関東学生リーグ1部「TOP8」は第4節が終了し、昨年の覇者・日大と法大が全勝を守っている。優勝争いは早くもこの両チームに絞られ、11月23日に横浜スタジアムで行われる最終節の直接対決で、雌雄を決することになりそうだ。
 今季、ともに新体制2年目の早大と慶大は戦力充実で両校に挑んだが、甲子園ボウル常連の伝統チームの力に跳ね返される結果となった。 第3、4節の対戦のうち、接戦となった3試合から勝敗を分けたポイントを探っていきたい。


 ▽法大守備が地上戦を完封(9月27日・法大28―23慶大)
 第1節で最も注目されたのが、立教大から70点を奪った慶大の攻撃力だった。好パサーのQB高木翼によるパス攻撃と、RB高木康貴、李卓のダブルエースによるラン攻撃は破壊力抜群。法大の青木均監督は「日大以外では慶応戦が一つの山になるだろう。後のチームは選手層が薄いから、勝手につぶれてくれる」と、慶大を最も警戒していた。


 第3節、互いに全勝で迎えた法大―慶大は、前半から一進一退の攻防が繰り広げられる。第3クオーターが終了した時点で14―10と法大がわずかにリード。しかし、この時点で慶大オフェンスには想定外のことが起きていた。ランが全く出ないのだ。
 試合を通して22回52ヤードという結果だったが、前後半の終了間際に法大守備が引いて守って生まれたロングゲインを差し引くと、1回平均でわずか1ヤード。主将のDL小林貴、LB早坂亮ら法大の守備フロントが、7回のロスタックルと大暴れだった。


 パスでは381ヤードの前進を許したが、慶大のラン攻撃をシャットアウトした。試合後、青木監督は「パスはやられてもいいから、李君に絶対走らせるなと指示を出していた。ゲームプラン通りだった」と、ラン守備に重点を置いていたことを明かした。


 慶大の攻撃がパス一辺倒になったことにより、法大には二つのメリットが生まれた。まずは守備の疲労度だ。ディフェンスにとって、ランかパスのどちらかを止めている状況では、精神的に大きな余裕が生まれる。結果的にはパスでやられたが、法大のセカンダリーは「ランはフロントがきっちり止めてくれる」という安心感の中でプレーすることができた。
 もう一つは、慶大の守備に負担がかかったことだ。ランがないということは、ドライブで時間を消費できない。つまり、パスのみの攻撃は、流れが悪くなるとあっという間にパントへと追い込まれてしまうからだ。法大のオプション対策をきっちり遂行して、第3クオーターまではランをよく止めていた慶大守備陣だが、守備機会が多くなり、疲労の濃くなった第4クオーターに崩されてしまった。


 ▽「ツボを押さえる」日大守備(9月28日・日大14―7早大)
 春に立命大と関大に勝って、慶大と同じく優勝候補の一角と見られていた早大。第1節は明大の強力な守備フロントに苦しんだが、第2節の立教大戦では、先発した1年生のQB坂梨陽木が好プレーで攻撃をけん引する。守備でもスピードのあるLB加藤樹がフィールドを縦横無尽に駆け回り、強豪との連戦へ向けてチームの調子は上向きだった。


 この試合は序盤から意外な展開になった。早大がファーストドライブで日大守備を圧倒し、一気にTDを決める。この試合のポイントは早大のランが出るかどうかだと思っていたので、「これは早稲田の勝ちだな」と正直思った。
 しかし、試合を通して早大が地上戦を優位に進めていたにもかかわらず、最終スコアは14―7で日大の逆転勝利。勝利の立役者となったのは、経験豊富な日大の4年生守備陣だった。


 まずチームを救ったのは主将のDL宮田直人。第1クオーター、先制点を奪われた後、早大のラン攻撃でずるずると後退する状況で、ロスタックルを決めて悪い流れを断ち切った。さらに、LB佐藤礼一もQBサックでチームの士気を鼓舞する。
 ドライブされる場面もあったが、要所で決めた2回のQBサックと5回のロスタックルが、早大の反撃を断ち切るポイントとなった。


 第2節の中大戦でも感じたのだが、今年の日大守備は、何とかここで止めたいという大事な場面で、必ずビッグプレーが飛び出す。そして、守備のハドルを見ていても「ここが勝負どころだぞ」という意識が共有されているように思える。
 その雰囲気を作り出しているのが、DL宮田、LB佐藤、DB柳龍之介の3人の4年生だろう。野球ではよくセンターラインを固めると守備が安定すると言われるが、中央に位置するこの3人が日大守備に安定感をもたらしている。
 また、彼らがうまく守備をまとめていることにより、LB岩本卓也、DB下水流裕太ら能力の高い下級生がのびのびとプレーしている。


 さらに守備の「ジョーカー」となりつつあるのが、CBの森亮輔だ。この試合ではインターセプトに加えて、決まればTDというパスを2回カットした。特に、試合終了間際のパスカットでは、喜ぶどころかインターセプトできなかったことを悔しがっていた。この意識の高さも、日本一を目指すチームにとって頼もしい限りだ。


 ▽終盤に発揮される法大OLの底力(10月12日・法大28―24早大)
 法大、日大に早慶が挑んだ4試合の中でも最も激戦となったのが、このカードだった。既に日大に敗れている早大は、三つ巴での優勝を狙って、序盤から猛烈な攻撃を見せる。
 日大戦と同様にランで押して、QB坂梨が小気味よくパスを決めるというパターンでドライブを続けた。後半開始早々には坂梨のロングパスを足がかりにTDを決めて、21―14とリードする。


 続く法大の攻撃はエースRB田邊僚のランを中心に、じわじわと早大陣内に進入する。レッドゾーンまで進まれたところで、早大の濱部昇監督がたまらずタイムアウトを取る。
 守備選手を全員サイドラインまで呼び寄せ、げきを飛ばした。「ここが勝負だぞ。自信を持て。最後まで足をかき続けるんだ」。この時に衝撃的な光景を目にする。後半が始まったばかりだというのに、早大守備の半分近くの選手が肩で大きく息をしているのだ。まるで2、3試合を戦い終えた後のように、激しく消耗しているようだった。
 この後同点となるTDを決められると、その後も早大守備陣に法大の攻撃を止める力は残っていなかった。


 この日の東京の最高気温は31度。湿度は低いが、真夏のような天候の下で行われた試合だった。選手たちが消耗するのは無理もないのだが、条件は法大も同じ。早大の守備をあそこまで疲弊させたのは、法大のオフェンスラインの力だと思っている。
 前節の慶大戦では第3クオーターまで止められていた法大のランだが、最後に消耗した慶大守備を力で押し切った。
 1、2ヤードで止まっていたプレーが、時間がたつにつれて4、5ヤード出るようになっていった印象だ。早大戦でも全く同じことが起こった。そして、それはナイターで行われた慶大戦と比べて、炎天下という条件が加わったことで、早くも第3クオーターから表れたのだ。


 昨年までのリーグ戦では、日大と法大は11月のリーグ終盤まで力を温存して勝ち抜くことができたため、手の内はほとんど見せなかった。しかし、今年は力を蓄えた早慶の挑戦により、早くも両者のガチンコの試合が披露された。
 例年よりチームが早く仕上がったことで、終盤戦へ向けてどのような影響が出るのか。両チームの勝者が2006年以来となる、甲子園ボウルでの東日本勢の勝利を目指すことになるだろう。

【写真】終盤に力を発揮する関東最強の法大OL=撮影:seesway、9月27日、アミノバイタルフィールド