見守っていてくださいね。また美味しいステーキ食べに連れて行ってやテッド!

【写真】NFLパッカーズのサマーキャンプに参加した多聞さん