フットボールなど全く分からない僕の母でも、試合観戦後はいっつもこう言うてました。「晋三くんはうまい! あの子がおらなアカン! パスも止めるしランも止める! 全部あの子が止めてるー!」―。


 山田晋三君は現在、XリーグIBMのヘッドコーチをしています。頭に入れた膨大なデータの中から誰よりも速く最良の判断を下した瞬間に動き始める事で、遅い足と悪い運動神経をカバーし、誰よりも多くハードにタックルする事で、ついたニックネームは「串刺しシンゾウ」。


 東京スーパーボウル2001(現ジャパンXボウル)MVP受賞、米XFL、AFL、NFLEを経験。そしてプレーヤーとしての最後はタンパベイ・バッカニアーズ。こんなすごいオトコは、テネシー州で英語とフットボールを学びながら少年時代を過ごした後、関西学院中学部に入学し、大学4年時には主将を務め卒業後はアサヒ飲料チャレンジャーズに参加。最初は軽く気楽にプレーするつもりだったが、フットボールの面白さについ夢中になり就職した大手企業も退職しちゃうほどのめり込んでいきました。


 彼と出会ったのは1998年ジャパンユーロボウルの日本代表合宿。その後僕がチャレンジャーズに移籍し、ある平日の朝の通勤電車内でなれなれしく話しかけてくるヤツがいて、誰かわからなかったけど、知り合いみたいなのでどっかのフットボールの選手かなあと適当に話を合わせたフリしてごまかしました。
 次の練習であの電車の彼がチームメートの山田晋三だったと知り、「タモンさん、ヒドいっすよ〜」と生意気な口をきくので「覚えてもらえない自身のザコ(雑魚)っぷりを反省せえ」という会話をしたらしいですが、後になって晋三君本人から聞いたハナシなのでウソかもしれません。


 チャレンジャーズ時代には自身の向上のため、そして勝つために二人でいろんな話をしました。彼も必死。僕も必死。チームの勝利のためには絶対に必要な選手としてお互いの存在と能力を敬い尊重しあい、一切手抜きなしの数年間をともに過ごした事を思い出します。


 そして「串刺しシンゾウ」は「山田ヘッドコーチ」と名を変え、今もXリーグで調子に乗っているらしいと言う事でちょっと話を聞いてみました。


タモン:なんでIBMでコーチしてんの?
晋ちゃん:依頼は以前からもいろいろあったんですけど、やるんやったら普通のチームじゃアカン。師と仰ぐテッド鈴木の言葉である「一流たれ」を目指すには元々強いチームじゃなくて、これから伸びるチームやないとアカンと思いまして。そしてニッポンフットボールにえげつないインパクトを与えたい! という思いもありました。チャレンジャーズは前年度入替戦に出場したのに翌年は全勝でリーグ優勝したじゃないですか。アレとオーバーラップさせました。そしてIBMはアメリカでもNFLのスポンサーをするような大きなバリバリの一流会社です。外国の企業が日本のスポーツ界で優勝というのは過去に例がないはずなんです。そう言うところに惹かれましてね。
タモン:せやけど苦戦してるね。初年度はベスト4やったけど。
晋ちゃん:ですね。最後の最後にフィールドゴール入れられての惜敗でした。
タモン:負けは負けやゴチャゴチャ言うな。
晋ちゃん:ハイすいません。で、2年目はプレーオフ進出ならずで、当初描いていた業界にインパクトを与えるっちゅうのが難しいかなと。
タモン:そこでアメリカ人QBやな。ケビン・クラフトやな。
晋ちゃん:そうです。
タモン:彼は今年2年目やけど実際どうなん?
晋ちゃん:アメリカで、たまた見に行った試合で大活躍してたのが彼なんですわ。テネシー 大学とUCLAの試合です。後半負けてるトコから追い上げて、逆転勝利する彼のオフェンスに魅せられましたわ。すごかったですマジで。
タモン:あ、そうなんや。ホンマのホンマモンなんや〜!
晋ちゃん:そうなんですよ。ウマさは抜群ですよ。NFLに行けなかったのは運もあるんです。最上級生の時にモヒトツ活躍できずに注目されなかっただけで、実力はマーク・サンチェス(ジェッツ)より上だという評価もありますし、僕もそない思うてます。ホンマにエエ選手ですよ。
タモン:そうかいな。ほんでディフェンスコーチに19年チャレンジャーズでやって来た上田コーチを招聘したね。どう? 上田イズムは浸透してきた?
晋ちゃん:まあそんなカンタンにはいかないって予測はしてましたけど、ホンマに難しいですね。例えば……とか……ですわ。
タモン:へえ。ああ、そう。そうなんや…。(ディフェンスの事なんか全く知らんのにイキって聞いてはみたものの、サッパリ話の意味がわからへんので話を変えようと焦る僕)
晋ちゃん:でもまあ、結局最後のところは個人個人で何とかしてくれなアカンわけじゃないですか。選手は答えを欲しがるんですけど、踏んで来た場数が圧倒的に少ないので(京大前監督の)水野さんじゃないですけど「1万回やって経験積んでから色々考えろ! まずヤレ!」って思いますね。まあチームで用意できる練習時間も少ないから仕方ないところもあるんですけどね。
タモン:コーチも経営者も悩みは同じやなあ。
晋ちゃん:ですね。
タモン:コーチやってて面白い事って何なん?
晋ちゃん:選手の時と同じ感覚で一緒に闘っている感じとか、緊張感がすごくエキサイティングなんです。なおかつ、選手ではないので何歩も先を見とかなあきませんから、一喜一憂していられない難しさもありますけどね。
タモン:ほんならムカつく事ってなに?
晋ちゃん:教えた事、指示した事、コレだけは守れ、という事をやってもらえない時に悲しさがありますね。
タモン:そんなやつ、シバいたらええやん。まあもう字数イッパイなのでフィナーレ飾ってえな。チームとか自分の宣伝でもしてくれる?
晋ちゃん:あ、はい。え〜面白いフットボールをしたいと思うてるので、皆さんが今までに日本で見た事のないスタイルのフットボールを見せられる思うんです。とてもエキサイティングな本場のフットボールを見てもらえると思うてます!
タモン:普通やんけ。しょうもな。
晋ちゃん:すいません。

【写真】IBMのヘッドコーチとして4年目のシーズンを送る山田晋三さん=撮影:Yosei Kozano、9月29日、秋津サッカー場