「打倒米国」を目指す日本代表45人が決まった。前回大会では、オーストリアへの出発直前に体調不良による選手の入れ替えがあった。
 今回も負傷明けの選手がいるなど、メンバー変更の可能性もあるが、「森JAPAN」はサバイバルレースの段階を終えて、いよいよチームの仕上げに入る。


 「練習メニューを組むために最低限必要な人数が55人だった」。森清之ヘッドコーチ(HC)は2次選考で一度55人にした理由をこう説明した。つまり、大会規定の最終ロースターが45人なので最後は仕方なく10人をカットしたが、本当は55人の段階から一人も減らしたくなかったはずだ。
 最終メンバーと同等のレベルにある、落選した10人を残った選手たちと比較することにより、ゲームプランをはじめとした日本代表コーチ陣の思惑が見えてくる。


 まず、今までの世界選手権とは異なる大きな決断があった。平本恵也(富士通)を外して、QBを高田鉄男(パナソニック)と加藤翔平(LIXIL)の二人にしたのだ。
 これまでの大会では常にQBは3人いた。QBが3人いると、控えの二人はキッキングにも出場しないので効率が悪い。しかし、QBが全員負傷したらその時点で大会は終了するので、しっかりと保険をかけていた。
 だが、今回のチームはそのリスクを負ってでも、選手の稼働率を上げることを選んだのだ。実はこの決断が、WRのメンバー選考に影響していると見ている。


 次にTEの選考を見てみよう。選ばれたのは前回大会に続いて春田崇博(富士通)。選考過程ではショートレンジのパスを確実に捕球する祖父江俊介(オール三菱)の評価が高かった。
 春田が最終的に残ったポイントはロングスナップだ。昨季はロングスナッパーに専念していた時期があるほど、春田のスナップの技術は高い。後はTEとしてしっかり調整が間に合っているかどうか。
 偶然かもしれないが、壮行試合では春田へショートパスがたくさん投げられていた。レシーバーとして合格点が出たことにより、スナップという貴重な「一芸」を持つ春田が選ばれたといったところだろう。


 RBはパスキャッチも器用にこなせてキッキングで活躍できる四人が、2次のメンバーからそのまま残った。
 最後にWRを見てみよう。大きなインパクトがあったのが中村輝晃クラーク(富士通)の落選だ。昨シーズン、富士通を初の日本一に導いた立役者であり、WRとしての能力は高い。だが、この選択も一つずつひもといていけば、十分に納得のいくものだった。


 まず、木下典明(オービック)栗原嵩(IBM)前田直輝(LIXIL)の三人はエース格でリターナーもできる。中村は彼らと同じタイプで、リターナー以外のキッキングには使いづらい。タフネスといったフィジカル面でやや劣っているという点も考慮されたと見る。


 林雄太(アサヒビール)は、186センチの長身でインサイドタイプ。遠藤昇馬(パナソニック)はフィジカルの強さが目を引くので、国際大会に連れて行きたくなる気持ちが分かる。
 宜本潤平(富士通)はキッキングとランアフターキャッチが魅力で、宮本康弘(LIXIL)はキッカーの控えを兼ねている。残るのは永川勝也(LIXIL)だ。永川がいいWRであることは間違いないが、キッキングでそれほど活躍できるわけではないので、中村との比較で疑問が残った選手だ。


 答えは3年前の記憶にあった。2012年の社会人選手権決勝はオービックと鹿島(現LIXIL)の対戦になった。
 鹿島は加藤が負傷してQBは山城拓也一人だった。試合直前の練習を取材した時に、永川がQBとしてプレーしていたのだ。かなり精度の高いパスを投げ込んでいて、「もし山城が負傷しても、永川で急場はしのげるな」と思った。


 QBでリスクを負った今大会、高田と加藤の二人が負傷した時点で、打倒米国、世界一奪還の望みがなくなる。だが、一人が負傷した時点で、バックアップが用意できるかどうかで残されたQBの心情はだいぶ変わってくる。
 一人が負傷した場合に永川が第3のQBとして準備をしておけば、もう一人が一時的に負傷退場しても、何シリーズかは持ちこたえることができるだろう。


 実際のところ、永川を控えQBとして使うプランが準備されているのかどうかは分からない。あくまで私の推測であり、純粋にWRとしての評価が高かっただけかもしれない。
 木下も高校時代にQBを経験しているので、バックアップとしては彼の走力を生かした「ワイルドキャット」というパッケージも十分に考えられる。
 しかし、3年前の練習で見せていた永川のQBとしての能力の高さは、森HCの記憶の中にもしっかり残っていたのではないだろうか。

【写真】壮行試合の後、日本代表・森ヘッドコーチの話を聞く選手たち=撮影:Yosei Kozano、6月14日、富士通スタジアム川崎