今から14年前の2000年夏、アサヒ飲料チャンレンジャーズはオレゴン州ポートランドへ遠征し、現地のアマチュア(セミプロ)チームと親善試合をしたことがあります。
 200万人が訪れる、ローズフェスティバルというオレゴン州最大のお祭りの中の催しの一つという位置づけで『PIGSKIN INTERNATIONAL(ピッグスキンインターナショナル)』(注1)というゲームでした。社会人チームでは日本初(2000年6月時点)のアメリカ遠征試合だったそうです。


 ヘッドコーチだった藤田智氏(現富士通)に当時のことを聞いてみました。
 わざわざアメリカまで行った目的は、もう1枚上を目指すために、過去2年(注2)で打ち破れなかった壁を越えるために、ということでした。
 チャレンジャーズの選手も同じ気持ちで「今年こそは!」という気概に満ちあふれていました。アメリカ人とのゲームを糧に、自分達は成長し、関東のチームに勝って優勝するんだ! という意味です。


 しかし、遠征に行くのはいいが、仕事を5日連続休むなんてことができるのか? そして一部負担の渡航費が捻出できるか? が僕にとっての最大のポイントでした。
 既に大阪でレストランを営んでいたのですが、移転オープンして約1年の頃。店長不在でも店が回るのか不安でしたが、当時のスタッフのおかげでコレはなんとかなったようです。


 もう一つの問題である渡航費。これはある方法を思いつきました。大会の「PIGSKIN INTERNATIONAL記念Tシャツ」を作ってチーム内外に販売すれば数万円の利益が出るのではないかと。どうせならとびきりカッコいいのを作ろうと、過去数年分のスーパーボウルグッズを参考にデザイナーとミーティングを重ね、かなりシブいのが出来上がりました。
 相手チームのヘルメットの色が、報告と全く違っていたのはご愛嬌。みんながたくさん買ってくれたので渡航費が生まれました。


 確か現地に4泊ほどの旅だったと記憶しています。日本から何組かに分かれて現地集合。自由にアメリカを闊歩するため、僕だけは空港でレンタカーをゲット。みんなはバスで移動。練習とミーティングを済ませればあとは自由時間なので街に出てレストラン見学に行くのです。
 飲食店を本気で始めたこの頃、この街で見て体験して学んだことはものすごく多くて、アメリカ人の企画力やホスピタリティの奥深さを痛感したのを覚えています。この街で獲得した多くのネタを、現在でもお店で利用しています。メニュー編成や細かなことまでいろいろと。


 で、ハナシはフットボールに戻って、試合までに確か2、3日の練習がありました。朝からミーティングに練習、そして夜もミーティング。遅くまでみっちりと「合宿」しました。そしてそれが終われば朝の集合まで自由時間です。
 体力のない者は睡眠を。エネルギーとバイタリティーにあふれる僕は街へ繰り出します。毎日5軒ほどの飲食店を回り、リポートを作成し、厨房やカウンター内に侵入して写真撮影などしながら美味しい西海岸の地ビールやそれぞれのお店オリジナルのカクテルなどを朝まで堪能。集合時間の60分前にホテルへ帰り少し睡眠。そしてフットボール。
 これを何日か繰り返し、試合前日はさすがに誰も外出には付き合ってくれないのでホテルの中庭で日の出までビールを飲みまくりました。


 試合当日になり、僕とRB4進藤君(東海大)は激しい二日酔いで目覚めます。大慌てでみんなより1時間以上早く会場入り。水を大量に持って、まだ設営もされていない無人のフィールドでジョギングです。
 汗だくになりながら何とか正気に戻ってきたのがキックオフ1時間前。あの時チャレンジャーズ控え室のホワイトボードに大きく「KILL! CHALLENGERS」って書いといたのは僕です。14年の時を経て初めて白状します。ごめんなさい。


 チャレンジャーズは最初のドライブで2回とも1STプレーを被インターセプトで終わるなどで、先取点は相手チームのコロンビア・クーガーズ。すぐに逆転し、試合はその後一進一退の攻防が続きました。
 両チーム合わせて10回の得点がある好ゲーム。気が強く背の高いWRに翻弄された以外はチャレンジャーズ守備陣が踏ん張り、攻撃がチャンスを待って確実に決めるという得意の戦い方。
 30―30の同点で迎えたタイブレーク(注3)で、チャレンジャーズK11橋本(神戸大)が42ヤードのFGを入れて勝利。そして何とMVPには20回のキャリーで約100ヤード&1タッチダウンを獲得した僕が選ばれました。


 灼熱の乾燥地帯において、人生で初めての15分クオーターの正式計時。シューズメーカーから与えられたシューズが人工芝の熱に耐えられず新品が試合中に破損。そのシューズしか履いてはならないというスポンサー配慮のチーム規定だったので、予備のシューズもなく、やむを得ずサイズが極端に小さい他人のものを借りての出場でした。
 試合後は熱中症でめまいと吐き気に襲われ大変でしたが、記念撮影はもちろん元気にこなしました。そしてホテルでは相手チームと合同の打ち上げ会も開催され、あのチャック・ミルズ氏が表彰式のプレゼンターを務めてくださいました。


 この試合で体の大きなアメリカ人に勝利したことはチームにとって大きな自信となり、この年のライスボウル制覇に大きく役立ったと藤田智氏から聞きました。このツアーの発案から実行まで、関学OBのテッド鈴木氏が大きく貢献してくださいました。良い思い出にもなり、僕にとってはビジネス面でも大きな影響を受けた1週間になりました。とても感謝しています。
 チームの仲間とも素晴しい思い出が作れました。そしてこのツアーのVシネマは僕のお店で見ることができます。きちんとプロが撮影し作製したものです。素晴しい出来栄えですので、ぜひご覧ください。


(注1)フットボールの材質は豚の皮
(注2)藤田氏がヘッドコーチ3年目。過去2シーズンはいずれも関東のチームにプレーオフで敗れ決勝戦に進めなかった
(注3)親善試合なのだからドローで良かったんじゃないかと思います

【写真】2000年に米国に遠征したアサヒ飲料の選手たち