1998年3月20日
 パンターのネイト君が「タモン、ちょっと俺の練習付き合うてくれや」と言ってきたので、先日全く捕れなかった雪辱を晴らすためにも快諾しました。
 アメリカ人の蹴るパントは、キリキリにスパイラルがかかった状態で上空高くまで飛び、そこからまっすぐ下に向かってスライスしながら落ちてくる、というようなイメージです。


 野球でいう外野フライのような弾道(注1)ではないので最初は戸惑いましたが、なれてくれば理屈がわかりキャッチできるようになってきました。でも試合じゃ絶対イヤ。堀江も木下(注2)もこんなのよくやってたわ。


 この日は1部練習なので、午後は何人かと街のジムへウエートトレーニングに出かけました。アメリカは会員じゃないビジターでも安く使わせてくれるので助かりますわ。
 給料というかキャンプ参加のギャラが100ドル出たのでG―SHOCK(47ドル)と日本人用の店でマンガを買いました。ちなみに、グリーンベイ・パッカーズのキャンプは1日100ドル。ライン・ファイアーは1週間で100ドル。マイナーリーグは厳しいのう。


 1998年3月21日
 ずーっと朝食のブッフェにパンが出てきていなかったので困っていたのですが、久しぶりにパンが登場。シュガーがまとわりついた変な甘いケーキみたいでガックリです。でも今日はミーティングとウォークスルーのみでグランドでの練習はなしなので許す。
 午後からチームのディレクターにクルマを借りてみんなで日本食レストランに。食事してホテルに帰ると「タモン、日本食めっちゃ美味しかったらしいやん。俺らも連れていってくれや、今から」と、別の連中がせがむのでもう1回同じ店に行っておごってもらった。なんで一日に同じ店へ2回行かなあかんねん。


 1998年3月22日
 板井とナチのいるスコティッシュ・クレイモアーズとのスクリメージ。キャンプも終盤なのでメジャー(NFL)からたくさんスカウトが来ています。ドイツからもわざわざメディアやファンも来ています。
 そしてNFLヨーロッパはFOXが放映するので、たくさんのクルーが来ています。


 スクリメージにスカウトやファン、マスコミが山ほど来るなどという体験はもちろんありませんので興奮します。ホテルの昼食も来客数が膨大に増えているので豪華で種類も豊富でした。
 で、スクリメージですが出場は4プレー。パスプロテクション3回とゴール前ショートヤードでランプレーは1ヤードゲインでタッチダウンできず。しかしパスプロのピックアップは間違えなかったのでコーチからの評価は下がらず一安心です。


 午前でスクリメージは終わったので、今日で解雇(注3)が決まっているというラインバッカーのアラン君(注4)と昼間からビール祭り開始。
 バリバリ飲んでたら「夕食後にミーティング!」という情報をキャッチ。酒飲んでミーティングはさすがにヤバイやろと、二人でビビりつつも、もう酔っぱらってるのでそのままミーティング参加しました。


 意外にスグ終わったので、僕より背の低いランニングバック、マケット君の高級BMWで街に繰り出しました。「昨日のオープンカーもマケットのん?」「せやで。あと4WDのトラックも持ってきてんねん。俺家近いねん。キャロライナやから3時間ぐらいかなー」ってここアトランタやで。
 で、なんで合宿に3台持ってくるんか全く意味がわからない僕は、フットボールの技術も、資産も、アホさも完敗でした。


 彼はパンサーズの選手で、お金はどっさりもらっているらしく、飲み代も全部ご馳走してくれました。お金持ち大好き。街からの帰りはたまたま居合わせたFOXの連中の車に乗せてもらったら、酔っ払い運転でパトカーに捕まりました。


 1998年3月23日
 昨日は警察に捕まったおかげで帰りが遅くなり、朝が大変でした。「今回は特別に許しといたるわ」となったので助かりました。今日はフットボールの練習はなく、走り込みが軽く行なわれて終了。このところ練習が楽なのと、生活に慣れてきたので体重が増えてきました。


 我ながら抜群の適応力。何しろ毎日の食事が素晴らしい。日本にいたら嫌いなものがしょっちゅう出てくるのに、ココだとほとんどが好物。最高の環境ですわ。今日もチームのディレクターに車を借りて河口マーサと食事にお出かけ。3日連続酒飲んで、2日連続朝までコース。地獄のキャンプを徹底的にエンジョイしている僕でした。


(注1)日本人の下手くそが蹴るパントは非常に捕りやすい
(注2)日本人でもリターナーで活躍したお二人
(注3)ファイヤーではなくトレードだと後でわかった
(注4)元ダラスカウボーイズの後ろ髪を伸ばした根性派白人LB。後にアリーナフットボールでプレー

【写真】NFLヨーロッパ、ライン・ファイアー時代の多聞さんのジャージー