僕のフットボールのキャリアは、中学生の時に河川敷のプライベートチームで始まりました。少し間があいて大学3年生からフットボール部に所属し、3年時4年時と春秋の公式戦の勝利経験がないまま社会人2部リーグの三武ペガサスへ。その後は名門サンスター・ファイニーズ、アサヒ飲料チャレンジャーズというトップチームを経験しました。
 ライスボウルに2年連続で出場したり、海外プロリーグで過ごした約20年間、あらゆるレベルであらゆる環境の中で過ごしてきました。


 地方リーグや下部リーグで頑張っていらっしゃる多くの方もこのコラムをお読みいただいているそうですので、下部組織と社会人のトップチーム、はたまたNFLとはどこが違うのか? どうすれば自分たちもライスボウルに出られるのか? という非常に難しい問題について今回はフットボールでよく使われる言葉である「規律(英語はDISCIPLINE)」をテーマにザザザザーっと書いてみようと思います。


 まあ、僕の通ってきた道が全てではありませんが、世の中はおおよそこんな感じですよーってのを伝えられればなと思います。


 3部リーグとトップチーム、何が違うって、選手とコーチの能力や人数が違います。すごい選手がすごい作戦を遂行するから強いのです。そんなことは誰でも知っています。
 でも、すごい選手になるには何年も何年もかけなければダメです。すごい作戦をたくさん用意して、場面に応じて最適なサインを出せるようになるには、これまた何年も修行が必要です。ですからどちらもスグには真似できません。


 また強いチームにはお金もたくさん必要です。整備された専用の敷地があり、自分たちの都合だけで練習や会議ができる環境が必要です。サポートするマネジャーやトレーナーも多ければ多いほど有利でしょう。しかし、それらはスグには用意できません。


 他にもいろいろあります。練習着がバラバラで、付けている番号も適当。ヘルメットの色なども前に所属していたチームの色などを個人の自由に任されていたりします。
 しかしプロはどうでしょう。守備と攻撃で衣装の色が分けられ、ヘルメットもチームカラーで統一されています。個人の好みが出せるのはせいぜいグローブとシューズ、インナーシャツ程度です。


 練習時にマスコミの取材を受ける可能性もあるので、好きな色のジャージーや、自分のではないナンバーを付けて練習することなど決して許されません。
 この二つのチームの練習を見物する外部の人から見れば、どちらのチームが規律正しいか明確に判断できます。しかしこれも莫大なお金がかかります。


 ではこちらはどうでしょう。集合時間についてです。試合や練習は何月何日の何時にどこで、と決まっていますが、強いチームには時間ギリギリや遅刻する者は一人もいません。
 しかし弱小の3部リーグだと「親の用事で」「自転車がパンクして」「渋滞で」「デートがあって」などと言って時間通りに来ない者が続出します。


 この問題は早めに出発する努力さえすれば解決する非常に簡単な問題なハズですが、何十人も関係者がいれば意識の低い者も数名は存在するので統制は難しくなります。


 個々人が「時間を守る」ということに対してどれだけ重要性を感じているかにかかってくるからです。それが強いチームだと「時間を守らねばチームの一員としての立場を失うかもしれない」というような危機感が組織内に空気としてあるのです。
 ですからこの「雰囲気」は新人にも継承されていくのです。これが強いチームの秘密ですね。


 時間を守るという当たり前のことを最初から教えなければならないチームと、そんなことは当たり前だと全員が理解しているチーム。強くなるのは当然後者となります。
 思いがバラバラで、規律は守れないが屈強なメンバーをそろえても勝てないのがフットボールでありチームスポーツなのだと思います。


 クラブハウスや部室の掃除、そして整理整頓がされているか、も強さの基準となります。僕も「なんで部室が掃除してあれば試合で勝てんのん? 関係ないやん」とずーっと思っていましたが、残念ながら昔の僕は試合に勝てないカスでしたので考え方が間違っていたのですね。
 部室のきれいさは勝敗に関係あります。完全に。これもチームで行動していく中での「規律を守れる人間かどうか」のジャッジです。


 どうしてきれいにしなければならないのか、という問いに対する答えは「しなければならないから」なのですね。これだけです。
 チームが勝てない、弱いとお嘆きのチームキャプテンは、ぜひ以下のことをすぐに実行してもらいたいですね。お金のかかることもありますが、そこはチームの勝利のために何とか頑張ってもらうしかありません。それも「あなた方のフットボール」です。


①ヘルメットの色は試合と同じカラーに塗り直し、試合ごとにきれいに塗り直す。傷んだディキャールも貼り直す
②フェイスマスクもボロいのは交換する
③練習用ジャージーは自分の番号にしてデザインと色を統一する。人数が多いチームは守備と攻撃を色分けする
④フットボールパンツの色も全員同じにする。違う色ははかない
⑤短パンやスウェットで練習する時も色(できればデザインも)を統一する
⑥部室をピッカピカに掃除してそれを維持する
⑦チームの所有物を整備や修理して大切に扱う
⑧時間を守ることに対して厳しくする


 これだけでチームへの忠誠心を育み、毎日のグラウンド上での景色として「アタリマエ」が脳に刻まれます。心の一体感も向上します。
 あとはフットボールのゲームで活躍できるように「体と心と頭」を鍛えれば良いのです。良いコーチも街中にたくさん潜んでいますから見つける「運」も重要です。


 「DISCIPLINE」をスグに実行できる超初歩編、これを読んだあなたのチームだけがワンランク上のフットボールチームに昇格します。ぜひお試しください。


 僕は遊びでフラッグフットボールのチームを作っていますが、最近ようやくこの「規律」がチーム内に浸透しつつあり、末端の補欠でさえもいろんな暗黙のルールを守れるようになってきました。


 するとどうでしょう。これまで1回戦負けばかりだったチームが、少しは勝ち上がれるようになりました。チームや組織のレベルはその組織内の最もレベルの低い人が基準となるわけで、我がチームはその基準値を上げることができたわけです。


 レベルの低いチームは、少しの作戦よりも「規律」を大切にするだけで組織力は上がるのだという実例です。

【写真】パッカーズのキャンプに参加した多聞さん(20)。練習着は色も品質も試合用とほぼ同じ