「タモン、今すぐ俺の部屋に来い! 男と男の十番勝負の時間だ!」
 夕食を終えたらこの声がセンパイの部屋から毎夜聞こえてきます。毎日フットボールの上達と、いつか大きな舞台でプレーする事だけを考えて生きていたタモンが23歳頃のいい思い出です。
 「はいー、スグ行きます!」―。


 センパイが、自称少数精鋭の「三武ペガサス球団」でDEとOTの両方をプレーされている時に、僕が新人として入団したのが1990年代の初頭。87年の甲子園ボウルで日本大学の左側のDEとして怪物くん(注1)率いる京都大学と対戦している映像の中の人。
 練習が終われば、大阪から出て来て一人寂しい僕を寮(注2)で指が青くなるまでテレビゲーム(注3)の対戦相手として毎夜指名してくださった優しいセンパイは、現在もトップリーグでQBをプレーする47歳の現役選手「田昌光さん」です。


タモン:なんでいつまでもフットボールをやってるんですか?
センパイ:大好きなんだよ、フットボールが。まだ十分にボールも投げられるしやめる理由がどこにもないんだ。家庭や仕事が理由でやめなきゃならない人もたくさんいるけど、俺はそこに問題がないし、これだけ好きな事だからボールが投げられるうちにやめちゃったらきっと後悔すると思うんだよね。
タモン:ジジィ(注4)になってきてどうですか? やっぱり練習とかしんどいですか?
センパイ:全然平気だよ。まあメインテナンスの時間(注5)は少し増えたね。あとね、45歳過ぎてからKJ(注6)にサックされたら死ぬかと思うよ。あれは危ない。やっていて良かったと思う瞬間は知人から応援してもらったり褒めてもらったりした時かな。
タモン:プレー面ではどうですか?
センパイ:パスを守る人数が3人だと気付いた時にそこへ4人の選手を送り込み、自分のフェイントで相手が動いた瞬間、フリーになった味方選手にパスを決めるスリルと高揚感(注7)があるので、どんなしんどい事も忘れられるし気にならないんだよ。
タモン:そういうのっていろんなチーム(注8)を渡り歩いて学んだんですか?
センパイ:そう。特にオンワード・スカイラークスで日大の後輩の須永(注9)に教えてもらったパッシングスキームで開眼したね。ホント感謝している。
タモン:他にもいろんなコーチからいろいろ学んだっておっしゃっていましたね。
センパイ:そう。そういう皆さんに感謝しているよ。
タモン:ホンマにフットボールが好きなんですね。
センパイ:そうだね好きだね。QBをプレーする事はたぶん俺が世界一好きだと思うよ。
タモン:この話、10年ぐらい前にもしましたね。全くブレてないですね。誰もウソ言っているとは思えないですよセンパイ。
センパイ:ウソじゃないよ。
タモン:今年から東京ガスのヘッドコーチが代わりましたね。カート・ローズさん。
センパイ:やっぱり本物はイイね。視点が違うよ。ついでに英語も学べるし。
タモン:ローズ氏からどんな指導を受けているんですか?
センパイ:それはいろいろあるけど、例えば走り込んで脚力をつけ、サックをかわす能力を身につけろと言われている。長くプレーするには大切な事だよね。
タモン:センパイはQBなのに自分もパスプロ(注10)して投げますもんね。近代の大型化したフットボールじゃ、けがしますね。
センパイ:それから3rdダウンと4thダウンで使われる事があるんだ。昔の芝川さん(注11)みたいにね。
タモン:それってどうなんですか?
センパイ:信用されてる感じがいいよ。頑張っちゃう。
タモン:今年は少し体がシェイプされてますよね。今何キロですか?
センパイ:91キロから85キロに絞った。(と言いながら腹筋を見せようとする)
タモン:ほな、そろそろフィナーレお願いします。最年長選手として、パッシングコーディネーターとして、次節のシルバースター戦をどう戦いますか?
センパイ:カート・ローズ新体制になり、シルバースターのHCは今年から後輩の佐々木(注12)。この試合の為に今年一年やってきた。もし自分達が勝てば皆さんのわれわれを見る目が変わると思うし、全員で一生懸命頑張ろうと思っている。
タモン:10月20日の横浜スタジアムですよね。観戦に行きますね。中華街でおごってくださいね!


 田昌光:昭和41年生まれ。千葉県市川市出身。千葉日本大学第一中学校でフットボールを始める。千葉日本大学第一高等学校から、憧れの篠竹幹夫監督が率いる日本大学フェニックス入り。三武ペガサス、サンスター・ファイニーズ、伊藤ハム・ハスキーズ、アサヒ飲料チャレンジャーズ、オンワード・スカイラークス、クラブハスキーズを経て現在東京ガス・クリエイターズに所属。遠投60ヤード。雨の日のゴムボールでも60ヤード。トレーニングは週3回プラス週2回のチーム練習。
 趣味:タモンが経営する東京・西麻布の「塩屋」でNFL観戦、プラモデル、テナーサックス、サーフィン、スケートボード。今はタモンに憧れて大型バイクの免許取得を目指している。
 資格:歯科技工士
 主な成績
1978年 市川市プラモデルコンテスト自動車の部優勝
1980年 電動ラジコンカー船橋大会総合3位
1984年 甲子園ボウル出場
1985年 ライスボウル出場
1986年 東西対抗オールスター西宮ボウル出場
1986年 甲子園ボウル出場(QB)
1987年 甲子園ボウル出場(DE)
2004年 ジャパンエックスボウル優勝
2005年 ライスボウル出場
2005年 チャレンジボウルMVP(最年長受賞38歳)
2005年〜7年 3年連続リーディングパサー
2013年10月 エックスリーグ最年長パスTD記録更新(47歳8カ月)


(注1)京都大学史上最高のQB東海辰弥さん。京都大学―アサヒビール・シルバースター
(注2)甲州街道沿いに風呂、トイレ、水道が共同の昭和スタイルな独身寮。平日の夕食だけ提供される
(注3)NFL関連など対戦型ゲーム
(注4)勝負の世界では30歳以上から「ジジィ」と呼ばれる
(注5)トレーニングやマッサージ、休息、治療など
(注6)オービックの守備の要ケビン・ジャクソン選手
(注7)この感触を味わうために鍛錬し練習するのですがウマくいかない事が多いので、通常は挫折する理由にもなる。頭での感覚と実際の体のコントロールがしっかりとリンクしている証拠
(注8)節操のない移籍を繰り返し合計7チームでプレー
(注9)須永恭通さん。タモンと同い年の日本大学の元エースQB。現在はノジマ相模原ライズHC。NFLEではスコティッシュ・クレイモアーズでプレー
(注10)センパイはラインマンも経験している変わり種なので極めて当たりも強く、抱きつかれたくらいではビクともせずにそのまま投球してしまう
(注11)芝川龍平さん。関西学院大の代表的なQBの一人。ショットガン隊形から槍投げのようなフォームでパスを決めまくり、多くのファンを魅了した
(注12)佐々木康元さん。タモンと同い年で、日本大学が日本選手権で3連覇した時の主将。日本代表の初代主将。現在はアサヒビール・シルバースターのHC

【写真】強肩を生かして活躍するXリーグ最年長QB、東京ガスの田=撮影:Yosei Kozano