「ハンドオフ編その2」
 ▽重心
 NFLEで重心についてコーチから学んだ時、そしてマスターした時の衝撃はすさまじいものでした。是非皆さんにも感じてもらいたいと思います。


 高速走行する物体にとって、重心の位置は非常に重要です。背が高いトラックのようなクルマより、背の低いクルマの方が加速・減速・進路変更(一般的な運動性能)が良いことぐらい読者の皆さんはご存知のはず。
 加速減速進路変更に有利なのは「低重心」であることです。しかし低重心でもスピードが出ていなければRBとしての価値がありません。


 昔は「肩幅くらいに足を開いて小刻みに走れ。なぜならばいつでも進路を変更できるし力強いのだ。上体はかがんで敵に胸の番号が見えないくらい低い姿勢で走り抜けろ」と習いました。しかしこんな状態で走るNFL選手は何十年も前からいないことは誰でも知っています。


 ボールを受け取ってLOSを通過している時はしっかりスピードに乗った上で重心を低く置くことが重要ですが、低過ぎては直進しかできません。「ちょうどいい重心の加減」がどのような姿勢になるのか? これはビデオを撮って自身の感覚と照らし合わせる作業を何千回とやるしかありません。
 そしてどれが正解なのかを文章で表現する能力は僕にはありませんが、走りは「速く低く、そして自在に動ける事」が肝心です。


 訓練の方法として、まずは真っ直ぐに走るだけです。重心が低い走りができているかどうかを、自分の感覚でチェックし、三脚で立てた(又は助手が持つ)ビデオにトレーニングシーンを録画し、自らの採点をビデオの前を通る毎に感想を述べる。
 例えば「スピードには乗ったが重心が高くなってしまったような気がする」「重心は低くいけたがスピードが出なかった」「歩数が合わなかったがスピードは出た」などなどと、1プレー1プレーに自身のコメントを残すようなことをすれば、後でチェックした時に、実際の動きと照らし合わせることができます。


 次にこれをランプレーのハンドオフと同じ動きで練習します。先に説明した足運びやタイミング、アングル、速度を理想の100%で完了させて、今度は重心の位置を厳しくチェックします。
 これだけやることや注意することが多いと、慣れるまでは誰でも何か一つか二つ失念するものです。なので、当初から掲げてある「理想の走り」をかなえるべく、アタマとカラダがピッタリと一致するまで練習し続ける必要があります。


 自分の重心が今ドコにあるのか? と考えながら練習してみると、うまくいくことはなかなかありません。コレが「理想の走り」をする難しさです。
 コーチに言われたコースを走るだけなら簡単ですが、足運び、タイミング、アングル、速度、そして重心。ここまではほとんどの場合において敵に邪魔されないので全くもってダンスと同じです。いかに規定の動きを「確実に強く」遂行できるかがキーです。


 フットボールは、ダンスと違って直接ぶつかって来る敵がいて、体重制でもなく非常に不公平なスポーツである上にRBは両手が使えないようにボールを持たされています。
 最大でも片手しか使えない状況ですので、他のポジションよりもそれ以外の部分、つまり胴体や脚の使い方をうまくヤルのが得策です。


 この重心のポイントを自身で見つけることができれば、中級者、上級者になった時に敵と対峙するシーンでとても役に立ちます。また、見つけることができなければ、速くて強くても上級者にタックルされればスグにすっ転ぶ「二流のRB」で終わります。
 ボールキャリー中やパスのプロテクションで、体当たりする時に重心を上下左右に動かすというか意識するだけで良い結果が生まれます。この技術は少し先のハナシになります。


 コレに関しても何ミリ単位でしか分かり得ない感覚の問題ですので、現場で僕に走りを見せてもらうしか善し悪しの判断ができません。どうしてもという方は、呼び出して下さい。ご説明に伺います。

【写真】アサヒ飲料時代の多聞さん=撮影:佐藤誠