ファンブルは味方を敗北に追い込んでしまう、決してやってはいけない大きなミスの一つですが、残念ながらどんな殿堂入りのトッププロでも、選手をしている限りは何度も何度もやってしまうことです。
 しかし、ボールキャリアの努力だけでファンブルが完全になくなるのは不可能です。その証拠に世界最高レベルでフットボールをしているNFLでも、数%の確率で起こる「オモシロシーン」として登場します。


 ボールを落としてしまうのは仕方ありませんが、落とさないために日頃からやっておかねばならないことはたくさんあります。これをどれだけやっているかがチームへの忠誠心を表します。
 落とすのが、または落とされるのがイヤなら究極の予防方法は「フットボールを辞める」「試合に出ない」「八百長する」「ラインになる」「ボールを持たない」「果敢に攻めず早めにニーダウンする」「すぐにニーダウンする」です。しかし、どうしてもコレがイヤならやることはイッパイあります。それでもやっぱり落としてしまうケースもあるので、やれるだけ準備はやっておくのが「オトコの道」です。


 そもそもボールを握るチカラ、つまりは腕力ですね。主に前腕と握力の強化。そしてボールを正しい位置で持つクセをつけるなど、いろいろとあります。
 もしアメリカ人との対戦があるならば、前腕の打撲に強くないといけません。何しろ彼らの強い腕力でボール付近をゴンゴンと何人にもよってたかって何度も何度もボールを持った回数だけ殴られるからです。
 やられ過ぎるとゲームの後半にはボールを持つことすらできなくなるほどです。骨を折られないためにも、ベンチプレスで200キロくらいは挙げることができる腕力をつけておかねば、恥ずかしくて米国人のプロとは戦えません。


 そして体力以外にもファンブルを防ぐ方法はあります。これはタックルをされてスッカーンと吹っ飛んでしまうボールキャリアが犯している「相手を見ていない」という滑稽なミスに象徴されます。
 いわゆる死角からのタックルですね。死角とは見えていない角度のことです。ボールを持っている選手を発見した守備選手はあらゆる角度から(キャリアから見ると前から横から斜めから死角から)猛烈な速度で迫ってきます。
 「どこから何人に当たられてもボールを両手で抱えて、君のパワーと根性でドーンと突っ込んで、あと2ヤード進めばいいんだ!」という闘志を二流のコーチから学んだ経験があると思いますが、それだけではダメです。全てのタックラーの動きを見て、元々ドコにいた選手が時速何キロで自分に対してどんな角度でどの高さにヒットして来るのかを解析しなくてはなりません。
 全部見るのです。見えないモノを見るにはどうすればいいか? 顔を向けて見るのです。目玉を動かして見るのです。何しろ見るのです。敵を捜すのです。僕はこれを「パトロール」と呼んでいます。


 最初は一番手前の一人しか見えません。自分の練習だけでなく他人の練習時にも「見る」訓練をせよと前回書きましたが、ココで役に立ってきます。自分がしんどい思いをせずとも「見るチカラ」を養えるのです。
 息も切らさず汗もかかずに上手くなる。これをせずに水を飲んだり談笑していては、一流にはなれません。訓練をしていくことにより、2人が見え3人が見えます。そうなると死角からタックルされて吹っ飛ばされるということがほとんど起こらなくなります。
 うまいランナーと下手なランナーは、タックルのされ方が違うので今度ぜひ見比べてみてください。


 つまり、見えない角度からタックルをされると、ファンブルをする可能性が飛躍的に上がってしまうので、RBは死角を減らす努力を怠るとチームへの裏切り行為になります。
 11人全ての動きを把握していれば死角から急にタックルされることはありません。アメリカでは良いプレーをした後に皆から労いの言葉で「Good Job!」などと声をかけられることがありますが、「Good Eyes」というのもあります。「オマエよーあれ見えたな!」です。
 グッドアイズはRBにとって非常に重要な能力ですので、アキレス腱が切れても膝が折れても別の場所でリハビリなんてしていないで練習を死ぬ気で見学しましょう。見えなきゃ何にも始まりませんよ! あとは運です!


 ボールを守りすぎたら活躍できません。そして、ボールを粗末に扱っていると味方から信用されません。

【写真】フットボールキャリアで最後のファンブルをする多聞さん=撮影:佐藤誠