関東学生リーグ「TOP8」の最終節が11月23日に横浜スタジアムで行われ、日大が法大との全勝対決を17―14で制した。日大は全日本大学選手権決勝の「甲子園ボウル」(12月14日・阪神甲子園球場)出場をかけて、30日にアミノバイタルフィールドで東北学生リーグ代表の東北大と対戦する。


 試合前に両チームのオフェンスで注目していたポイントが二つあった。一つは日大オフェンスがパスの際に、QB高橋遼平を左右に動かすのか。もう一つは、法大がオプションQB鈴木貴をどのように起用してくるのかだ。


 昨年の対戦で身長168センチの高橋のパスを、法大の守備フロントが両手を高く上げて何度もはたき落としたことは記憶に新しい。今季のリーグ戦でもフロントが強力な早大や明大を相手に、この課題が露呈している。
 法大の強力DLに対しては、パスプレーの時に高橋を動かして、プレッシャーを避けるゲームプランを用意していることは容易に想像ができた。


 日大のファーストシリーズで早くも想定した場面が見られる。高橋が右に動きながら、WR西村有斗にミドルパスを決める。さらに、右に流れてのオプションフェイクから再び西村にパス。最後はRB竹内豪汰の先制TDランにつなげた。
 法大がミスで攻撃権を失った後の鮮やかな速攻だった。リーグ戦ではほとんど見られなかった高橋の動きながらのパスに、法大守備は全く対応できていなかった。


 この場面で日大のオフェンスコーディネーターは選択を迫られる。試合の序盤で有効なプレーが見つかった場合、その後の戦略には三つのパターンがあるからだ。
 まずは出ているプレーが止まるまで、つまり相手が対応するまでやり続けるパターン。もう一つは試合の終盤までとっておいて、ここぞという場面で出すパターン。三つ目は、小出しにしながら試合を組み立てる展開だ。


 当然のことだが、プレーは相手に見せれば見せるほど対応される。さらにフィールドでプレーする守備選手も目や感覚が慣れてくるので、力の差がない場合はプレーが止まる確率が高まっていく。


 結果として日大は、この有効なプレーを試合中に二度と使わなかった。その理由は筆者なりに分析し後述するが、前半の素晴らしいオフェンスから一転して、後半は法大守備に苦しめられる。
 「クオーターごとに少しずつ守備戦術を変えた」。法大の青木均監督は試合後にディフェンスのゲームプランをこう明かしたが、QBへのプレッシャーを強めた後半は高橋のパスが何度もはたかれるなど、日大のオフェンスは無得点に抑えられた。


 一方の法大は、7―17とリードされた第3クオーターの途中からQB鈴木を投入した。RB田邊僚のラン、鈴木のキープ、オプションピッチ、オプションフェイクのパス、スペシャルプレーも交えて怒濤の攻撃を見せる。流れるようなオフェンスから最後は鈴木がキープして、3点差に迫るTDランを決めた。


 第4クオーターに入っても法大の勢いは止まらない。鈴木がオフェンスをリードしてじわじわ前進し、敵陣に入る。十分に同点のFGが狙える位置で第4ダウンとなったが、青木監督は迷わずギャンブルを指示する。
 RB廣澤達也が2ヤードを走りきり、ゴール前へ進む。最後は27ヤードのFGが外れたが、後半は完全に法大のペースだった。


 余談になるが鈴木はハンドオフ、つまりRBにボールを渡す動作とそのフェイクがうまい。彼がこれほど走れるのはその走力もさることながら、フェイクが素晴らしいからだ。
 慶大戦で76ヤードの独走TDを決めたシーンがあったが、RBに渡すフェイクに守備のほぼ全員がつられて、鈴木が楽々とエンドゾーンまで駆け抜けた。


 NFLで最高のパサーと言われるブロンコスのQBペイトン・マニングは、ハンドオフの重要性について度々言及しており、いまだに練習を欠かさないという。簡単な動作のように見えるハンドオフだが、奥が深いのだ。


 さて、話を試合に戻す。ここまで試合の経過を振り返ってきて、こう思う方もいるのではないだろうか。
 日大の視点に立てば、先制点を奪った攻撃を使えば、後半も得点して突き放せたのではないか。法大サイドからすれば、最初から鈴木を使ってオプション攻撃をしていれば良かったのではないか。


 ここがアメリカンフットボールのおもしろいところなのだが、話はそう単純ではない。まず日大としては、前半で奪った10点の貯金があり、無理に攻める必要がない。仮に有効と思われるプレーを使って得点できなかった場合、後々手詰まりになる可能性もある。
 法大に同点、あるいは逆転された場合は一気に窮地に追い込まれる。だから、ある意味で日大は後半、本気で点を取りにいっていなかったと考えている。


 ここからは想像なのだが、日大は法大に追いつかれた時にのみ、ファーストシリーズで使ったプレーや、別に用意していたスペシャルプレーなどの、とっておきのゲームプランを繰り出すつもりだったのではないか。


 法大についても同じことが言える。最初から鈴木を使ったとして、果たして最後までラン攻撃が機能しただろうか。後半2シリーズは見事にドライブしたが、おそらく次の攻撃機会があったとしたら、日大守備のアジャストは完了していたかもしれない。
 つまり、前半からオプションを使っていたらハーフタイムに対策を練られて、後半に法大の攻撃が手詰まりになっていた可能性もあるのだ。


 これらは全て推測であり、実際は両チームがどういうことを考えていたかは分からない。だが、強豪チームのコーチたちは常にいくつかのゲームプランを用意していて、試合の状況に応じて駆け引きをしている。そういうことを考えながら試合を見るのも、フットボールの楽しみの一つだと思っている。


 最後に日大の勝因についてふれておきたい。それは、ドライブされても耐え抜いた日大守備の粘り強さだ。リーグ戦を通してずっと辛抱強く守っていたが、この試合でも4Qの法大の猛攻をゴール前で耐えたことが、結果的に勝利につながった。
 この粘り強さを如実に表す数字がある。日大守備がリーグ戦7試合で喪失したのは1703ヤード。2位の法大守備は1785ヤードで、その差はほとんどない。しかし、失点を比較してみると日大の62点に対して法大は94点。つまり、日大のディフェンスは攻め込まれても、水際でTDを防ぐしぶとさがあるのだ。


 4Qのゴール前のピンチ、インサイドLBへのコンバートで今季最も苦しんだ趙翔来がロスタックルを決めた。そして、最後は主将のDL宮田直人、副将のLB佐藤礼一とともにディフェンスを支え続けてきたDB柳龍之介がインターセプトを決めて、激戦を締めくくった。

【写真】法大のQB近藤をサックしてファンブルさせる日大の主将DL宮田=撮影:Hiroshi Ikezawa、23日、横浜スタジアム