日本がメキシコに勝って、2大会ぶりの決勝進出を決めた。対戦相手は3日前に18―43で敗れている米国だ。
 終盤に点差が開いたが、フットボールの本場を相手に互角以上に戦っている局面もたくさんあった。最も苦戦したのがDLで、彼らのパフォーマンスが目標としてきた打倒米国の鍵を握るだろう。


 OLが素晴らしいプレーを見せている。森清之ヘッドコーチは昨年のアジア予選から、常に「日本のオフェンスラインは世界と勝負できるレベルになった」と自信をのぞかせていた。
 中でもXリーグで米国人DLに鍛えられたパスプロテクションは秀逸で、左Tの小林祐太郎(富士通)が守るブラインドサイドから、QBがプレッシャーを受ける場面がほとんどない。ランブロックでもゴール前で押し切れなかったという課題はあるが、高木稜(IBM)を中心としたRB陣のコンスタントなゲインを引き出している。


 一方のDLは対照的に、米国のOLに苦しめられた。「選手交代して2プレーしかたっていないのに、DL全員の息が切れていた」。米国戦後の山中正喜DLコーチの談話だ。
 私自身も試合を通して最も印象に残ったのが、DLの激しい消耗だった。12分クオーターでローテーションしながら出場しているのに、第3クオーターの途中から選手たちが常に肩で息をしていた。「サイズ差のある相手とヒットし続けることによる消耗は想定していた」と、大橋誠ディフェンスコーディネーターはコメントしたが、予想以上にDLのダメージが大きかったと見ている。


 DLがやられると、そのしわ寄せは後ろの守備選手たちに来る。米国戦では藤田篤(富士通)らセーフティーのタックル数が最も多かったのは、LBが米国OLのブロックに巻き込まれた結果だ。
 パスでもDEのスピードラッシュが毎回きれいにOTに外へと流されて、QBにプレッシャーはほとんどかからなかった。


 唯一互角に対抗していたのがDTの紀平充則(立命大OB)だ。サックを決めるなどQBにプレッシャーをかけて、DB藤本将司(オービック)のインターセプトもアシストした。
 メキシコ戦ではDEの飾磨宗和(パナソニック)平澤徹(LIXIL)らがQBサックを決めたが、米国のOL相手に同様のプレーをすることは簡単ではない。


 日本のDL陣のスピードや技術が全く通用していないかというと、そうではない。惜しいプレーも何度かあり、ベストのプレーをすれば攻略できるだろう。
 だが、前回はほとんどの選手がフルで動けたのが前半だけという印象だ。いかに1試合を通してDLがいいパフォーマンスを保てるかが問われてくるし、それができれば勝機も見えてくる。


 米国のQBはディラン・ファーブとケビン・バーク。日本のDB陣が前回3インターセプトを奪ったように、DLのプレッシャーさえかかれば、どちらが出てきてもパスは全く怖くない。
 ランはRBセードル・フォスターをはじめタフな選手に加えて、QBのスクランブルとプレーアクションがあるが、DLが動き続けることさえできれば止められるだろう。


 過密日程で2試合を終えた日本代表は、満身創痍の選手も多い。WR木下典明(オービック)は足の状態が万全でないため、メキシコ戦に3TD差がついた時点でサイドラインに下がった。ハードタックルを連発して、メキシコ戦では二つのインターセプトを決めたDB三宅剛司(オービック)は、首から肩にかけて紫色に腫れ上がっている。しかし、「アメリカを倒すことだけに集中している」と笑顔で、けがを気にする様子はない。


 日本時間19日の米国との決勝。前回同様にDLが最も苦しくハードなマッチアップを強いられることは間違いない。日本代表のDLは、24歳の清家拓也(オービック)から46歳の脇坂康生(パナソニック)ま8人いる。
 4人一組でプレーし、攻撃シリーズの途中でも何度も何度も入れ替わって米国に食らいつく。戦場の最前線のような状況のサイドラインには「回復しろ!」という声が響き渡った。


 「31年間フットボールをプレーしてきて、自分にとっては米国を倒せるのはこれがラストチャンス。全部出し切る」。脇坂は記者会見でこう言った。
 DL8人全員が脇坂と同じ気持ちで、試合後はフィールドに倒れこむくらいのハードなプレーができれば、米国を倒しての世界一も夢ではない。

【写真】体格差が顕著だった、日本のディフェンスラインと米国のオフェンスライン=撮影:Yosei Kozano