これもNFLE時代に偉大なコーチから教わった事柄を自分なりに噛み砕いて出した結論です。


 ランニングバック(RB)は、自分が完全に倒れるかタッチダウンするまでプレーは終わりません(注1)。それなのに練習だからと自分のテキトーな判断だけでさっさとプレーをやめちゃうのはとてももったいないと思います。


 全てのプレーをタッチダウンまで。練習なら、たとえタックルされてこけてしまっても知らん顔して立ち上がり(注2)エンドゾーンに向かって走る。パックされて止まってしまってコーチが笛を吹いていても気にせずエンドゾーンに向かって走る。
 ボールを持ったRBに与えられた仕事はたったひとつ。「タッチダウン」をすることだけです。ロングゲインすることでもファーストダウンを取ることでもありません。


 練習中に意図のないコーチの笛は、早めにプレーを終了させる悪魔のささやき(注3)です。ですから、RBは笛など気にせずタッチダウンまでプレーしていればそのうちコーチも「笛で終わるのはライン(注4)だけ。バックスはエンドゾーンまで走りよるわ」とわかってくるので根気よく継続しましょう。
 暑くても寒くてもしんどくても関係なく、スキあらばタッチダウンを狙って黙々とガツガツ走り続けるランニングバックがチームにいると守備陣もゆったりと練習(注5)していられません。必死になって止めないと自分達が「サボり」「無能」扱いされてしまいます。そして練習での緊張感が高まり、良い練習ができるのでチームは強くなります。


 毎日の練習で100回も200回もボールを持つなら構いませんが、社会人チームとかだと1日に3回しかボールを持たせてもらえない日もあります。そんな回数しか練習できなくて、仲間やコーチにヤル気と実力を表現出来ますか? そんな回数で上手くなれますか?
 ならば1回のチャンスを最大限に生かし切る。試合以上の緊張感と心意気でその1プレーに賭けるのです。「1回のボールキャリーで、何とか少しでもうまくなってやる!」というどん欲な気持ちで必ずエンドゾーン(または決めた場所)まで走らねばうまくなりません。


 僕が学生時代に、当時連覇中だった最強のチーム「日本大学フェニックス」のRBは、「練習でどんな時でも100ヤード向うのエンドゾーンまで(注6)走りきる」というハナシを聞いた時は「そんなバカなことがあるか。次のプレーをするためのハドルに間に合わないし体力的にもムリだ。そもそもそれが何のためになるんだ!」と真剣に思っていました。
 指導者もいないチームで、しかも若くて初心者の僕は実力も低ければアタマの中までレベルが低かったのです。これでは上級者になる資格すらありません。


 今回のこのコラムを読んで昔の僕と同じように「そんなバカなことがあるか!」と思った人は、単にレベルが低いだけです。次のプレーにスグ参加せねばならないなら全速力でハドルに戻れば良いのです。
 手を抜かず頑張っていれば、練習のペースもサイクルも「頑張るRB」を中心に回るようになってきます。


 これはチーム練習やフォーメーション練習だけでなく、全ての個人練習やドリルにも同じことが言えます。ウォームアップでも同じです。
 どのようなカタチでそれぞれの練習をフィニッシュするか。先に自分のルールとして決めておかねばダメです。指示されたドリルを規定数だけ行い、だら〜っと終わるのではなく、「最後にエンドゾーンに向かって10歩だけ疾走して終わるんだ」などと、決めておくことが大切です。


 徹底的にこのルールを守り、全ての意識をエンドゾーンに向けて練習し続けて来た僕は、引退して8年目ですが、いまだに運動するとこの習慣が抜けません。
 遊びでフラッグフットボールをする機会もありますが、ついつい隅っこまで走りそうになります。遊びの時はどこまで走れば良いのかわからなくなってしまったのです。
 習慣まで改造すると「軽く遊ぶ」ことができなくなる弊害もありますが、ボウルゲームで活躍できるという特典も付いて来ます。選ぶのは自分です。練習は「何をヤルか?」ではなく「どうヤルか?」が大切です。


(注1)サイドラインに出たら終わりますけど、僕は滅多に横へ出ることがなかったのでつい忘れがちです
(注2)タックルされていないのにつまずいたり押されたりしただけでこけるRBがいますが、これは別の問題を抱えています。しかしまずは何よりもこけてしまってもスグ立ち上がり、1回の練習をムダにしない気概を見せてもらいたい。いつまでも痛そうにうずくまっているRBは、その日でフットボール界から去った方がいいでしょう
(注3)プレー終了を表す笛は、人生をかけて臨んでいる選手の将来を左右するとても重要で繊細な仕事です。気軽にとりあえず吹くのはやめてもらいたいですね
(注4)強いチーム、良い選手はラインでもバックスでも誰よりも最後までプレーしています。ヘタクソで弱いチームほど笛がなる前に動きを止めます
(注5)いいボールキャリアがいれば、守備の練習に一役買えます。RBは自チームの強化全てに責任を負う覚悟が必要です。いい加減な取り組みや手抜きは一切許されません
(注6)本当だったのかどうかをいまだに聞き出せていませんが、彼らの体を見れば相当な距離を走り込んでいるのは明らかでした

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