ディフェンスの力で勝ち取った金星だった。9月13日、地元相模原のホームゲームで初めてオービックに勝った試合後、記者に囲まれて守備のMVPを聞かれたノジマ相模原の須永恭通ヘッドコーチは、加藤慶守備コーチを呼んだ。そして、加藤コーチが迷わず選んだのが、DB北村雅史だった。


 北村は高校野球の名門・神奈川の桐蔭学園で1年時から4番打者を務めるほどのスーパーアスリートだった。立教大でアメリカンフットボールに転向すると、最後尾を守るセーフティーの逸材としてU―19の日本代表に選出され、専門誌に特集されたこともあった。しかし、これまでチームとして日本一には縁がなかった。


 オービックとの過去の対戦ではLBの裏、北村が守る前のゾーンをパスで狙われていた。「分かってはいるけど、木下(典明)選手がいるので、後ろの奥のゾーンを警戒しなければならない」。北村はジレンマを抱えていた。
 今季、チームに加入したCBのマヌ・ナティカウラは技術は粗削りだが、40ヤードを4秒3で走る駿足。「マヌがいれば前に攻められる」。北村は練習から二人のコンビネーションを高めて、オービックのパスをインターセプトするイメージを完璧に作り上げていた。


 前半を終えて7点のリードを許したオービックは、後半からQB畑卓志郎を投入した。これも北村にとっては待ち望んだ展開だった。「菅原(俊)君はパスカバーをきっちり読んでから投げるけど、畑君は勢いで投球することがある」
 10―9と1点差に迫られ、攻撃はオービック守備にアジャストされて沈黙。会場全体が「オービックの逆転は時間の問題だろう」という雰囲気になりかけた直後にビッグプレーが飛び出した。


 畑がサイドに投げたパスを、マヌがインターセプトリターンTDに結びつける。このプレーはノジマ相模原のディフェンスが用意していた、勝負サインの一つ。
 北村は練習中からマヌに「後ろは俺が守るから、思いきり狙っていけ」と言い続けていた。相棒が苦しい場面で、期待通りの最高の仕事をしてくれた。


 次のシリーズでは、今までやられ続けていた前のゾーンへのパスを、北村が狙いすましてインターセプト。この試合、ノジマ相模原守備は北村の二つを筆頭に、合計五つのインターセプトを奪って勝利を手繰り寄せた。
 第4クオーター終了間際にオービックのWR松永翔太が完全にフリーになったパスをはじめとして、北村が攻めたことにより、リスクも生まれた。しかし、格上のチームを倒すためにはリスクを背負う覚悟は必要だ。


 「サンキュー、マサ!」。試合後のサイドライン、もう一人の主役が笑顔で北村に抱きついた。スピードのマヌと読みの北村。この二人のコンビは、相手のオフェンスにとってこれから脅威となっていくだろう。


 2012年にIBMのQBケビン・クラフトが加入して以来、Xリーグは全体的にパスオフェンス優位の時代が続いている。インターセプトを狙う攻撃的な守備が増えれば、空中戦での主導権をめぐる攻防はさらにおもしろくなる。守備の逆襲が始まった。

【写真】オービック戦で2インターセプトを記録し勝利に貢献したノジマ相模原のDB北村(23)