1990年代の終わりに、NFL関係の番組でこんな映像を見ました。フラッグフットボール世界チャンピオンのチームが、イベントでNFLオールスターズと試合するというものです。
 NFLオールスターズのQBはあのブレット・ファーブですが、フラッグ特有のルールとタイミングに慣れないうちに世界チャンピオンたちにやられまくります。
 そしてもちろん途中で顔つきが豹変します。スパイクを履きゲームフェイスになってからは、世界チャンピオンなど子供扱いでバンバンとパスを決めまくり「やっぱり俺たちのは単なるお遊びなんだ…」と世界チャンピオンたちをガックリさせちゃう、という映像です。


 「3歳から18歳の難病と闘う子どもたちの夢をかなえる」がテーマの世界的ボランティア団体「MAKE A WISH」に賛同した「日本アメフト復興会議」が始めた、全国大学OB対抗チャリティーフラッグフットボール大会のハドルボウルは、2013年に第1回が開催され今回で3回目でした。


 第1回大会が企画されたと推測される2012年の夏頃。僕の勤務が終える夜中の3時ごろに、ニューヨークのホリコさんから国際電話がかかってきました。
 「多聞も今度のフラッグフットボール大会にチーム作って出場して、君なりにしっかり盛り上げてくれないか」


 「えーそんなん、めっちゃイヤやわぁ〜」と思いましたが、僕のフットボールアイドルのホリコさんに依頼されて断れるワケはありません。「じゃあNFLヨーロッパに行った名選手たちに声を掛けてみます。監督は富士通の藤田さんで、QBは須永、そんな感じですごいのを集めておきます」となり、チーム作りが始まりました。
 比較的親交のある人から全く面識のない人まで声をかけましたが、10人も集まれそうにありません。そこで、エックスリーグなどで活躍した人や、アリーナフットボールに参加していたような有名選手にも招集範囲を広げます。フッットボールがシーズンオフの1月に開催ということで、何とかギリギリ「ドリームチーム」を集めることができました。その名は「スーパードリームス」です。


 しかし大会当日は大雪が降り3月に延期。仕方なくメンバーは一旦解散。フットボールのシーズンが始まり現在も現場に関わる人は絶対に参加できなくなりました。


 スーパードリームスは人数不足に陥ったので人数を増やさなければなりません。参加しない大学の人や、各大学に呼んでもらえない不憫な連中もチームに勧誘し「棄権」しない方向で頑張るしかありません。
 今更どういう事情があろうと棄権などは絶対許さない、というのがホリコさんの意向なので、元ラインマンやお店のスタッフ、チアリーダー、フラッグ特有のルールも知らないQBの「素人軍団」で出場しました。なので1回戦で普通に敗退。大会を盛り上げるという至上命令に逆らってしまった初年度でした。


 フットボールとフラッグフットボールは初心者のうちだとかなり違うスポーツですが、プロのレベルから上の人にとればほとんど同じスポーツになってしまいます。
 マークされていない人を見つけてそこに投げる。飛んできたボールを捕る。これだけなので、フットボールの上級者からすればキャッチボールに近い感覚です。


 実際のプロレベルのフットボールだと、ボールをキャッチする前だろうと後だろうと、誰かに触れてしまうと思った場所に思ったタイミングで行けなくなるので、ほとんど相手に触れずパスコースに出ます。
 捕った後もクリーンヒットされないように、身を守る動きで相手をかわします。ここまで相手との接触はありません。つまりフラッグフットボールと同じです。


 守備も同じことが言えます。守るエリアがフットボールとは比較にならないほど狭いので、メンバー同士の息がぴったり合えばエリアをしっかりと守ることができます。相手レシーバー陣が自分たちの手薄なところを狙ってくることぐらい承知の上です。
 少しの隙を見つけ潜り込んでくる敵を早期に発見し、QBの投げたボールがレシーバーの手に着陸するのを防ぎます。同じです。


 昔フットボールをやっていたオジサン達が、どんなに頑張ってもスーパードリームスにはかないっこない予定でした。
 しかし、母校チームからの招集や、大学側とのトラブル、現所属チームの練習や試合を休めずなどなどが重なり満足のいくチーム作りができず、先に出したような「やっぱりプロってすごいよな」とはなりませんでした。
 それどころか「あいつら大体なんやねん? 大学対抗戦ちゃうんか。女性や未経験者まで出しやがって、ハドルボウルをもっと敬え!」とまでののしられる始末です。


 ホリコさんと僕の最初の思いは参加者や関係者には伝わっておらず、「デタラメなチーム」というイメージになってしまいました。ですから僕は再三に渡ってホリコさんに「トーナメント参加チームとしてではなく、エキシビジョンマッチとして1試合だけにしてください」とお願いしてきましたが受け入れられません。仕方なくこれまで大阪、東京合わせて4度開催された大会に出場してきました。


 しかし今回は、スキルポジションの元プロ経験者を過去最多人数用意しハドルボウルに出陣しました。ですからユニフォームも「プロボウル」に似せたものに新調しました。
 もちろん元プロの選手はスーパードリームスとして一度も練習していません。彼らが疲れた時のために交代で出場するメンバー、いわゆる2軍、3軍は春になってから何度か集まって練習のまね事をしましたが、キャッチボールもままなりません。


 練習ができないメンバーなので、作戦はシンプルにせざるを得ません。攻撃の作戦はRBなしの4人がレシーバーとして散るだけの「4人5ヤードフック」のみ。あとはその時々に守備の塩梅を見て空きそうなところに自由に動く、というルールです。


 チームとしてはやはり「王道」でプレーしたいので、フラッグ特有のルールを逆手に取った「誰が投げるかわからない」みたいな作戦はやりません。短いパスを取って走り回る、というようなこともやりません。 キャッチしたレシーバーは無理に走らずその場で止まる。QBはあくまでも真っ直ぐ後ろにドロップバックして素早く投げる。元プロのポール・ラッシュ杯RB(僕のことです)は太って動けないのでランプレーもなし。


 逆に守備は徹底的に細かいスキームを用意し、フットボールインテリジェンスの非常に高い人でないと遂行できないシロモノです。
 ただ、やはり事前打ち合わせはなく、バトルプランをゲーム2日前にメールで送りつけただけだったので、細かいニュアンスはゲーム中に合わせていくしかないのがネックでした。何かを試そうとするとほころびが出てしまい、敵に前進されてしまうこともしばしばでした。


 ゲームは初日を終えどうにか3勝0敗で勝ち進みました。しかし2日目は参加できないというメンバーが数人。せっかく慣れてきたコンビネーションも今日限りです。
 明日はまた新しく組み直さねばなりません。しかも守備の最後尾で猛威を振るっていたディフェンスキャプテンがいなくなります。作戦を考える係も兼ねていますので大変なことです。エース級レシーバーも2日目は来られません。攻守両面でメンツが足りません。


 なんてことで今年も勝ち進むことはできませんでした。我々の出場に好意的でない方に少しでも事情を知っていただきたいということ。メイクアウィッシュに賛同し、我々も寄付兼グラウンド使用料の参加費も払っています。
 大学によっては元ラインマンや年配者は出場させてもらえないだとか、人間関係の問題で母校では出られない人だとか、母校がそもそも出場していないだとか、いろんな事情の人がいるので、そういう人も僕らのチームにはいらっしゃいます。全員がフィールドに立ち、できればパスを取る。


 チームの目標は、けがをせずに全員が大会を「楽しかった」と思えることと、「君ら強すぎるから出なくていいよ」とホリコさんに言われること。


 最後に、ドリームスに練習グラウンドを貸してくださった慶應義塾大学、IBMビッグブルーの皆さん、ありがとうございました。このような素晴らしい選手たちとチームを組める機会を与えてくださったホリコさん、大会関係者の皆さん、ありがとうございました。練習できないので頑張れませんが、また次回―。

【写真】タッチダウンのシグナルをする多聞さん=写真提供:QB道場:清原貴顕