NFLヨーロッパ(NFLE)の選手として、徐々に生活のリズムを体で覚えていきましたが、遠征などでの疲れを癒やしてくれるのは、やはり家族の存在。でも、不慣れな土地では何かと不便が多いのも確かです。


 1998年4月(NFLE week3)
 NFLのリーグで日本人として初のラッシング記録を残し、打ち上げで二日酔いの朝を迎えました。次週はここロンドンからほど近いスコットランドはエジンバラ。そのままイギリス国内を移動かと甘い考えを持ったのも束の間。早朝7時のバス、空港からは無念の「デュッセルドルフ行き」の飛行機で海を渡りました。


 ホテルに帰ってゲームのビデオをチェックしました。ビビりまくっているのもありますが、あまりにもタックルに弱い。慌ててドタバタする日本で習ったカッコ悪い走りに戻ってしまっていました。
 リラックスして視野をもっと前に。相手をしっかり見て走る。次のチャンスがもしあれば「視野、スピード、思い切り」を心がけないといけないと思いました。


 そして日本からは妻と長女チコもデュッセルドルフに到着しました。遠征があったので翌月曜と火曜は2連休です。さっそく街へ遊びに行くも、どうやら祝日かなにかであらゆる商業がストップしていました。 
 バスも動いていません。商店も全て休んでいます。飲食店だけは営業していますが、この調子だと電車も動いていないかもという不安に駆られました。


 現地の従業員を確保できないから急遽練習が休みになったのだと理解しました。仕方ないので街をブラブラしていたらチームメートに遭遇。一緒に食事をしてタクシーでホテルに戻りました。
 せっかくの休日やのに何やねんドイツ。翌日も同じでした。タクシーと飲食店しかやっていないので、街へ出て食事をしないとホテルもフロントにしか人がいないので、食事は提供されません。どんなハナシやねんしかし。


 この週の練習で、パントカバーチームに抜擢されました。そしてトリックプレーのパスターゲットに任命。早速練習でそのプレーがコールされ20ヤードほどのパスをキャッチしタッチダウン! 練習とはいえスコーンとタッチダウンするのはこのチームに来て初体験でした。やっぱり良いね〜タッチダウンって。


 そして週末はスコットランドへ遠征です。例によってホテル前から貸切バスで出発し、飛行機のチケットを搭乗口前で渡されどこ行きかもよくわからず乗り込みます。
 1時間ほど飛んで着陸。「一旦降りろ」というスタッフからのアナウンス。何やねん一旦て。まだ目的地に着いてないんかいな? 飛行機から降りて待合室で待つこと数分。よし、また乗るぞと言って同じ席に戻ると席に置いておいたCD数枚がありません。同じ飛行機に乗るけど掃除はするんや。
 意味が全くわからないけど「すいません、CDパクられました」と乗組員に告げてもさすが外国の会社。余裕で出てきませんでした。


 空港に着いて(おそらくスコットランドだろうけど全くわからない)またすぐにバスに乗せられてホテルに。部屋の窓から見えるのは地平線。緑の地平線。ベッドが異様に細い。寝返り打ったら絶対落ちる幅。なので初めて来る国に違いありません。
 エレベーターの表記もおかしい。フロントのあった1階がグランドフロアー。一つ上に行けば1階。二つ上に行けば2階。いやいや、ココ3階やて。なんじゃそら。


 でも食事は相変わらず最高です。白いご飯と魚に味噌汁が出てこない事が100%わかってる食堂に行くウキウキ感。パンと卵とソーセージに肉。いやー最高。


 練習はなくいきなりゲームです。前週のロンドンでは5000人とずいぶん少なかった入場者。そしてここも8500人と少なかった。後にこのイギリスの両チームはなくなってしまいましたがやむを得ないでしょう。


 第3戦。活躍なし。でも試合後はいつもと同じく皆んなで街に繰り出しました。ブラブラ歩いていると崖の上でライトアップされた古いお城が見えたり、どこに来ているか何を見ているかもサッパリわかっていせんでしたが、なんとなくスコットランドな気分で楽しめた気がします。
 パブでビールを注文しましたが、やっぱり安定感のバドワイザーにしてしまうところは保守的だったと今になって後悔しています。


 ところで、わがライン・ファイアーには50歳のドイツ人キッカーが所属していました。アメリカでのキャンプは全欠席。平日午前中のフィールド練習は遅刻で出勤。キッキング全体練習だけの参加でミーティングもそこそこで帰ってしまいます。
 昔はブンデスリーガで17年間プレーし213ゴールをあげたドイツ人のプロサッカー選手で、日本で言うところの「三浦カズ」や「中山ゴン」のような存在だそうです。そのような人がサッカーを引退後、50歳くらいでフットボールをするなんてすごくないですか? エックスリーグのキッキングゲームに中山ゴンが出てきたら盛り上がるでしょうね〜。


 メディアやファンも大勢詰めかけるだろうし。NFLヨーロッパの特別ルールで「エキストラポイントのキックはアメリカ人以外が蹴る」というものがあります。
 ドイツ、オランダ、イギリス、スペインはサッカー大国ですので自国のサッカー選手が登場するとなれば注目度も上がりますよね。さすがNFLはよく考えて動いていますね。

【写真】1998年4月、スコットランドのチームとの試合で遠征した多聞さん