日本社会人Xリーグ、ファーストステージ最終節のLIXIL―IBMの一戦が、10月18日に横浜スタジアムで行われ、大方の予想を覆し、LIXILがIBMを33―25で破った。LIXILは4勝1敗の中地区2位でセカンドステージの上位リーグ進出を決めた。


 2012年秋にQBケビン・クラフトがIBMに加入して以来、LIXILは前身の鹿島時代を含めて、この試合までIBMに3連敗中だった。
 過去の対戦では35―56、10―38、54―69とオフェンスは健闘していたが、クラフトが率いるIBMオフェンスに対して、常に守備が崩壊していた。


 今季の戦力を比較すると、IBMオフェンスはRB末吉智一と高木稜のダブルエースが絶好調なことに加えて、伊藤琢丸、秋葉英明の加入によりOLが強化されて、ランの破壊力が増した。
 一方、LIXIL守備の新戦力と呼べるのは、アサヒ飲料から移籍したDLの平澤徹だけ。さらに、LB牧内崇志、DB佐野忠也ら鹿島の黄金時代を支えたベテラン勢は、年々パフォーマンスの衰えを隠せなくなってきている。有澤玄守備コーディネーターがどのような戦術を用いようと、進化を続けるIBMオフェンスをLIXIL守備が止める方法はないと思われた。


 スタッツを見てみると、LIXIL守備はパスで176ヤード、ランで214ヤードを喪失しており、IBMオフェンスを完璧に止めたわけではない。むしろ終始ドライブされていた印象がある。
 しかし、レッドゾーンに侵入されてから粘り強く守り、4本のFGを許した一方で、2TDにとどめたことが勝利につながった。


 「全ての攻撃を封じることはできない。まずはパスをしっかり止めて、クラフトのプレーコールをラン中心に持って行かせる展開を考えていた」と有澤コーチは言う。
 パス守備の要となったのが、5人目のDBとしてニッケル(N)のポジションに入った林龍一だ。林は167センチと小柄だが、豊富な運動量でフィールドを縦横無尽にかけまわった。
 林は「勝負どころでパスターゲットとなるのは、栗原選手とスタントン選手の二人。彼らへのパスを防ぐことに集中した」と試合を振り返り、「林がよく動いて奥のスペースを埋めてくれたので、前で勝負することができた」と、佐野はパス守備における林の存在の大きさについて語った。


 象徴的だった場面がある。第3ダウンロングのパスシチュエーションで、WR栗原のサイドに3人のDBを固めたのだ。昨年の対戦で最も苦しめられたのが、栗原のスピードを生かした縦のパスパターン。ここだけには絶対に投げさせないという、LIXIL守備の強烈なメッセージが伝わる布陣だった。


 今までの敗戦を振り返った上で、LIXILがパス守備の人数を増やして後ろを厚く守ってくる。ここまではIBMオフェンスにとって想定の範囲内だっただろう。
 クラフトは途中から冷静にラン中心の攻撃に切り替えて、LIXILディフェンスをあと一歩のところまで崩しかけていた。LIXILが水際で踏みとどまることができたのは、DL平澤がいたからだ。平澤が持ち前のスピードを生かしてQBにプレッシャーをかけ続けたことにより、パスコースがかなり限定された。


 さらに、彼の強烈なヒットは、失いかけたモメンタムを再びLIXILへと呼び込んだ。余談になるが、Xリーグのハードヒッターと言えば、富士通のDBアルリワン・アディヤミ、オービックのDLビーティー・ジュニア、昨年までノジマ相模原に在籍していたDBロカ・カノンガタの名前がすぐに思い浮かぶ。
 彼らのスピードに乗ったヒットは、すさまじい衝撃音をともなう。そして、平澤のヒットには彼らと同じくらいのインパクトがある。第3クオーター、平澤が高木をロスタックルに仕留めたヒットの衝撃音は、横浜スタジアムの最上段まで響き渡り、スタンドから大きな歓声が湧き起こった。


 思えば7月の世界選手権で日本が米国との初戦に敗れた後、日本代表の山中正喜DLコーチは、「平澤くらいのスピードがあれば、アメリカにも十分に対抗できるという感触はつかめた」と、平澤に対する評価が高かった。
 この日の試合後、LIXILの森清之ヘッドコーチも、「平澤の加入はただの11分の1ではない。彼の存在によって、ディフェンスとして新たに実現可能になったことがたくさんある。チームにとって特別な選手だ」と、最大級の賞賛の言葉を並べた。


 勝利に貢献した平澤は、「うちのディフェンスは、個の力という面では正直かなり厳しいです。しかし、ベテランの方々が今の能力を謙虚に認めた上で、僕らの意見を聞いてくれる。そこは本当に尊敬できるし、彼らと最高のディフェンスを作っていきたいというモチベーションになっています」。


 1対1で確実に相手を上回ることができるのは、平澤と気迫のこもったソロタックルを連発してランストップに貢献したLB天谷謙介の二人ぐらいだろう。
 LIXILの守備陣に相手を圧倒する力はない。第4ダウンギャンブルのランを渾身のタックルで止めたLB牧内。エンドゾーン手前で、何とかWRをサイドラインに押し出してTDを防いだDB加藤公基。全盛期と比べて力は落ちたが、経験豊富なベテランたちが勝利のためになりふり構わずプレーしているのが今のLIXILディフェンスだ。


 「外国人選手がいないことを言い訳には絶対しません。IBM戦で俺らはまだまだやれるっていうところを見せますよ」。LIXILの練習を取材した1カ月前、主将を務めるDL鈴木修平が言っていた言葉を思い出した。

【写真】IBMのRB末吉の突進を群がって止めるLIXILディフェンス陣=撮影:Yosei Kozano