7月の世界選手権において、日本代表がアマチュアレベルの米国代表に歯が立たず、これから日本のアメリカンフットボールはどこに向かい、何を目標にすべきなのか、と考えてしまいました。
 大きく分けて2方向が考えられると思います。一つは打倒米国プロフットボールリーグ(NFL)。もう一つはオリジナルの独自路線です。この二つについて、僕なりに展望してみました。


 現在の在り方や取り組みがこの打倒NFL路線だと思われます。本場米国に留学したりクリニックなどに参加したり、最新の情報を確保。そして自チームへ還元します。ルールも米国の大学に準じ、ルール改正などがあれば素早く日本で実行されています。
 しかし残念ながら現在まで、日本国内の大学生がNFLのドラフトに呼ばれた例はありません。米国内に暮らす日系人の子孫などがまれに登場しているだけです。では、どうすれば国内の大学生日本人選手が、NFLのドラフトに何人も名を連ねることができるのでしょうか。


 ドラフト外のテスト生などで入団し、後に才能が開花しスターになり、そして歴史に名を残すほどの大選手になる、というのはどのプロスポーツでも滅多に起こりえません。
 NFLも商売ですので、アメリカ中で才能のありそうな若者を競技関係なく探し続けています。ですから才能のある人がその網の目に引っかからないことの方が珍しいわけです。
 90年代後半から10年間ほど、日本市場にも目を向けた時期もありました。しかし、当時のトップ選手たちがそのめがねにかなうことはありませんでした。


 ピラミッドの底辺を支える小学生、中学生、高校生の選手やチームが著しく少なく、門戸が狭い上に「危険なイメージ」「お金がかかりそう」などのマイナス要因を現在の日本から払拭することは、なかなか難しいでしょう。
 特別優れた選手が出てきたとしても、それをNFLまで押し上げるノウハウを持つ低年齢層を受け持つ指導者は極めて少なく、速くて強くて利口で器用なので便利に酷使され下手をすればけがをして引退。チーム事情で不向きなポジションを任され大成しない。これはよくある例です。


 低年齢層の指導者は学校教育の範囲で指導するのが普通なので、無理もありません。仲良くスポーツを楽しむ事が最優先だからです。
 そして、大学に入ったとしても、学生日本一を争う「甲子園ボウル」に出られなければ生放送のテレビ中継さえほとんどありませんので有名になれません。


 有名にすらなっていない人がNFLのドラフトなどちゃんちゃらおかしい話です。ドラフトにかかるようアメリカのスカウトらから注目されるには、最低でも甲子園ボウルにおいて「1年生から攻守両面でダントツのMVP級な活躍を見せる」必要があります。
 片面だけじゃダメですね。(アメリカ人から見た場合の)無名選手は攻守蹴のどこでもできる必要がありますからです。


 という奇跡の選手を待ち望み、ようやく1人目のNFL選手が出たとしても、そこからまだまだ先はあります。2人目3人目が出てきていよいよシーズンを通してベンチ入りし試合出場、複数年レギュラーでプレー、そしてオールスター選出、華々しく引退して殿堂入り。今から何年かかることか。その頃には我々は生きていないかもしれません。


 それよりも、もう一つの「独自路線」追求のほうが面白いと思うんですよ。
 NFLとカレッジフットボールの小規模版ではなく、グイーっと自分たちのアイデアを満載した古くはあの山田晋三さんが参戦した「XFL」、現在も運営している「AFL(アリーナフットボール)」に「CFL(カナディアンフットボール)」そして女子の「LFL(レジェンズフットボール)」。
 それぞれの説明はここでは割愛しますが、NFLは超ハイレベルなアスリートたちがイチバンの売りで、歴史や地元の誇りが満載ですので、他の団体が真似することは不可能です。しかし、お客さんを楽しませることに集中した運営で存続できています。


 日本のフットボールは大きく分けて学生と社会人の2大勢力があり、学生はやはり学業の一環ですので、人間力を磨いたりなど「勝利こそ全て」というわけではありません。
 ところが社会人リーグは学生時代の余力で軽く楽しむ場所だったのですが、かつてのバブル景気でチーム数が激増し、大学時代に優秀な成績を収めた選手が片っ端から就職させてもらえるついでに社会人リーグでプレーすることになりました。


 会社の広告塔であったり社員の意思統一など、スポンサー会社によって目的はさまざまでした。しかし、基本は生活や将来のために就職した「オマケ」でプレーしていたわけです。昔は基礎体力を徹底的に鍛えるという文化がそれほどなかったので現役引退も早く、26歳で「ベテラン」などとテレビ放送で言われたものです。


 よって、かつての社会人リーグというのは羽振りの良かった大会社が気まぐれで作って活動する、誰がどう見ても真剣味の足らない遊びのリーグだったわけです。
 当時のテレビ映像をみると筋肉の少ない貧弱な体に大きな防具が滑稽で、ゲーム中にヘラヘラと笑う選手の多いこと多いこと。100キロを超えるような選手はほとんど存在しませんでした。
 それでも見て面白く刺激的で、大半が動員とはいえ観客も会場に多く来て、しっかり楽しんでいました。


 現在残っている社会人チームの多くは、実業団ではなくクラブチームで、スポンサーのいない自主運営チームも多数あります。
 強豪ではわずか2チームだけが実業団。他は選手それぞれが別の職業に就いたクラブチームであり、ほとんどのチームでは各部員が年間約10万円前後の部費を払って活動しています。
 週に2度練習があればいい方で、たいていは週に1度集まり練習やミーティングをします。オフがあるので活動は実質年間40週ほどで40回の練習。これではどうひいき目に見ても趣味の範囲です。休日の釣りやゴルフと大差ありません。この条件で打倒NFLはキツい話ではないでしょうか。


 家庭や仕事の合間にやっている趣味ですが、フットボールという競技の特性上、毎日のように体をしっかりと鍛えておかないと必ずけがをします。「苦しいことはなし。あくまでも楽しく」というのは絶対に不可能で、チームの強い弱いに関係ありません。
 でも、自分で選んだ趣味なので辛いトレーニングには耐えるから楽しくやりたい。そして観衆が多くいる中で試合をしたい。できればその試合で勝利したい、となります。


 しかし「観衆が多くいる中で試合」というのは運営側が必要と感じ、その気になればいろんな方法が生まれてくるでしょう。
 この集客方法に独自路線を入れ込み、1部リーグ、2部リーグ関係なくファンというかサポーターが存在し、毎試合盛り上がる仕組みがあれば「打倒Jリーグの観客数」を目指すこともできるのではないかな、と思います。


 日本中の子供たちの中から、他のスポーツでエリートになりそうな子をいち早く発見し、特別な教育を受けさせNFLLのスターにする、という仕組み作りはほぼ不可能ですが、社会人フットボールを盛り上げ、プレーヤーと観客がしっかりと楽しみ、充実した興行にしてしまうのは「ヤル気と根性」さえあれば何とかなるように思います。


 ボールを少し小さくする、点が入りやすくする、フィールドの大きさを変える、ショーの要素を多くする、ハーフタイムは有名芸能人が登場、観客の数も得点に加算される、ルール説明のうまいスタジアムDJを置くなどの、馬鹿馬鹿しいと思うようなアイデアも含めた「オリジナル」を生み出し定着させることで、そもそも見て面白い競技だったはずのフットボールを元に戻せるのではないでしょうか。


 お客さんは新鮮な刺激があれば寄ってきますが、スグに冷めて別の所に行ってしまうものです。そうしたことは、その道のプロが仕事として刺激を出していけばいいことです。行われている試合自体は、熟練の選手らが本気の肉弾戦を繰り広げているのですから絶対に面白いんです。


 「見せてやっているのだ」というスタンスを改め「どう見せるか」「どう見てもらうか」に注力してオリジナルな独自路線を進めば、世界2位の競技レベルではあるのだから、今の何十倍も楽しくなると思うのです。
 人は楽しい所に集まり、人がたくさんいる所に集まります。人がいないということは楽しくないのです。これだけ魅力的で面白いスポーツであり、人生のほとんどを費やして愛したフットボールですので、いつまでもマイナースポーツと呼ばれるのはとても残念です。
 打倒NFLは数人のトップ選手に個人で頑張ってもらえばいいわけで、社会人リーグがどこに向かっていくのか、今後もしっかり見守っていきたいと思います。

【写真】日本選手権、ライスボウルで史上初の4連覇を果たしたオービック。学生代表・関学大との試合は大勢のファンが観戦した=2014年1月3日、東京ドーム