11月8日に、京都の西京極陸上競技場で行われた関西学生リーグの試合で、京大が立命を破った。実に13年ぶりである。そこで今回は、この試合について小生なりの感想を述べてみたい。


 所用のため、試合会場に着いたのは後半の立ち上がりであった。スコアボードを見ると、6対0で京大が勝っている。間もなくQB小原がTDして7点を追加。京大オフェンスはランが好調。一方の立命はパス、ランともにいつもの切れがない。聞くと試合開始早々にスタートQBが故障退場したとのこと。2番手QBはパスが良くないし、レシーバーのキャッチミスも多い。ランプレーも京大に止められ続かない。


 まさに「これが立命か」とうい展開。かつての立命とは、全く違うチームに見える。何より、ディフェンスの集まりが悪い。敵ながら、「いったいどうした」と言いたくなるほどである。専門誌ではプレシーズンのランキングナンバーワンだったはずだが。
 京大の方も、一度も練習を見たことがないので、両チームには失礼と思うが、外野席から好きなことを述べさせてもらうことにする。


 まず、立命サイドから見ると、小生も今回のようなことは何度も経験している。1990年代半ばから、立命は圧倒的な戦力を有するようになっていた。その最たるものが、2003年のチームで、我々も彼らのショットガンオフェンスを止める術がなかった。
 冷水、木下、長谷川といったレシーバーは、京大DBに対して圧倒的にスピードで勝っており、カバーできない。カバーできることがあっても、レシーバーのずば抜けた技術で、競り合いでほとんど取られてしまう。


 そしてQB高田のピンポイントのコントロール。何とかプレッシャーを掛けるが、その分ランプレーやRBへのパスで進まれる。何度かサックすることはできたが、そんな時高田はすんなりサックさせてくれる。彼はランナーとしても素晴らしい才能を持っているにもかかわらずである。
 思うに、次に取れればいいから、ジタバタせずにサックされておいてやろうということなのだろう。とてつもない自信の表れで、小生は「これは歯が立たない」と思わされた。


 圧倒的な力を有するものは、事に臨んで一切の不安、迷い、疑いから解放されるから、100%の力を出せる。強い方が一層強くなるのである。あるレベルを超えて強くなると、自分たちは強いと自覚することが、最高のプランなのである。これがこの間の典型的な「立命フットボール」である。圧倒的な選手の力が、相手の技や仕掛けを蹂躙してしまう。相手は素手でライオンと格闘するようなものである。
 当時の古橋監督は、ゲームプランなど考える必要はなかったであろうが、このような個性の強い集団を統率するのは、さぞかし大変だったと思う。見事にそれをやってのけたその手腕には、敬意を表するものである。


 しかし、次の米倉監督からは就任当時から、それまでのように優れた高校生を独占的に獲得することができなくなってきたと聞いていた。特に優れた選手は関学と競合してほとんど取られると言っていた。
 このことは、京大との対戦にも表れている。08年には14対13で京大を下しているが、4Qでの逆転である。11年は10対0。京大オフェンスがまともであったら、十分に勝機はあっただろう。昨年春の京大―立命を見たときも、立命の変わり方に驚いたのを思い出す。「基本に忠実な素晴らしい普通のチーム」になっていたのである。


 一方の京大であるが、08年以前は入部者が少なく毎年30人ほど。昔強かった頃は、100人近く入部していたが、優れたアスリートは10%もいればいい方。30人の入部では、辞めないように厳しい指導は控えても、残るのは10人。良い素材は3人もいればいい方である。
 高校経験者の勧誘では、いつも同じ国立の神戸大には10対1くらいで完敗。いいのは全部取られてしまっていた。しかし、09年から入部者が増加。この学年は4回生になって30人以上残り、12年はまだフットボール選手になっていない1回生を使わなくてもいいチームが15年ぶりくらいでできたのである。12年のリーグ戦は4勝3敗であったが、立命、関大には勝つチャンスがあったと小生は思っている。


 さて今年である。それまでの立命は、下位チームは危なげなく下していた。一方の京大は、下位チームにも苦戦が多く、龍谷大との試合は、まさに九死に一生という勝ち方であるし、関学には0対28とシャットアウトされている。
 どう考えても立命有利である。加えてここ12年間負けていない、負けるわけはないという安心感があったと思う。聞いたところでは次の関学戦に向けて準備していたようであるが、それは当然のことである。


 しかし、かつての「アニマルリッツ」ではなくなっていたのだろう。そして京大は変わっていた。メンバーが増えたのである。卓越した選手がいると、その力を生かした勝ちにいくゲームプランが立てられる。好例が1980年代前半の京大だ。
 松田という絶対的なエースRBは2年続けてシーズン1500ヤード近く走っていた。松田を走らせることが、我々の戦術だった。相手は松田のランしかないと分かっていても走るのだから、何というすごい力量か。それしかないから、それに集中すればいいからコーチにも迷いがない。
 しかし、全体に非力なチームは、うまくプランを立て弱点を突かれないようにしなければならないから、工夫を重ねなければならないのである。


 ここ十年来、京大はメンバー不足のため1回生まで使わざるを得ない。勝つためには、どんな相手にも弱点を突かれないように、幅広く対応できることが求められるが、まだ一人前になっていない者を使うとなると、彼らのやれることは限られていてそれしかできない。
 勝つためのプランは無理だから、チームとしてやれることを決めるが、それしかできないから「勝とうが負けようが、それをとことんやれ」になる。小生の嫌いな「根性フットボール」をやれと言わざるを得なかったのである。


 「俺たちは弱い」。それを根性で克服するというのだから、大変厳しいものがある。本当は、チームの戦力に合った目標設定、関学、立命以外に勝とうとすれば、ある意味では、もっと「良質のフットボール」ができただろうと思う。しかし、毎年4回生の「今年は打倒関立!」という悲壮感あふれる顔を見ると、3位が目標とは言えないのである。難しいところである。


 昨年はメンバーが増え、チームは変わっていたが、それでもスカウティングをすると関学と比べると、かなり見劣りするのは否めない。心の底で自分たちの弱い部分を見て闘っていたのだろう。
 こういうフットボールのやり方が、長い間の低迷でチームに染み込んでしまったこともあるのだろう。勝つことと負けないことは同じことなのであるが、負けないフットボールが性となり、勝ちにいくフットボールができていなかった。これでは、力がついてもそれを発揮できない。


 昨年の立命、関大との試合も、今年の前半の下位チームとの苦戦も、この10年の間に染みついた「自分たちは弱い」という思いが、その原因であったと思っている。西村監督は、「それを変えなければならない」といつも言っていたが、解決策は見つからなかったのだろう。
 QB小原は、ボールを投げることに関しては、京大史上最も優れた選手だと小生は思っている。しかし、パスプレーになると駄目なのである。なぜか、小原の才能を生かすノウハウがチームにないのである。それでも勝つためには、小原のパスを生かさねばと考えるのは、無理からぬところである。人間考えると行動は鈍る。そこから脱却しなければと、西村は考えていただろうが、自分たちの最大の可能性を捨てるというのは、なかなかできることではない。


 今回、西村はそれをやったのである。関学に完敗したことが、後押ししたとも思うが、腹をくくったのである。「パスを捨ててランで勝負」と決めたのである。そうしたら、チーム全員が腹をくくり、迷いが消えた。


 立命は京大を多少なめていたかもしれず、関学戦に意識がいっていた部分もあったのだろう。しかし、京大はそれまでの京大ではなかった。迷いを捨て、がむしゃらに向かってきた。「どうなっているんだ」と頭ばかり動かしいて足が動かなくなった。
 QBの故障が重なり、どんどん悪い方に転がっていく。一方の京大は自分たちは力で負けていないと思うから、ますます勢いがつく。つくづくフットボールはモメンタムのゲームなのだと思わされた。こうなると立命のコーチは、なすすべがなくなる。勝負はコイントスの時に決まっていた、という好例であろう。


 立命と京大の力関係が変わってきたのである。立命はかつてのように、力で京大の技や仕掛けを粉砕してしまうほどの優位を失っていた。だが、それを頭では分かっていたのかもしれないが、12年間負けなしに惑わされたのではないだろうか。京大は逆に、自己を過小評価していたのだが、腹をくくって本当の力を出せたということだろう。


 40年前、京大が関学の壁を破った頃のことを思い出す。当時は「技の関学」「力の京大」と言われた。その意味は、京大は強くて力任せに立ち向かうが、関学のうまさに料理されて、結局は負ける。京大には策がないということである。しかし、それでもめげずに立ち向かっていたら、気がつかないうちに関学は壁ではなくなっていたということである。
 プランより実行、要は勝てばよい。今回の立命戦での勝利は、京大の原点回帰を思わせてくれる。何より監督が腹をくくったこと。そして、チーム全員にも腹をくくらせた。彼のリーダーシップ、そしてそれを可能にしたのが、ここ5年の入部者の増加である。最後に関大戦であるが、戦力的には十分勝てる相手である。今回知った京大流の戦い方でいくなら、勝利は現実的であると思っている。


 ただ、現在の関学を見ると、選手の質、量ともに抜きん出ており、これから5年くらいは関学の天下が続くと考えていいだろう。京大は、今の戦いでは関学を超えられない。何かさらなる「京大流」が求められるだろう。
 さて、立命であるが、今回は後悔先に立たず。もう一度やれば、絶対に勝てると思っているだろう。ただ、負けるわけがないと思っていたのが、幻だったと気付いたのは、今後のチーム作りへのきっかけになるだろう。これから立命がどう変わっていくか、興味は尽きない。楽しみが一つ増えた。これが関西リーグの盛り上がりにつながれば、大変結構なことだと思っている。


 最後に、DVDによるゲームレビューもせず、思いついたままに書いた。事実に反する事があるなら、失礼の段、両チームの皆さんにお詫び申し上げておきたい。

【写真】立命大に13季ぶりに勝利して喜ぶ京大の選手たち=写真提供:P-TALK、8日、西京極陸上競技場