NFLやNFLEで、何十人ものアメリカ人選手が僕にこう尋ねてきました。
「オマエ、何回タッチダウンしたことあんの?」って。


 ランニングバック(RB)の仕事について、たくさんのコーチやセンパイから数多くのことを学びました。そして多くの方の助言を頂戴しながら、海外でのプレーでアメリカ人RBをあらゆる角度から検証し、学び模倣し練習に練習を重ねました。帰国してからアサヒ飲料での練習は自分の全てをかけて臨んでいました。


 試合で役に立つ「最強のRB」を目指すために、練習や試合では何をどうすべきなのか、どのような心掛けが大切なのか、などを少しずつお伝えしようと思います。
 もちろん初公開の情報も多く含まれています。他人様から学んで教わって試して失敗しながらいろいろな経験を元に、あらゆる局面でのベストな選択ができるようになってきた過程を振り返りながら、細かいことから大前提までいろいろ掘り下げて「タモンズスタイル」の新シリーズとして少しずつお話ししていこうと思います。


 RBには多くの仕事があります。例えばボールを持って走る。ボールを持ったフリをする。パスを受ける。パスプロテクションをする。ブロックをする。そしてエース級になれば組織のリーダーとしての役割も発生します。
 エースの言動はプレーの成否も含めて、チームの士気やいろんな所に影響を及ぼします。そしてゲームの勝敗を左右することもあります。


 フットボールはボールを持った人を中心に全てが動くスポーツです。チーム全ての「思い」をエンドゾーンまで運ぶというアサイメントをどれだけ全うできるかどうか。それがRBの価値です。
 ボールを持ったRBの仕事は「タッチダウン」すること。ただそれだけです。勉強中のRB諸君はそれを肝に銘じてプレーを遂行していただきたい。そうすれば少しのロングゲインで万々歳して大喜びなどしなくなるでしょう。そんな時はタッチダウンできなくて悔しい思いが先行するくらいでなければなりません。


 これからお伝えすることの中には「そんなバカな」「それはおかしい」「その逆なら聞いたことがある」等々の反論が出てくるかもしれません。僕の理論を試してみるのも試さないのも皆さんの自由ですが、高校ではクラブ活動もせずフラフラ遊んで過ごし、大学で1勝もできなかったような僕が、NFLEでわずかながらラッシングヤードの記録を残し、2度のライスボウルで5回のタッチダウンをすることができたのは、この方法を実行したからです。


 ただ、この理論が僕だけに通用して他の人には全く使えないかどうかも不安だったので、アサヒ飲料時代に少しだけ友人の一流RBに伝授してみたところ、彼の本来持っていた実力がメキメキ発揮され、とてもすごいランナーになりました。
 しかし彼は翌年他のチームに移籍し、その後はできるようになった技ができなくなっていました。彼の身につかなかったのは僕に教える情熱が足りなかったことと、教える時間と回数が少なかったからです。
 久しぶりにテレビで彼の走りを見た時は非常に残念な気持ちになったことを思い出します。残念なハナシなので名前は伏せます。


 文章で全てを伝え切れないのは当然ですので、「分かりにくい」「もっと詳しく説明しろ」といったご意見があれば、お寄せください。可能な限り協力したいと考えています。


 皆さんは練習でしんどい時についついチカラを緩めてしまっていませんか? 練習では技術的な上達も大きな目的ですが、本気を出してプレーするという訓練も兼ねています。ではゴチャゴチャ言ってないで進めます。まず今回は序の口からです。


 ▽練習は試合より思い切りやる
 コーチという生き物は、練習場での動きを見て試合で使うか使わないかを判断するので、「自分を試合で使えば必ずお役に立ちます!」という姿を見せないと何も始まりません。
 そして、コーチの期待値を少しでも上回るプレーを安定してやり続けて、チームメートにも自分の「やる気」や「向上し続ける総合力」を見てもらい「アイツなら大丈夫」と感じてもらうことが大切です。
 些細な間違いなど、何もかも全てに気をつけて練習時間を過ごさねばなりません。ゲームモードで全力プレー。練習だからと少しでも気を抜くと、試合でも気を抜く癖がついてしまいます。絶対に全力で最高に集中してプレーすることが大切です。
 何といっても練習の良い所は、失敗してもOKなところです。できることを何度もせず、できないことにチャレンジし続ける姿勢が大切です。


 少し速度を抑えれば成功するし思ったようにできるし動ける。しかしフルスピードや全力だとうまくいかない、という経験はありませんか?
 だからと言ってチカラを抜いた状態で成功を繰り返していても(例外は別途説明)上達しません。全速力の中で失敗を繰り返して、修正を加え続けていると、ある時フッと「悟りの境地」に到達します。
 自分に負荷を与え、悪い条件で反復練習をします。しかしその失敗シーンを見ている周りの人たちは「こいつヘタクソ!」と思っちゃいますので、なかなかレギュラーに定着できません。が、できないことがあれば、できるようになるまで一人でクオリティーの高い練習をしなければならないのは今も昔も同じです。

 練習でも思い切りやるようにしていると、周りがその熱意にのまれ、チーム全体に真剣味が増すことも効果として表れてきます。
 コーチがヤイヤイ叱るより、ボールを持った人間が必死でプレーし続ける方が、皆の心を動かします。練習は情熱を燃やし、心と技術を磨く時間です。試合レベルの緊張感を毎回の練習で訓練しておけば「ココ一番」にも強くなります。


 フルヒット、手加減有り、その時々によって練習内のルールは変化します。その中で味方選手がけがをしないかと思いきりヒットしないRBがいますが、大きな間違いです。
 RBがプロテクションでフルヒットしても、相手は滅多にけがをしません。それより、しっかりと本気の本気でハードなプレーを心掛け、チームメートに「勝ちたい気持ち」や「上達したいという思い」を伝えねばなりません。
 対戦練習では「一度たりとも絶対に負けない!」という強い気持ちで臨むことが大切です。RBがこれだけの強い気持ちで練習をしていることで、チームの緊張感は高まり、練習のレベルが上がるのです。RBの一挙手一投足をチーム関係者は見ています。(続く)

【写真】日本選手権でプレーするアサヒ飲料時代の多聞さん=2002年、東京ドーム