僕も初心者の頃は、春の大会でも秋の大会でもゲームができるチャンスであり、チカラを試す機会だったので、一心不乱に取り組んでいました。
 春の大会で負けて悔し泣きしたこともあります。それほど真剣に春の大会にも向き合っていました。選手にとっては春も秋も関係なく必死で戦います。


 が、試合経験を積むこと以外、何も意味の無い大会であるのだと声を大にして言うことはタブーとされているのか、ノンタイトルマッチが堂々とボウルゲームとして開催されています。
 秋の終盤、負けたら終わりのゲームにはお客さんがチラホラしか来ないのに、パールボウルでは1万6000人以上のお客様が月曜日の東京ドームに来場したそうです。


 秋の大会であれば、レギュラーシーズンを勝ち抜けばポストシーズンに突入し、ボウルゲームへと招待されます。それに優勝すれば「ニッポンイチ」の称号を手にできますが、残念ながら春は何にも残りません。ホームページの片隅に白星がチクッと入るだけです。


 フットボールに詳しくない方にこう質問されました。
Aさん『これに勝てばライスボウルですか?』
多 聞「いえ、コレはまた別の大会なんです」
Aさん『日本一なんですよね?』
多 聞「いえ日本一ではありません。関東以外のチームや学生も出ていない大会で、コレはコレで終わりです。冬のボウルゲームとは無関係なんです」
Aさん『賞金があるの? 何が目標の大会なの? ライスボウルが頂点で、皆さんが目標にしているんじゃないんですか?』
多 聞「ボクもわかりません。選手の時は特に考えず頑張るしかなかったので…」


 スポンサーに公式戦で無様な負け方をしている所を見せるわけにもいかず、やむなくある程度の本気度で大会に出場します。出たい出たくないに関わらずよほどの理由がなければ出場せねばなりません。


 負けても構わないんだけど負けたくない。勝っても仕方ないが負けたくはない。勝負事なのでやっぱり勝ちたい。


 チーム事情でいろいろと相違点はあると思いますが、何の意味もない公式戦とはいえ、公式戦(注1)には違いないので、チームとしてはスポンサーと1万6000人の前で簡単に負けるわけにはいきませんので、チーム力が拮抗している同士の対戦だといかに春とはいえ、チームにもたらす効果はそれなりにあるかと思います。


 例えば無観客の練習試合だと、新人やポジション変更者、負傷からの復帰者の力試し、新しい作戦の完成度や不足点を見いだすなどなど、いろいろなことを、点数や勝敗を気にせずフルタックルの(気持ちの入り具合はトテツもなく低い)ゲーム形式の練習として成り立ちます。


 ところが「公式戦」と謳った上で大きな会場で一般客を有料入場させるとなれば、それは「立派な興行」なワケで、出場した(してしまった)チームとしても精いっぱいプレーするしかありません。
 しかし春は気持ちの入れ具合が非常に難しい。「本気の本気でガッチガチに60分間を戦うぞ!」と言われても、作戦数も少なければ練習時間もマダマダ足りていません。正直ちょっとシラけてしまいます。
 強い人や強いチームは特に損です。負けてしまうと「公式戦連続白星がストップ!」だとか騒がれます。勝っても「さすが強いね!」と言われるだけ。


 春の大会はチームとしても「勝利が全て。何が何でも勝てばそれでオーケー」という戦い方はしません。試したい人や作戦、考え方、秋を見据えたゲームとして位置づけます。用意する作戦の種類や数も限定されます。現在の持てる力プラスアルファで戦うのが春のゲームでしょう。


パス成功率【富士通53%:OBIC56%】
キック成功率【両チーム併せて50%】
というパールボウルのデータから見ても、勝つためだけに戦っていないことがわかりますし、今年のチームが未完成であることもわかります。試合後インタビューでも「この経験を秋に生かす」というコメントがほとんどを占めています。


 しかし、僕は大人の事情で春も大会を開催せねばならないなら、春の大会もライスボウル進出に関係性を持たせてほしいと常々思っています。


 アメリカのプロNFLはオープン戦とレギュラーシーズン、ポストシーズンを合わせると毎週ほとんど休みなしで約20試合以上行います。20週連続です。しかも必ず勝つとわかっている試合など1試合もありません。
 昨季強かったチームは強い相手とばかり対戦させられ、連覇が難しくなるようにスケジュールを組まれたりもします。それはそれはとてつもなくタフです。でもこれをマネるのは今のニッポンの社会人リーグでは不可能です。


 20週連続強豪チームとの試合を行なうとなると体力の消耗は計り知れません。1軍選手がけがをすればチーム力はガタ落ちでしょうし、シーズン中の復帰が不可能なほどの大けがをしてしまうと現在のルールでは追加メンバーを補充できないので、チームの人数が単純に減ります。(ドラフトやトレードなどのシステムもありませんのでチーム力を公平に保つことが全くできません)


 プロは練習とミーティング、そして十分な治療やトレーニングを週に5日。お休みが1日。そして試合が1日。しかしニッポンの社会人ではそんなことはできません。


 週に2、3回(主に土日)練習とミーティング、試合があれば練習が1日減ります。土曜日にタフな試合があれば、翌日の日曜日には疲れていてそれほど良い練習はできません。もちろん平日はほとんどがそれぞれ仕事や家庭があるので、毎日全員では集まれません。
 そうなると翌週の試合には個人練習のみで臨まねばなりません。これでは全くダメなので2週に1度の頻度で日程が組まれているのが現状です。もちろん例外はあります。


 アメリカのようにシーズン制にして、秋冬以外は別のスポーツを、というのが理想ですが、ニッポンの学校システムなど、根本から変えなくてはならないので、僕が総理大臣になったとしても改革は難しいでしょう。
 秋のシーズン以外はあらゆる運動やトレーニング、リハビリ、治療や手術に取り組み、1年毎にスポーツ選手として向上(注2)していき、何なら秋以外はフットボールではないスポーツでオリンピックを目指す、なんていう考え方はニッポンでは浸透していません。


 話を戻すと、シーズンをもっと長丁場にして、春にもリーグ戦を行い、その結果はそのまま秋に継続する大会にすれば良いなと思いました。


【オモシロ1年間リーグの案】
・3月にチーム始動
・4月にオープン戦3試合ほど
・5月と6月で公式戦5試合
・7月はオフシーズン
・8、9、10月でリーグ戦後半6試合
・11、12月でプレーオフと決勝
・1月3日にライスボウル
こんなんあきませんか? あきませんわな。


 ま、パールボウルであれだけたくさんのお客様を喜ばせて楽しませることができるのですから、もっと周りが「オモシロ」を意識して少し手を加えるだけで、ニッポンの社会人リーグも面白くなると思います。
 スポンサー会社の動員で、無料券の人がほとんどだとはいえ、ノンタイトルの練習試合に1万6000人来場するんですよ。


 これからドンドンNFL当確線上レベルの外国人選手やコーチが増えてくるのは間違いないですし、アメリカ、カナダに次ぐ世界第3位(そして極東からユーラシア大陸&南半球では最高レベル!)のフットボールリーグを開催しているのですから、ヤリようによっちゃもっともっと盛り上がると思うのです。
 と、今年のパールボウルが歴史的な名勝負だったという記事を読んでこんなことを思いました。


(注1)何をもって「公式戦」なのか、観戦するだけのわれわれファンにはよくわかりません
(注2)フットボールの練習や試合がないと、毎日筋肉痛になるまで徹底的に体を鍛えることができます。練習日に走ることを考えると、下半身を鍛える時間が取りにくくなります。ボクが現役時代の1週間を例えて説明しますと…。


土曜:練習で走りまくる
日曜:練習で走りまくる
月曜:疲れ果てているのでカーディオだけ(体中筋肉痛)
火曜:カーディオ/スプリント/下半身のトレーニング
水曜:上半身のトレーニング/カーディオ(筋肉痛で走れない)
木曜:上半身のトレーニング/カーディオ(まだ筋肉痛で走れない)
金曜:スプリント/カーディオ(筋肉痛が和らいで来ている)
と、なるので下半身を鍛えるのは火曜日か水曜日しかありません。


 しかし! もし土日のフットボールがなければ、週に2度の下半身強化に勤しめます。強度を抑えて週に3度も可能です。体にはいつも新しい刺激を与えておかねばならないので、ランダム期でスケジュールを変化させる必要もあります。
 ですからやはり土日の練習は体力向上には邪魔になります。シーズン中だとこの程度しか鍛えることができないので、1年中がシーズンのニッポンでは筋肉を育てにくいのは否めません。

【写真】真剣な表情で春シーズンに臨む多聞さん=1994年