今年の社会人チャンピオンを決めるアメリカンフットボールの「ジャパンエックスボウル」で、富士通フロンティアーズが初優勝。藤田智(京都大出身)ヘッドコーチ体制10年目で悲願達成。とまあ、こんな感じが普通の見出しになりますかね。


 ま、普通の観戦記なんて期待されてないでしょうから、結果がどうしてこうなったのかを検証してみたいと思います。
 直接取材なし(注1)の「多聞が見たマンマ」ですので、ファンタジーだと思ってお読みください。


 MVPの富士通RBの29番ゴードン選手は、業界内では負け惜しみで「日本人と変わらない」「タックルできる」なんてふれ回っている人が多くいますが、勝手にいつまでもそう思っていてください。ボウルゲームで100ヤード以上走って4TD獲得してる時点でめっちゃくちゃすごいやろ。何がすごいか? 運動選手は結果が全て。まずそれが一つ。


 二つ目に技術的なこと。ゴードン選手は加速と減速の調整に余裕を持って走行している、という点です。いきなり難しいですね。ついてこられますか? コレをイングリッシュだと「グッドなアクセラレーション」なんて言います。
 歩幅が小さいピッチ走法で猛烈に速く走ったり、歩幅が大きいストライド走法で全速力を出さないというトリックを使って、あまり左右に曲がらず「アクセラレーション」のテクニックだけでタックラーを振り切ります。


 一歩一歩でピッチのリズムを変化させて走行しているので、守備側が到達地点の予測も立てづらく(というか勘違いさせられる)、どうしても一旦とりあえず近づいてからの追いかけタックルになってしまいます。それがゴードン選手の撒いたワナで、そこで3歩だけ急加速するのです。
 しっかり胴体と胴体をぶつけるつもりで、いつも通りタックルに向かった守備選手は、なぜか当たらせてもらえず手のひらを彼に当てるのが精いっぱい(注2)になってしまう、というストーリー(注3)です。


 これをちゃんと教えられるコーチは日本にそれほど多くおりませんし、これをタックルする練習は、今のところ富士通とオービックしかでき(注4)ません。
 よって、富士通の守備力は来季も向上する、という結論まで出てしまいます。彼はジャパンエックスボウルなど、2年前に知った大会です。強く強くこの大会でタッチダウンしたいと念じているRBは他に多くいるでしょうが、アメリカの歴史と文化にアッサリとMVPのトロフィーを持っていかれましたね。
日本のRB諸君(注5)は忘年会なんてしてないで、スグに残り360日を鍛錬に使いましょう。


 アメリカ人QB対決が話題になりましたが、これは両者ともイマイチ実力を発揮できませんでした。期待外れ。両方ともけが(注6)で最後までゲームに出場しなかったとはとても残念です。
 彼らが「本物のアメリカンQB」「プロレベル」ならば、なぜ本国のプロフットボール(NFL)でシーズンを送らずに日本でプレーしているのかを、もっとよく考えて対戦するといいかと思います。何故NFLのスカウトは彼らをドラフトで上位指名しなかったのか、ですね。


 強かった時(注7)と、ソコソコ強かった時(注8)のアサヒ飲料チャレンジャーズ出身者が多くいる「チャレンジャーズBOWL」だったことで、僕ら内輪では非常に盛り上がりました。
 富士通の藤田さんには是非勝ってもらいたいし、エックスボウル初出場のIBM山田晋三ヘッドコーチのことも応援している。まあ複雑な心境で見守りました。


 勝負所でアメリカ人が目立つ。富士通のDB。40番アディヤミは「存在」という価値でIBMパス攻撃を防ぎまくった。
 同じく富士通のLBかディフェンスラインかわかりませんが、47番のオースティン。強烈な筋肉量とパワーで猛威を振るうてました。あんなのが増えてきたらオフェンスラインも大変ですね。


 そして何より、富士通の日本人選手が非常に素晴らしかった。日本史上最強のチームであることを自覚し、あとはチャンピオンの称号を得るだけ、となったわけですが、「勝ちたい」「トロフィーを持って帰るんだ」という気持ちが試合中の表情に出続けていました。
 こんなに集中力を保った(注9)富士通を見たことはありませんでした。テレビに映る選手たちの顔つきはまさに「戦士」。尊敬に価するチームに仕上げてきた藤田さんの手腕に乾杯です。


 その点IBMの選手は集中力が途切れ途切れ。その程度の精神力ではチャンピオンリングはまだまだお預けですね。選手時代の山田晋三氏は、ハーフタイムでさえ集中力を切らさない精神力を持っていました。
 ものすごい点差で勝っている試合の残り数分で、笑顔を見た記憶が若干ある程度です。ハートが足りていないことは、山田氏自身が一番感じているのではないでしょうか。


 来季もアメリカ人選手がどんどん増えるという情報がありますが、日本の既存選手はそんなのを平気で受け入れていては駄目です。自分たちがチームから否定されているわけですよ。
 また、アメリカ人と日本人では考え方が違います。NFLが雇わなかった理由には実力不足があったとしても、性格、家族構成、全てがチェック対象です。暴言や軽めの反則行為で退場になることは日本でも過去に(注10)よくありましたが、トップリーグのファイナルシリーズで暴力事件、そして退場処分が普通に起きている(注11)ことは「アメリカ人問題」として大きく検証すべきだと思います。


 NFLヨーロッパからエックスリーグに戻ったスターたちが、アメリカ人選手の悪いところを真似て、ガラ悪く振舞うシーンを見かけた方も多くいらっしゃることでしょう。
 チャレンジャーズでもヨーロッパ帰りのスターの暴言により1プレーで65ヤード罰退したこともありました。


 彼らは日本語で諭せば理解し、二度と同じミスは犯しません。しかし、熱くなったヤングでマッチョなアメリカ人を規制する法も術もありません。明日出勤せねばならない社会人フットボールの選手は、乱闘でけがを負うわけにはいきません。
 またライスボウルでは相手が学生さんですから、親御さんもアメリカ人選手の乱闘は大変心配されているかと思います。


 現状は2名までのアメリカ人選手をプレーに入れてもいい、というルールがあるそうですが、これは現在のようなことになるのを見越して制定されたルールなのか、とりあえず作っただけなのかも疑問です。


 どこからどこまでが外国人扱いなのかも、若干妙なところがあります。日本の国籍を持っていなくとも、日本の大学でプレーしていたら「国産」扱い。でも世界選手権は日本からは出られない。
 そしてアメリカのNCAAでプレーしていた日本国籍の人も「国産」扱い。日本で育ったがNCAAでプレーしていたアメリカ人は「アメリカ産」。今後、早い段階でナイスなルールを作ってしまわないと、ややこしくなりそうですな。


 とりあえず藤田さん、おめでとうございました。やっとですね。いつ乾杯します? え、今日?! はい、わかりました〜!!


(注1)いつも取材なんてしていませんけどね
(注2)問題は彼が米国ではそれほどトップ選手じゃないって事実です。僕が前年度プロボウルに出場したRBと一緒に練習してどれほど絶望したか、少しはご理解頂けるかと思います。アメリカは遠いです
(注3)自身でコントロールしているか否かは別の問題です。僕の場合は自然には到底できませんでした
(注4)富士通がスクリメージで本気でタックルする練習をやっているかどうかはわかりません。オービックでは原選手が流派は違いますが、こんな技術を持っています
(注5)ポッと出の2年目新人やで。日本人ならどれだけ腹立つ? ヤキモチやく? よう考えや。しかもど偉いカシコな大学らしいで。全部負けてるやん
(注6)富士通のキャメロンは前半終了間際に130キロのアメリカ人DEにサックされ肩を痛めたようです。テレビを何度も見直しましたが、その次のプレーでスローイングが変異しています。前半残り1秒でヘイルメリーと洒落込みたかったところですが、痛がるキャメロンを心配した藤田さんが思わずタイムアウト。なおかつニーダウン。なんのタイムアウトや。平静を装うキャメロンですが結局後半は出場せず。放送席はだませてもテレビ視聴者(知り合いのカリスマ整形外科医はこれを見て「けんさかんせつ」だと威張って言うてました)はだませませんでした。が、これも結局アメリカ人同士の問題で、ハナからいなけりゃ起こらなかった事故
(注7)藤田智ヘッド体制の4年間(1998〜2001)
(注8)2002年からほんの少しはまだファイナルステージで勝ったり負けたり
(注9)その点IBMはたまのファインプレーで喜び過ぎ。いいプレーをした時ほど早く集まって気合を入れ直し、その気迫を全員に伝達せねばならないわけです
(注10)ラフプレーで退場と言えば87年の万博記念ちゃいまっか
(注11)セカンドステージ富士通VSパナソニックで、試合中に両軍入り乱れての乱闘騒ぎが発生。
パナソニックの選手が退場処分。さらにビデオジャッジにより富士通のアメリカ人が次のゲームの前半の資格没収。事件のきっかけも富士通のアメリカ人とパナの選手がもめ事を起こし、それを助太刀しに飛び出した別のアメリカ人が暴れ始めたのがきっかけで大乱闘。これが生放送だったらどんなに面白かったことでしょうか

【写真】選手に胴上げされる富士通・藤田HC=撮影:佐藤誠、15日、東京ドーム