しばらく「週刊TURNOVER」をサボっていたら、宍戸さんから電話をもらった。ライスボウルの感想を書けといのうである。実を言うと、まだしっかりと見ていない。当日、テレビはオンになっていたが、ちょうど来客があったため時々見ただけ。当然録画はしていて、後で見ようと思っていたが、4日も5日も予定と来客で時間が取れず、さらに歳のせいか深夜は集中力が落ちるので、見たのは前半だけである。


 というのが言い訳であるが、本当のところはついついチャンネルがNFLのプレーオフになってしまう、というのが本音である。
 そんな者がゲームの感想を述べるのは、失礼千万であることは十分承知の上で、外野席の観客の独り言を「ツイッター」させていただくことにする。


 大ざっぱで申し訳ないが、やはり地力の差は歴然としていると思う。関学オフェンスはランプレーをあきらめ、パスを多用していた。短いパスは上手に決めるものの、ボールコントロールには至らない。
 QBを走らせるような時も、学生チーム相手なら大きくゲインするような場合もシーガルズのセカンダリーの速い上がりで、ほとんど進まない。ランニングゲームでもパッシングゲームでも、シーガルズのディフェンスが上だと思った。


 一方、関学ディフェンスの特長の第一はディフェンスライン(DL)のスピードであるが、ほぼ完全に封じられていたと思う。シーガルズのオフェンスライン(OL)は役者が違うという印象であった。
 このため、シーガルズのQB菅原君はあまり調子がいいとは思わなかったが、ほとんどプレッシャーを受けることなく、余裕を持ってプレーできていたし、ランプレーも思い通りに通してした。このゲームの勝利の立役者はOLだと言って間違いないのではないか、というのが小生の感想である。


 小生の受けた最も強い印象は、翌日の新聞で見た「やりようでは、何とかなる」という、関学・鳥内監督のコメントである。小生も全く同意見である。鳥内監督の意見の根拠は知るよしもないが、小生の考えを述べてみたい。


 結論から言うと、日本では学生は学生のフットボールをした方がいい、ということである。前にも述べたが、今我が国の大半のフットボールチームが手本とするのは、アメリカのカレッジフットボールだと思う。しかし、本当にそれでいいのだろうか。
 というのは、アメリカと日本ではフットボールをする条件が大きく異なるからである。それは社会の違いであり、フットボールの位置づけの違いである。NCAAが厳しい規制を設けるのも、全てを放任しておくとコンディションでのフェアな競争や教育的価値が損なわれるためであり、それは理解できる。


 規制の一つが、練習時間の厳しい制限である。少ない練習時間では、チームプレーをインストールし、ゲームプランを立て、それをマスターするだけでほとんどの時間が費やされてしまう。作戦が重視されるアサインメントスポーツでは、それは不可欠である。
 そのため、スキルアップのための練習はあまりやられていない。もちろん、アメリカのカレッジのコーチもスキルを軽視しているわけではない。ただ、スキルの向上のためには、膨大な量の練習が必要であり、そのための時間がないというのである。


 だから、高いスキルを身につけた選手を全米の高校から集めてくればよいということになる。もっとも、アメリカではほとんどの優れたアスリートは、小さいときからフットボールをプレーし学んでいるから、高いスキルを身につけた者はたくさんいるわけであるから、こういう考えは間違いではない。


 一方、トレーニングは制限されていないのでいくらでもできる。力が強くなれば、その分プレーも強くなると考えるのは間違いではない。フットボールインテリジェンスとフィジカルの向上。コーチは最良のスキームを作り、それを与えられた時間で実行する。やるべき課題をリストアップし、効率よくチームにインストールするための練習計画を作成し実行する。そこにコーチの力量が示される。


 アメリカンのカレッジのコーチは、実によく働く。そこには我々が学ぶべきことは多い。特にXリーグのチームは、練習時間が制限されるため、条件がよく似ている。アメリカの「カレッジ流」の取り組みをするチームが多いのは、当然である。


 今、我が国の大学強豪チームのコーチは、Xリーグ経験者や米国でプレーしたり勉強したりした人が多く、それをチームの指導に反映している。
 コーチの努力で練習効果を高め、同じことを短い時間でマスターできるのは、選手にとって幸せなことである。しかし、今まで4時間かかった練習を2時間でできるようになったから、2時間で練習を終わって残った時間をトレーニングやビデオスタディーに充てるという考え方は、いかがなものだろう。


 私はスポーツの要素で「体力「戦術」「スキル」の中で最も重要なのはスキルであると思っている。関学、日大、立命のようにスキルの身についた優れた素材を毎年リクルートできるチームなら、「カレッジ流」も間違いではないかもしれない。
 しかし、大半の大学チームは選手のほとんどが未経験か、経験があっても十分ではないから、基本的スキルすら身についていない。だから、最も重要なのはスキルのための練習なのである。


 スキルには上限がない。いくらやっても十分ということはないから、4時間の練習時間が与えられたら、それをフルにスキル練習に充てればいいと思う。さまざまなチームの話を聞いても、昔より練習時間は少なくなっている。特にライブのスクリメージは極めて少ない。
 その理由は、スクリメージは常に高い確率でけがをするリスクが伴う。けがを回避するため、スクリメージは必要最小限にするということである。それも合理的な考え方である。
 しかし、一方で十分な実戦練習をせずぶっつけ本番のように試合に臨むと、かえってけがをするケースが増えるとも考えられないだろうか。


 面白い話を一つ。1974年のことだったと思うが、春に下高井戸に赴き、日本大学の胸を借りたことがある。試合が始まって間もなく、オフェンスチームがベンチに戻ってきたとき、確かランニングバック(RB)だったと思うが「日大は大したことない。タックルされても痛くない」と言うのである。


 当時の京大の哲学は「素人ばかりで高いスキルを望めない。勝つチャンスは当たりしかない」というものであった。だから、当たりの練習はどこよりもやっていたと思う。
 一方、当時の日大の練習はスクリメージが大半と聞いていた。そんな練習で、お互いが痛いようなブロック、タックルをしていたら、体が持たないのである。だから、タックルでもお互いが痛くないようにやるスキルが身についているのである。
 彼らは、スクリメージをたくさんやる中で、このような技と知恵を自ら体得していたのである。実にきれいなタックルができるのである。これは、大変レベルの高いことなのである。京大の選手は当たりで勝つ、しかしスキルは低い。だから「日大は大したことない」になるのである。


 私が言いたいのは、これこそがスキルであるということ。鳥内監督がなぜ「何とかなる」と言ったのかは分からないが、私は大学チームには練習制限がないから、チームスキルの面でも、うんと練習してプレーの切れ味を増すなら、Xリーグに対抗できると考えるのである。


 もちろん、私の意見がベストとは思っていない。全てのチームはそれぞれ固有の条件を与えられている。だから、これがベストという正解は存在しない。自分たちのチームに与えられた条件を元に、自分たちのベストの取り組みをするべきだと思う。
 それは、チームが強くなって条件が変われば、それに伴って変えていくべきだというのは、当然のことである。正解は存在しないのである。

【写真】ライスボウルに向け調整する関学大の主将DL池永=12月24日、兵庫県西宮市の関学大