今週、無事に46歳になりました。たくさんの方々からお祝いのメッセージを頂戴したり、お店に集まってくださったりと、とてもうれしく思っています。どうもありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。


 自分としては「特別な存在」になりたかったわけです。いくら強いチームに所属していても、名前も知られていないホケツでは満足できない、という意味です。
以前にもこのコラムで書いたと思いますが、「特別な存在」になるために競技だけを一生懸命していたとは言えません。では何をしていたか。それについて書いてみたいと思います。


 ▽少しの活躍でも放送席と記録席にゼッケンが見えるように立つ
 公式記録は、有名人でなければよく間違われます。これは現代のNFLでも同じことが言えます。特にスペシャルチーム(キッキング)でのタックル数ですね。そしてテレビカメラが「自分を追うハズの時」に人影に入ってしまわないようにします。
 フットボール界で最も長い時間過去のテレビ放送(甲子園ボウルやその他)を見ていたことを自負する僕には、ゲーム中に活躍した選手をテレビ局がどのように追いかけるのかをある程度予測できました。もちろん激しく外れることもあります。


 ▽取材時は多弁になり注目を浴びる
自分のことを記事にしてもらうためには不可欠です。アマチュアスポーツの取材では選手やコーチからそれほど楽しい話を聞けません。
 もしフットボールがそれほど好きではない記者が取材していて、冗談もない杓子定規な一般論を並べたら、彼は決して記事を大きくしてくれません。「なんだこいつ、バカか」と思われてでも記事にしてもらいたかったのです。


 ▽人格を疑われるほどの常識に欠けた発言をする
 これも同じくアマチュアスポーツではホボ存在しません。相手チームを敬い、良識のある配慮した発言が普通です。しかし、それではたくさんの人に自分を知ってもらえません。


 ▽自分がリーグ最強の人間だと信じ切る
 自分を過大評価し、背伸びするのでは単なる勘違いな愚か者ですが、リーグで最強の心と体を手に入れるためならば、どんな困難や苦痛もひねり潰して前に進む、という決意をするという意味です。
 その強い思いをどんな時にも忘れたりしないように、365日それだけを考えて最善を尽くすのです。雑念は全て排除して名前を売ることにだけ集中する。しかし、インタビューや取材を受けるためにはゲームで勝利した上で、最も活躍する必要があるのです。


 強くて悪かった頃のNFLレイダーズを表現する時に使われた言葉で、「誠実さが疑われる貪欲な人間」「倫理や道徳のない異端児」「邪悪な力を身につけ…」というのがありますが、まさしく僕の目指すところでした。


 僕もレイダーズの面々と同じように、マスコミの前では人格を疑われるほどの常識に欠けた発言をしていたことを覚えている方は、読者にもいらっしゃるでしょうか。
 そのせいで怒ったライバルチームの関係者などは僕の経営するレストランに絶対に足を踏み入れてくださりませんでした。ま、これは仕方ないですね。


 まず、僕が日本フットボールの世界にいてコンプレックスといいますか、とても劣等感を感じさせられる事柄のトップに「学歴」があります。
 フットボール経験があると言ったとたん、『カンガクか? キョウダイか?』なんて聞いてくる学歴至上主義者が世の中には山ほどいます。特に僕より年上は顕著です。これを言われる度に、若い頃勉強を怠ったのが悔やまされます。


 高校からフットボールをプレーして、名門大学に勉強かスポーツ推薦で入学し、周りに励まされたり影響を受けたりして成長し、立派な紳士になっているフットボール関係者をたくさん存じております。というかほとんどの人がそうです。


 しかし僕は、彼らの悪気のない差別にいつもさいなまれていました。というのは、「一人前の選手として全く認めてくれていない」ということでした。理由はもちろんこちら側にあります。結果が出ていないからです。その理由は次の通りです。
①学生時代に中村多聞なんて聞いたことがない
②知らない大学出身だ
③実際に下手くそだしプレーも覚えられない
④わざわざ知る必要のないカスだ
⑤自分たちのレベルまで上がってきたら認知してやらなくもない
という意味だと捉え、無名のヘタクソでもいつかは特別な存在になってやる、特別な選手になって名前を覚えさせてやる、ついでに大学の名前も覚えさせてやる、という感じでメラメラと勝手に燃えていました。


 中には僕の年齢すら関心なく、無条件で年下の扱いを受けることもありました。「あれ取ってきて」という使いっ走りもサンスター・ファイニーズでは度々ありました。
 僕は彼らをテレビで見ていたので年齢がいくつか下であることを知っていますが、有名か無名で敬語を使う、使わないという階級制度があることにはかなりビビりました。


 でもやはり相手はTVスターですから、こちらも萎縮し卑屈な気持ちになりますし、初対面ですから敬語を使うのはやむを得ません。でもこうなってくると燃えてきます。いつかギャフンと言わせてやると。


 ま、これは自チーム以外のメンバーにも言えることで、不愉快というかイヤな思いを何度も何度もさせられていました。
 ですから僕のような者がもし仮に普通に実力を伸ばし成長しても、元々エリート育ちの彼らはそれほど悔しがってくれないのではないかと考え、憎たらしい言葉を必死で考えて相手をののしっていました。


 学歴では一生負け続けるのは決定しているので、せめてフットボールで自分を認知させ、「憎たらしくけしからん奴」「常識のないバカ」でも何でもいいので、一流大学卒のエリートたちに少しでも悔しい気持ちになってもらえればな、というヒガミ根性からの発言でたくさんの人に顔と名前とプレーを覚えていただくことができました。


 いわゆる「悪役/ヒール」ですね。この「ヒール」を演じることで絶対に負けられないというモードに自分を持っていくことが簡単にできました。いついかなる時にも、どんなことにも手を抜かず「奴らの鼻を明かすため」という標的に狙いを定めていました。


 おかげで有名になりました。全盛期(15年以上前)には街でサインを求められたり写真を一緒に撮ってくれ、なんていうことが毎日でした。


 プロ野球選手みたいで大満足でした。自分がどれだけ有名になったかを、タンク池之上と競い合っていました。フットボール専門店に行って、何人に話しかけられたり握手を求められるかとか。
 若いってアホですね。

【写真】「東京スーパーボウル」のテレビ中継で紹介される多聞さん=関西テレビ引用