結構頑張って1部リーグのサンスターで1軍として起用(注1)されるレベルまで上がってきました。でも、実際はまだまだヘタクソのマンマですので専門誌(注2)や業界全体からは完全に相手にされていない状態が続いています。
 悔しいですが実力の世界では当たり前です。が、ちょっと頭打ちになってきた感も否め(注3)ません。


 自分でもこれ以上上達しそうな感じがしなくなってきました。当時のトップランニングバック(RB)と言えば、「松下電工・粳田」「マイカル山口&ハンナ」「シルバースター中村」「鹿島・堀口」などなど、とんでもない怪物ばかりです。当時の僕なんぞ、彼らと比較する時点で失笑されるレベルであることは言うまでもありません。


 確かにワールドリーグトライアウト(注4)では高評価を得ましたが、結局試合でどれだけ活躍するかどうかが重要なのはわかっています。
 しかし、週に3度のチーム練習では作戦の確認が主なので選手としての上達(注5)はあまり見込めません。ならばどうするか? 必死で考えましたが諦めるしかありませんでした。


 今の僕なら別の答えが用意できますが、当時の未熟で無知な僕には「とりあえず明日も鍛える」しか道はありませんでした。
 次回のワールドリーグトライアウトに受かって、外国へ行けば何かが変わるかもしれない、という希望を抱きながら毎日を過ごしました。


 この頃は今のように飲食店をやっておらず、普通に会社勤め(注6)をしていましたので、規則正しい生活を送っていました。
 肉体改造というか、体を鍛えてぜい肉を絞り落とすには規則正しい生活と吟味した食事内容、そして運動。こんなの誰でもわかる普通のことですが、味のない(または薄い)毎日同じものを食べて栄養補給し、たくさん食べていては減量(注7)できないので、常に満腹感は得られず、ツラい日々でした。


 秋のシーズンが開幕し、サンスターでは神戸大の井場、追手門の山下、そして僕の3人でテールバック(TB)をローテーションすることになりました。
 2年連続で東西エックスリーグの開幕戦がたまたまサンスターのゲームとなり、始球式で少年少女(注8)がキックオフのボールを蹴る儀式がありました。リターナーの僕は彼らの蹴ったボールをいつもより少し前でキャッチし、すぐに横へ行き一緒に写真を撮るというものです。


 この時の少年の親御様から感謝と応援のお手紙を何通も頂き、ずいぶん励みになったことがありました。だんだんと注目され、応援してくださる人が増えてきたという実感も湧いてきました。あとは自分のひと頑張りと結果だけが不足しています。


 初戦は「ドリームディフェンス」というオールスター級の面子を揃えたアサヒ飲料ワイルドジョーです。京大阿部、関学山田、立命館大島といった学生オールスターが相手です。
 当時の僕では当然太刀打ちできず、9回持ってわずか9ヤードのゲインしかさせてもらえませんでした。


 まあチームのラン記録が30回で39ヤードに抑え込まれていますので、このドリームディフェンスは異常なまでに強かったのだとしておきます。しかし、こんな結果では業界で一目置かれる存在になれません。またしても「普通の選手」という殻を破ることができませんでした。


 第2節、スポンサーがいなくなったブラックイーグルスとの対戦。サンスターのRBは合計200ヤード以上を走ったのですが、試合終了間際にサンスターチアリーダーの悲鳴が聞こえる中、感動的なフィールドゴールで逆転され敗戦。試合後のメディアからのインタビューにコーチが答えた内容が選手を非難するものだったことから、チーム内に暗雲が立ちこめます。


 第3節は強豪マイカルベアーズ。サンスターでは毎年マイカル戦前と松下電工戦前には金、土、日曜と強化合宿で試合の準備をしていますが、今回ももちろん合宿です。
 「マイカル合宿」です。そして前節負けていますので全員必死です。しかし、もう10月ですのでここで奮起していても「こんなんで関東のチームに勝てるんかいな?」という感じになってきます。


 そこで飛び道具として登場したのが「関西学院出身QB埜下」です。何人かいる僕のアイドルである埜下さんは、なぜか守備選手として活躍されていて寂しかったのですが、スーパースターのアイドルとハンドオフの練習ができることを喜んでいました。
 そんなことなので、埜下さんとはコンビネーションがイマイチ合わず、残念ながら僕はユニットに入れてもらえませんでした。マイカルとの試合は泥の西宮球技場で4回10ヤードしか働けず、試合後のユニフォーム(注9)は僕だけキレイなマンマでした。


 第4節は天王山(注10)の松下電工インパルス戦。自身はチームリーダーの14回63ヤード1TDという成績でしたが、粳田選手に走られまくり普通に敗戦。これで2勝2敗です。


 最終節はイワタニ・サイドワインダーズです。サンスターに勝利したブラックイーグルスがアサヒ飲料に敗戦したおかげで、我々が今日勝てばファイナル6への道は広がることになりました。
 自分の試合前でしたが、スタンドでアサヒ飲料を必死で応援しました。だいぶアホですね。試合でもファンブルロスト(注11)し、チームがピンチに陥ります。
 前半0―13の敗戦ムードで折り返します。しかし、まあ何とか勝利し、ファイナル6(注12)への切符を手にします。僕自身、初のファイナル6出場です。


 ファイナル6はオンワードオークスです。日本大学時代にライスボウル3連覇したあのQB須永がフィールドの向こうに立っているのです。ジュニアパールボールでオンワードの前座で試合をしたことはありましたが、これだけの名門チームと戦える日が来るとは自分もよく頑張ってきたなととても感動しました。


 大きな大きな長居陸上競技場で、自身の経験でも一番多くの1万人というお客様が詰めかけましたが、わずか4回14ヤードという体たらくでした。
 ココ一番では使ってもらえないザコなのだと再認識させられました。ゲームは終始オンワードに支配され普通に敗戦。ファイナル6初体験はあっと言う間に終わってしまいました。


 今週末はファイナル4の2ゲームが一つの会場で見られるという奇跡のラッキーサンデーですね。温かい格好で横浜スタジアムを満席にしようではありませんか! いやー楽しみです!


(注1)あくまでも3人中3人目で、信頼性なし&頼りにされていない
(注2)表紙になるのは試合に勝つより難関
(注3)今までは毎日のように知識が増え、技術も上がり、経験値も上がっていましたが、ここへ来てクラブチームの甘い空気感と、的確にコーチングされないジレンマ
(注4)ワールドリーグ・オブ・アメリカンフットボール(WLFL) 後のNFLヨーロッパリーグ。NFLのマイナーリーグとして発足。若手の育成やフットボールの世界戦略を目指したが2007年に解散
(注5)RBに限らず、社会人チームで「ヘタクソが上手くなる」というメカニズムは発達していない。才能や能力のある者をコーチが補助する。というのが正しい
(注6)道路建設会社の営業マン兼設計補佐
(注7)シーズンオフには106キロまで太るので、約10キロほど減量する
(注8)あれから18年経っていますので彼らも成人されておられるのでしょうなー
(注9)この年から背中には個人名が刻印され、ひとりきれいなユニフォームだとテレビの視聴者でも「このTAMONいう奴ホケツやな」とバレちゃう仕組みです
(注10)電工にとっては単なる試合で、我々だけにとっての天王山
(注11)恥ずかしさの照れ隠しで微笑んでいたことを後日とても怒られました
(注12)ウエスト、イースト、セントラルから2位までの6チームでトーナメントし、ウエスト1位が必ずシード権を得ること以外は不公平もなくわかりやすく優れたシンプルな制度

【写真】サンスターのレギュラーに定着していた頃の多聞さん