今年のシーズンは終わったが、我々に一息入れる暇はない。まずは、今いる選手をしっかり鍛えて、ちゃんとしたフットボール選手にしなければならない。
 しかし、もっと重要な課題が選手のリクルートである。今年我々コーチ陣がチームに関わるようになったのは4月であったが、その時は既に来春卒業予定の高校生は、ほとんど残っていなかった。


 それでも、努力をしてスポーツ推薦入試で若干名を確保したが、ラインの人材は完全に不足である。
 幸い、スポーツ推薦入試の2次募集が1月にあるので、それに向けて他競技を含めリクルートをしているが、欲しい人材を得るのは難しい。


 リクルートの不可能な京大しか知らない小生にとって、高校でのフットボール経験者を集めるというのは、想像もできなかった世界であった。
 しかし、それは関学、日大、立命大という毎年多くの優れた選手を集める場合で、我々追手門ではそう簡単ではないことを思い知らされた。


 これまでしっかり活動してこなかったことに加え、大学の人気である。加えてフットボールチームとしての評価である。
 大学の人気にランクがある。まず関関同立、次いで京産、近大、甲南、龍谷。追手門はその他だから、これらの大学から声の掛かった者は、そちらへ行ってしまう。


 小生が関わることになったこの2年でも、高校の最も優れた選手は関学である。アメリカンフットボールの高校の競技人口が、大学チーム数に比べて少ない。ちょっとした選手でも、推薦入学で大学へ行ける「売り手市場」である。
 人気のない追手門に来るのは、取り残しというと失礼だろうか。


 一方、他のスポーツ、特に野球は高校での競技人口が多く野球の推薦入試で大学へ行ける選手は多くない。その中には、野球は下手でも体が大きく力が強いとか、足が速いという選手は少なくない。
 ラグビーでも、体は大きいが走るのが苦手という者も、ラインにはもってこいである。アメリカンフットボールの選手は、それぞれのポジションのスペシャリストである。スペシャリストだから、そのために必要なことだけマスターすれば、一応一人前の選手になれる。


 これが未経験者ばかり京大でも、4回も日本一になった最大の理由である。しかし、スポーツマンにとっては、今やっているスポーツが一番なのである。「いまさらアメリカンフットボール」と思うのも理解はできる。
 だが、私はこのスポーツは一番というのはないと思う。熱中してやっていたら、それが一番なのである。


 さらには、人によって向き不向きがあるが、アメリカンフットボールはポジションによって求められるものが多様であるから、多くの若い人にとって、その長所が生かせることが多いは事実である。ぜひ一度やってみてほしいと説いている。
 もっとも、誤解を避けるために言っておきたいのは、大学はスポーツをするためだけに来るのではないということである。そのことは、先日、本コラムに載せていただいた私どもの活動理念を述べたパンフレットに書いた通りである。


 大学の教育を云々する気はないが、少しでも追手門フットボールを卒業した者は、社会で役立つと認めてもらえる人間にして送り出したいと思っている。
 スポーツで勝ったところで、一銭の得にもならないが、勝利の追求を通して社会で認めてもらえるような自分を鍛えることは、大変価値あることと考える。


 もう一つ、選手のリクルートをしていて感じることを述べてみたい。強豪チームは、50名以上もの新入生を獲得するが、上級生になってプレーしているのは半分以下のようである。
 このような強豪チームでプレーできない選手でも、追手門大に来ればそのほとんどはチームの主力である。これは、追手門大だけでなく2部、3部のチームすべてに当てはまることである。


 このような選手が、多くのチームに分散すれば、全体のレベルアップにはきわめて有効であり、アメリカンフットボールのファンと競技人口の拡大に、大きく貢献するはずである。
 プレーすることを強く希望する選手は、転校というのもフットボール界にとってもプレー機会のない選手にとっても、意義あることではないだろうか。


 プレーできないのは、強豪チームではレベルに達しなかった者であるから、いなくなってもチームにとっては全く痛痒を感じることではないはずである。
 しかし、だからといってチーム当たりの登録人数を制限するなどというのはよくないと思う。アマチュアスポーツであるから、大学が受け入れるならどこへ進学するかは個人の自由であるし、入試基準をクリアする者なら、何人入部させようが全く問題ない。


 選手にとっても、同じやるならやはり頂点を極めるようなチームでやりたいと思うのも、自然の情であるし、たとえプレーできなくても、立派なチームで学ぶことは弱小チームでプレーするより、後の人生のために価値があると考えるのも、間違いとは言えない。
 ただ、今はまだプレーする機会もない者が、自分がプレーをしてチームを強くすることを望んで転校するという概念は、ほとんどないようである。


 今、強豪チームでプレーする機会のない選手の中には、たとえ追手門大でも選手としてプレーしたいという人も一人や二人はいるのではないかと思う。追手門大でも、一定の条件を満たせば、転校を受け入れる制度はある。
 それは、他大学のアメリカンフットボール選手に限らず、他競技の選手でも大歓迎である。ただ、ことわっておくが、他大学の中心選手まで引き抜こうとは思っていない。


 あくまでプレーできない優れたアスリートにプレーの機会を与えたい。もちろんそれは、我がチームの強化にも資するということである。

【写真】今季、チームを関西学生リーグ2部ブッロク優勝に導いた追手門学院の水野彌一総監督