世界選手権準決勝で、日本代表は全てにおいて対戦したメキシコを凌駕し粉砕しました。非常に痛快で、メキシコが気の毒になりました。
 彼らも以前は決勝戦で好ゲームを演じたチームですので、数年で日本との差がこれほど開くとは予想していなかったのではないでしょうか。


 試合開始早々のキックオフで僕のイチオシであるWR、18番の木下選手がリターン。あのプレーはメキシコの素晴らしいキックによりエンドゾーン奥深くまで蹴り込まれましたが、試合開始早々にタッチダウンを狙う木下選手の心意気を見ることができ、非常に興奮しました。


 あれほど深い落下地点(マイナス7ヤード)の場合、通常だと負けているチームが一矢報いるため、または控え選手がコーチへのアピールするためにリターンする程度で、試合開始早々にエースがやるプレーではありません。
 それほど最初のプレーに気持ちを込めていたのだということでしょう。ボールの飛距離があったので、いつもより0・5秒ほど長くブロックしなくてはならないことを、前方のメンバーは気づいていたかもしれませんが、このプレーでは8度ほどフェイントを入れ相手の突進を崩す木下選手独特の走り方だったのでスピードが乗り切らず、更に味方選手のイメージしていたブロックのタイミングとはうまく合いませんでした。


 そしてブロッカーではなくリターナーとして出場している選手が、メキシコ選手に差し込まれてしまい、木下選手が通りたいルートがなくなってしまいそうになりました。
 とは言うものの、全速力に近い速度で走行していますので、大きなコース変更はできません。狭まる通り道のギリギリを駆け抜けようとしましたが、味方に衝突しては申し訳ないという優しい思いから20センチほどコース変更。


 しかし、その差し込んできたメキシコ選手が木下選手に決死のタックル。エンドゾーンまで行くために、遠くを見る視野になっているので、味方選手の陰になっている(ブロックしているはずの)敵の細かい動きはよく見えません。意識の中にはもちろん置いてはいても、自分と敵の間に味方選手がいると、ブロックしてくれているはずだ、という感覚になります。


 これはチームメートを信頼していればしているだけ起こり得る現象です。しかし敵はブロッカーをモノともせず木下選手にタックル。惜しい。ブロッカー全体があの深さからのタイミングに合わせられていれば独走になるはずでした。


 その後のWR、81番の栗原選手も素晴らしかったですね。彼のフィジカルが最大限に発揮されたプレーで先制点を挙げました。
 短いパスを受け、バランスを崩した上にメキシコ選手二人に囲まれた状態。そこで終わるだろう、近くにいる誰かがタックルしてくれるだろう、などとメキシコ選手は楽観的になっていたのかもしれません。「11人全員でタックルせねば格上(ランキング)の相手を倒せるワケがない」という大前提を忘れ、疲れてもいないのに守備全員が足を止めてしまったようです。


 周りに人がいない上に活躍に飢えている栗原選手。本来だといかに彼が俊足でも、あのタイミングであの位置からだと、まともなセーフティーとセカンダリーであればサイドラインに押し出されます。うまく中に切れ込んだとしても70ヤードの独走タッチダウンは難しかったでしょう。
 しかし、いったんプレーを止めてしまったメキシコ守備では、あれほどの超スピードでエンドゾーンに走られたら追いつきません。


 栗原選手の動いている映像は何度も見ていて、素晴らしい動き、クイックネス、スピード、アメリカ人に引けを取らないと思っていました。やはりメキシコ程度じゃ勝負になりませんでしたね。
 いろんなことを吹っ切って、日本でも常時大活躍する姿に期待します。超イケメンでマッチョなナイスガイ。栗原選手の顔がメディアに出まくることで、日本でもフットボールファンが増えるのではないでしょうか。


 米国と再び対決する決勝戦では、両チームのボールキャリアーがどのように倒れているかを見ていただきたいですね。
 注意するポイントは2点あります。11人対11人で試合しているので、ボールキャリアーが最初に近づいてきた守備選手に倒されていてはいつまでたっても前に進めません。ですから必ず一人目にはタックルされないことが大切です。


 そして次に重要なのは一人目は当然のことながら二人目や三人目のタックルをまともに食らわないことです。相手の手が当たったりしても、ハードなヒットをされないで、前のめりでダウンできているかどうか。ゲインしたヤード数も重要ですが、ボールキャリアーがどのように戦っているかも是非ご覧いただきたいですね。


 勝つためには「良いプレー」だけじゃ足りません。「すごいプレー」を勝負どころで何回できるかです。両チームの誰もが想像すらできなかった「すごいプレー」で、日本が勝利する場面に期待しています。頑張れニッポン!

【写真】準決勝のメキシコ戦でリターンするWR木下=撮影:Yosei Kozano