先日、スカッシュの大会を取材する機会があった。四方を壁に囲まれた空間でボールを打ち合う、テニスのようなスポーツだ。アメリカンフットボールとは全く異なる競技だと思っていたが、意外と共通点も多かった。


 まずは、試合の中で戦術が重要な要素になっていることだ。トップ選手は3手、4手先を読んでプレーしているそうだが、強い選手ほど攻撃の展開やショットが多彩で、対戦相手を翻弄していた。
 さまざまな種類のランとパスで4回の攻撃を組み立てて、ファーストダウンやタッチダウンを目指すフットボールと通じる部分があった。


 スカッシュは「空間のチェス」と言われる通り、プレーが常に三次元で展開される。フットボールは平面で行われる陣取り合戦という意味では二次元の世界だが、パスをめぐる空中戦などでは三次元の攻防が繰り広げられる。


 昨年末、国際オリンピック委員会(IOC)が発表した改革案には、夏季五輪の競技枠撤廃と開催都市が実施希望競技を提案できる項目が含まれていた。スカッシュは野球やソフトボールなどの競技とともに、2020年の東京五輪での採用が有力視されている。


 印象的だったのが、この千載一遇のチャンスに競技を普及しようという、選手を含めた関係者の熱意だ。日本の女子スカッシュ界をけん引してきた松井千夏選手は、試合前にも関わらず、「運動量がテニスの2倍もあると言われていて、短時間のエクササイズには持ってこい。低い球をよく打つので、女性にとってはヒップアップにもなるんですよ」とスカッシュの魅力を笑顔で報道陣に説明していた。


 また、昨年の日本選手権を制した机龍之介選手はまだ17歳の高校生だが、「五輪採用のために自分ができることは、結果を出し続けること。海外の大会でも常に表彰台を狙っていきたい」と世界を見据えている。


 一方、国内のアメリカンフットボールの現状はどうだろうか。関係者はもちろん、メディア関係者やフラッグフットボール関係者ら多くの人たちが、さまざまな角度から競技の普及と発展に取り組んでいる。だが、フットボールが日本で劇的に普及するための何よりの特効薬は、日本人のNFL選手が誕生することだろう。


 現在、20人近くの日本人選手が、米国の高校や大学でフットボールをプレーしているという。才能のある選手が次々に海を渡るようになれば、どんなに時間がかかってもいつかは米スポーツ界の最高峰に手が届く日が来ると信じている。

【写真】日本のスカッシュ界をリードする机龍之介選手と松井千夏選手