社会人チームだと、オールジャパン級や上級者気取りで偉そうにしているセンパイが存在します。真剣にうまくなろうと、がむしゃらにドタバタと頑張るヘタクソに対して単なるイジワルで「お前、何を必死でやってんだよ、こっちがけがしたらどうするんだよ!」などと言って邪魔をしてくることもありますが、そんなことを気にしていては彼らを追い越せません。


 アサヒ飲料に入ってきたある新人君は練習態度が良くなく、注意されても仏頂面で返事もしないなど、常にマイペースを貫き、数年後には日本最強のラインマンになりました。
 コレは僕のような年長者のイジワルに見向きもせず、強い意志で自分の役割を理解し目標に向かって努力を続けたからなのです。それができるかどうかも、体格や運動神経などと同じく「才能」に含まれます。


 また、趣味で後輩に教えに来ているセンパイやコーチもいろいろと問題を生みます。統率力がある人、技術説明がうまい人、戦術に長けた人、気合いの人、お金持ちの人、優しい人、無能な人とさまざまです。
 その問題とは、その人の感覚でモノを言う時です。特に「思いっきり」や「全力」「少し抜く」「もうちょっと」といった曖昧な感覚を指導する時にズレが生じます。


 ほとんどのコーチは言いたいことを言うだけで、ヘタクソな選手側の「どう質問すればいいかわかんない」「どこがわかれへんかがそもそもわからんねん」「なぜかわからんけど、うまくいけへん、どうしたらええねん」というモヤモヤした気持ちを理解してくれません。
 そのくせ練習後や試合後に「ちゃんと教えたのにオマエができへんかっただけや」「教えた通りやれへんからや」と言います。


 こういうコーチは、教えるというのは教えられた人ができるようになるまでだという大前提をわかっていません。オノレの知識をぶん投げていれば「教えている」と思っている「機械のようなコーチ」にいくら習っていてもうまくなりません。
 初心者指導はできても、中級者や上級者をもうワンステップ上に導くことができないコーチも困ります。


 ボウルゲームで活躍できるようになりたい選手や、選手を上級者にしたい指導者は、山ほどある自分の知らない情報を全て受け入れて原理や理屈をかみ砕き、実行してみて問題点を見つけ出し解決し改善してまた実行。少ない情報しか得られなかった昔の知識、ましてや母校のセンパイから受けた知識だけでは足りません。
 日本人に合う合わないの問題ではなく、情報はNFLから引き出すのがベストだと思います。「いやいや、プロはすごすぎて手本にならん」なんて言うセンパイは多いですが、そういう人が自分のチームにいたらとても運が悪いですね。
 説得して考えを改めてもらえばいいと思います。しかし真似てはいけないNFL選手のプレーも多くあるので見極める判断力は必要です。


 スポーツ選手として成功するにはいろんな要素があります。しかし、フットボールに関してはコーチとの関係性がものすごく影響します。
 良いコーチに巡り会えるかどうかは運もありますが、選手側が選ぶこともできると思います。
 NFLのスーパースターには、大学時代にコーチとソリが合わずに転校した人や、プロになってから移籍する人も多くいます。逆にコーチがロクでもなくて潰れていった選手も星の数ほどいると思います。


 自分にはどんなコーチが合うのか、どんなコーチが自分を檜舞台に上げてくれるのか? 体も鍛えねばなりませんが、やれるだけのことをやった上で自分の将来をよく考えることも大切です。
 才能はあっても教える人が悪いがためにサッパリ上達せず、試合に出場できなければ全てが無になってしまいます。僕の場合は五つのビッグチームに所属した経験がありますが、そのうちの三つでは、実力不足でチームから相手にされませんでした。


 しかし、幸いなことに最後に所属したアサヒ飲料で藤田智さんという、僕にとって何が何でも絶対的に信頼できる世界最高のコーチに出会い、大きなトロフィーをいくつも獲得することができました。
 同じ人間でも、チームとコーチが変われば結果が大きく変わるという証拠だと思います。選手の皆さんが良いコーチに巡り会えることを心から望みます。しっかり選択してください。


 今回のお話はRBに限らないことですが、良いコーチのいる良いチームに所属していなければ「最強のRB」にはなれません。(続く)

【写真】ライスボウルに勝利して、チームのMVPを受賞する多聞さん