アメリカンフットボールは役割分担がとても明確にできているスポーツです。役割に対する感覚の違いが「ニッポンフットボール」を独特のモノにしているのかな? と思ったりします。今回は僕が選手時代に考えていた役割のことを書きます。


【コレが選手の役割だ!】
・ コーチは絶対に正しいと信じ切る
・ 作戦の善し悪しを考えない
・ チームメートの信頼を得るにふさわしい努力をする


【これがコーチの役割だ!】
・ 作戦を成功させる


【コレが監督の役割だ!】
・ チームを勝たせる


 フットボールを知らない人がビックリする「試合でボールを触らない人」が多数存在すること、「たまに出て来てボールを蹴るだけの人」などキッチリ役割が分かれています。


 グラウンドに来てビデオカメラを撮り、練習や試合が終わったらスグにコーチや選手がチェックできるように編集をしておく係もいます。コーチも担当以外の部署に思いつきで口出しすることはありません。監督は別ですが、これがおおまかな原則です。会社と同じですね。


 しかし日本ではしばしば、皆が越権し、皆がそれぞれの部署に意見を持ちます。時には発言もします。
 強豪チームのコーチは、試合で勝つためだけに存在しています。勝つためだけに作戦を考えて練習のメニューを企画します。それが仕事です。役割です。


 一般の選手は「コーチのイメージするプラスアルファ」の仕事を遂行するのが仕事です。役割です。時にはコーチの考えが間違っていると感じる事があるかもしれませんが、それは実は選手の思い間違いなのです。


 コーチも人間、間違う時もあるかもしれませんが、その人なりに100%の知恵を振り絞って毎日ロクに寝ずに家族も放ったらかしで作戦をどうするべきかと考えています。作戦がうまくいくことだけを考えています。仕事だから。役割だから。


 そこで練習中試合中の選手がコーチの仕事に介入することは大きく間違っています。脈拍が限界まで上がり、汗だくで興奮状態の人が思いついた作戦の方が正しいことなどなかなかありません。


 選手はコーチの作戦を100%信じて、自分の全てをその作戦遂行のためにぶつけるのが仕事です。役割です。その中で自分だけにしかできない技や駆け引きを楽しみます。
 コーチは選手からの信頼をエネルギーにしてより良い作戦をひねり出します。これを繰り返していくとチームは強くなります。お互いがお互いを心から信じ、その与えられた役割にプライドをかけて挑戦する。コレがアメリカンフットボールの現場で一番楽しくてスリルのある事です。


 結果がうまくいかない作戦を出し続けるコーチがいても、試合中やシーズン中に不平不満言うたり思うべきではありません。たとえそう感じても、全く気にせず選手がその分頑張れば良いのです。


 飛んで来た球を落としたことありませんか? ブロックすべき相手にスカッとかわされたことありませんか? タックルしたら手が外れて逃げられたことありませんか? 作戦を覚えられず、間違えたことありませんか?
 まずはそこを正して頑張るのが選手の仕事です。役割です。コーチの作戦に文句を言うのは選手の仕事ではありません。役割ではありません。それはオーナーやGM、ファンに任せておけば良いのです。


 スター選手やエースはもう一つ上を見なければなりません。
 それはまたそのうちにね―。

【写真】2000年から社会人選手権を2連覇したアサヒ飲料の藤田HC(現・富士通HC)と中村多聞さん(中)