今年の早稲田は強い。そう確信させる試合内容だった。4月29日に駒沢陸上競技場で行われた、第63回早慶アメリカンフットボール対校戦は、早大が慶大に31―17で勝った。
 早大の強力な守備フロントが、日本代表候補のRB李卓を中心とする慶大のラン攻撃をわずか25ヤードに抑え込む完勝だった。


 早大の付属校である早大学院は、2010年から13年まで高校選手権を4連覇している。そのメンバーが今の早大の中心メンバーである。
 しかし、昨年は日大と法大に敗れ、甲子園ボウルには手が届かなかった。最終戦ではライバルの慶大にも逆転負けを喫した。


 戦力が整いながらも勝ちきれなかった責任を、最も強く感じていたのがLBケビン・コグランだ。下級生のころから主力として活躍し、3年生の昨季は守備の要のミドルラインバッカ―としてプレーするはずだった。
 しかし、開幕前に足を負傷して、本来のパフォーマンスを出せない試合が続く。法大戦の後半では、疲労と痛みから完全に足が止まってしまうコグランの姿があった。


 この試合でチームは逆転負けして、甲子園ボウル出場の望みを断たれた。コグランは昨シーズンをこう振り返る。「フットボールを始めてから最も苦しいシーズンだった。自分がベストのプレーができていれば勝てた試合もあったと思う」


 昨年、不調のコグランとは対照的にフィールドを躍動する選手がいた。2年生のLB加藤樹だ。アウトサイドのラインバッカ―として、フィールドを縦横無尽に駆け回る加藤のプレーは衝撃的だった。
 大外からブリッツを仕掛けてQBサックを決めたかと思えば、WRの前にセットしてバンプで相手を破壊する。マンツーマン守備をさせてもCB以上にスピードがある。ランプレーでは逆サイドのプレーなのに、コグランを追い越してタックルを量産する。まさに学生界最高の「ハイブリッドLB」と呼べる存在であり、神出鬼没のプレースタイルはサッカーのポジションで言う「リベロ」に近かった。


 加藤を片方のサイドに置いておくのはもったいない。早大の首脳陣は加藤の能力をさらに生かすため、そして復活したディフェンスリーダーのコグランをより機能させるために、新たな守備戦術を採用した。それが「4―2」の守備隊形だ。
 コグランと加藤の二人をミドルラインバッカ―のポジションに配置して、全てのプレーに二人がからむようにするのが狙いだった。


 早慶戦では守備のエース二人が期待通りの活躍を見せた。コグランが安定したタックルとパントブロックでビッグプレーを決めれば、加藤は猛烈なスピードで何度もQBに襲いかかった。
 「加藤の能力は誰もが認めるところ。彼がもっと思い切り動けるように堅実なプレーを心がけたい」とコグランが言えば、加藤は「ケビンさんは基本に忠実で確実なタックルをしてくれる。スピードを生かして僕がもっとプレーを破壊しなければ」と自身の役割について語る。
 主将のDL村橋洋祐は言う。「LBの二人がいかに自由に動けるかが大事。そのためには僕たちフロントがもっとレベルアップする」


 早大は2002年と10年に、それぞれQB波木健太郎とRB末吉智一というオフェンスのスター選手を擁して、甲子園ボウルに出場した。今年の早大は守備に近年で最高の戦力が整っており、LBのダブルエースの活躍が勝敗を分けることになるだろう。


 コグランは試合後、自信に満ちた表情でこう言い切った。「今年のチームは甲子園ボウルに出る責任がある。僕らが勝てなかったら、しばらく早稲田はいけないかもしれない。日大や法政も圧倒できるようなディフェンスを作っていきたい」


 関東TOP8の優勝争いは今年も日大と法政の2強が本命という声が現時点では多いが、ダブルエースを中心とした早大の強力守備を見る限り、秋は三つ巴による昨年以上の激しい戦いが待っているような気がする。

【写真】早大守備をけん引するLBコグラン(5)=撮影:seesway、4月29日、駒沢陸上競技場