日本のアメリカンフットボールシーズンの最後を飾る大一番。富士通と関学大の対戦となった今季の「ライスボウル」は1月3日、東京ドームに3万人を超える大観衆を集めて行われた。


 試合前に発表された先発メンバーの中に、富士通のエースQBコービー・キャメロンの名前はなかった。社会人日本一を決める「ジャパンエックスボウル」で見せたパフォーマンスでも明らかな通り、2番手の平本恵也も日本人トップレベルの優れたQBだ。


 しかし、平本なら関学大の守備にも抑えるチャンスはあるだろうと思った。一方、関学大オフェンスが、富士通の守備から簡単にTDを奪うということは考えにくい。
 この時点である試合展開を予想した。正確に言うとこうなってほしいと期待した。ともにレフティーのキッカー富士通の西村豪哲と関学大の三輪隼也がFGを蹴り合う展開だ。


 FGに限定して評価するならば、現時点で西村が最も優れたキッカーであることは間違いない。2013年には日本記録の58ヤードにあと4ヤードと迫る54ヤードのキックを決めており、50ヤード前後のキックを確実に決められる日本で唯一のキッカーだ。


 一方パントだけに限定すればオービックの長尾健。キックオフも含めた総合力で見るならば、LIXILの青木大介、次点で昨春の日本代表に選ばれたパナソニックの佐伯栄太といったところだろうか。


 三輪は昨シーズンのリーグ戦、FGを6本蹴って全て外した。つまり成功率0%のキッカーだった。悩みに悩んでフォーム改造に取り組み、その後のプレーオフで復活。最終学年の今季はここまで11本全てのキックを成功させてきた。
 いったい三輪は昨年からどのように進化して、学生界最高のキッカーへと成長したのか。この試合で最も注目すべき選手の一人だった。


 試合が始まると、二人ともサイドラインでよく集中しているのが見て取れた。西村はいつも通りリラックスしながら、トレーナーと話をしている。一方の三輪は試合を一切見ないで、ボールと会話でもするように黙々とリフティングを続けていた。


 これは余談だが、試合中はサイドラインの様子を観察することが多いので、大事な場面で決められるキッカーの習性がなんとなく分かってきた。それは当たり前のことだが、試合展開に対して決して一喜一憂しないことだ。


 例えば、もう出番はないと思っていたらFGチャンスが近づいてきて、慌てて練習を始めるようなKはまず外す。やはりフィールドとサイドラインで気持ちが行ったり来たりしているようでは、狙いも定まらないのだろう。


 予想通り西村には多くの出番が回ってきた。5本のFGを蹴って、最長48ヤードを含む4本のキックを大事な場面で成功させた。最優秀選手にはRBジーノ・ゴードンが選ばれたが、多くのファンやメディア関係者が西村はMVP級の活躍をしたと賞賛した。


 一方、関学大のオフェンスは大方の予想を裏切って、富士通の守備を相手に大健闘を見せた。特にQB斎藤圭からWR木戸崇斗、大園真矢、木下豪大へのロングパスは、学生の豊富な練習量に裏打ちされたピンポイントの精度だった。


 4年連続の挑戦で「打倒社会人」を目指した関学大は、この試合とにかく攻め続けた。パントを蹴らず、FGを蹴らずに、愚直にエンドゾーンのみを目指した。その結果TDにつなげたシリーズもあったが、9回試みた第4ダウンの攻撃は7回が失敗に終わった。
 第2クオーター、初めて三輪が登場すると、46ヤードのFGをゴールポストに当てながらねじ込んだが、二度と彼に出番が回ってくることはなかった。


 関学大は2年前のライスボウルでは残り試合時間1分で守りに入り、オービックに逆転負けしている。おそらく、この日は最後まで挑戦者として攻め続けるという考えで、多くのスペシャルプレーを用意してギャンブルを試み続けた。


 しかし、関学大のディフェンスは十分に富士通のオフェンスに対抗していた。2度ほどリードを奪う場面もあった。ゲームプランを変更して、正攻法でいけなかったのだろうか。
 全てが結果論なのは承知の上だが、同じギャンブルをするなら、成功率100%の三輪の左脚にかけるという選択肢もあったと思っている。


 「気持ちよく蹴らせてくれたブロッカーとホルダーに感謝したい。来年は60ヤードを決めて日本記録を作りたい」。これまで大事な試合でいくらFGを決めても結果がついてこなかったが、ようやくつかみとった勝利に西村は安堵の表情を浮かべた。


 一方の三輪は、「自分のキックでチームを勝たせることができなかった。成功率100パーセントなんて何の意味もない」と言って、4年連続で社会人に敗れた悔しさで肩を震わせた。
 今季、最高の結果を残した二人のキッカーだが、試合後の姿はあまりにも対照的だった。

【写真】最長48ヤードを含む4本のFGを決めた富士通のK西村=撮影:Yosei Kozano、3日、東京ドーム