先週のコラムで「注目すべき」として挙げた三つのゲームのうち、富士通スタジアム川崎で行われた2試合を観戦しました。
 前年度日本王者の富士通に挑んだノジマ相模原は新外国人QBアンダーソンの不振により、点数的に競ることなく敗退。そして翌日にはIBMに対してアサヒビールが前半は食らいつくも、後半失速でこちらも前年度成績上位チームを食うことなく敗退しました。


 どちらかのチームのサポーターではなく、面白い試合を楽しみにしているフットボールファンからすれば、下馬評では負けていても試合内容ではドキドキさせてくれるのを待っているのです。
 結果は勝ったり負けたりいろいろあるでしょう。でも戦い方や内容にもファンは期待しています。前年度成績が下位のチームが「今年こそは」と必死で戦ったようには見えなかったのが残念でした。


 フットボールやスポーツを初めて会場で見るという方でも「あの3番すごいね」とか「40番はよく捕るね」「83番もすごくない?」というようなことがあります。
 これはその選手がわかりやすく活躍しているからです。あいにく守備選手やラインマンの活躍というのは初心者には見えづらく、場内放送だけが頼りになるのですが。


 その活躍というのも、ボールを持つ機会が多くヤードを稼ぐ、という方法しかありません。ついさっき活躍した選手がまた活躍すれば、そのスポーツを見るのにこんなにわかりやすいことありません。
 フィールドは広くヘルメットのおかげで顔つきや髪型が一切わからないのも初心者を遠ざけます。体の何箇所にも大きく貼り付けた「番号」だけが判断の全てなのです。体型の微妙な違いや手脚の長さは遠目には判別基準となりません。


 そこで「ボールを持つ機会が多い選手」が集中的に注目されると言えるでしょう。特に目立つのは連続でボールを持った時です。

 トップチームのQBは、フィールドに散らばる味方を見つけてパスを投げ込むのが上手です。昔と違い、パスの飛んでくるタイミングが早く、距離も長くなっています。そのため守備選手は以前よりもパスを守る範囲が広くなってしまいました。
 つまり「ボールを持つ機会が多い選手」であるランニングバック(最新用語でランビー:RUN―B)は走りやすくなっているのです。


 真ん中の密集地帯に守備が多ければパス、少なければランというプレーの選択が当たり前の時代なので、昔のように9人の守備に8人のブロッカーというギュウギュウの密集地帯というのはかなり減っています。
 そして短いパスをキャッチして走る機会も増えています。ですからいくらマッチョでデカいアメリカンの守備選手がいようとも「何が何でも突破してやる」という体中の毛穴が広がりまくる程のアドレナリンを出して突っ込めばどうにかなるってもんです。逆に言うと、そうしていないからどうにもならないんです。


 もし攻撃のラインマンが劣勢であれば、パスのプロテクションの最中に猛威を振るっている敵の選手を削りにいけばいいのです。そして情緒か肉体を不安定にさせます。
 「またあいつがわき腹に突っ込んできたら嫌だなー」「今度来たら痛い目に遭わせてやる」などと余計なことを考えてもらえばそれでOK。またはどこかに痛みを感じさせる。たったそれだけで次に彼のやるべき仕事がわずかながらでもおろそかになります。そうなれば味方のラインマンも仕事がやりやすくなり、次に待っているのはランビーの大活躍シーンです。


 ゲームという名前ではありますが、フットボールは「擬似戦争」です。プレー中に休む暇など一切ありません。「仕事がない」ということも絶対にありません。
 ボールを持たない時は「ブロック」「プロテクション」「フェイク」などが主なので自分が担当する敵はいつもと違い一人か二人だけ。この一人か二人に対して、出場プレー中にどこまで仕事をしているかでボールを持った時の活躍度が変わるのです。目立たない時に休憩などせず、地味にいろいろと活動することが非常に重要です。


 勝つか負けるかわからないゲームでキーパーソンとなり「個人の勝負」には絶対に負けないように必死で努力工夫する。これが結果として「チームプレー」になるのです。
 チームメートに熱い言葉をかけまくるのが「チームプレー」ではありません。自分の力を向上させ、その力をゲームで出し切るために全てを賭けるのが「チームプレー」であると僕は思います。


 日本のトップリーグであるXリーグ。次節、そしてセカンドステージ以降はもっと緊迫した接戦を期待したいですね。

【写真】アサヒ飲料でRBとして活躍していたころの多聞さん